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雨は相変わらず降り続いていた。
街の灯りが近づくにつれて、車の音が増えていく。
しばらく並んで歩いていたゼノが、ふと足を緩める。
「……ここまで来たら」
そう言って、周囲を見回す。
「たぶん、分かるかな?」
俺は一瞬だけ考えてから、頷いた。
「あぁ……」
自信があるようで、ない返事だった。
ゼノはそれを見逃さなかったらしく、少しだけ眉を下げる。
「迷ったら、無理に近道しないで。明るい道を選ぶんだ」
「……親かよ」
思わずそう言うと、ゼノは小さく笑った。
「忠告くらいはできる」
それから、分かれ道の前で立ち止まる。
黄色のレインコートの袖が、雨で少し重そうだった。
「じゃあ……」
ゼノは一歩下がり、手を振ろうとして――
その動きを、途中で止める。
「……いや」
一瞬の沈黙。
「“またいつか”って言うと、会えなくなる気がする」
その言葉に、胸の奥が少しだけ締まった。
雨音が、その隙間を埋める。
「だから」
ゼノは小さく息を吸う。
「次に雨が降ったら、ここに来てみて」
「……なんで」
「今日と同じくらいの雨なら、きっと僕も来てる」
確信はないはずなのに、
ゼノの声は妙に真っ直ぐだった。
俺は少し考えてから、短く答える。
「……気が向いたらな」
「それでいい」
ゼノはようやく、手を振った。
「じゃあ、スタン」
そう呼んで、分かれ道の向こうへ歩いていく。
俺はしばらく、その場に立ち尽くしていた。
雨は止まない。
でも、さっきまでとは違う重さだった。
(……次の雨、か)
傘を握り直し、俺は自分の帰り道へ向かった。