TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する



雨は相変わらず降り続いていた。

街の灯りが近づくにつれて、車の音が増えていく。


しばらく並んで歩いていたゼノが、ふと足を緩める。


「……ここまで来たら」


そう言って、周囲を見回す。


「たぶん、分かるかな?」


俺は一瞬だけ考えてから、頷いた。


「あぁ……」


自信があるようで、ない返事だった。


ゼノはそれを見逃さなかったらしく、少しだけ眉を下げる。


「迷ったら、無理に近道しないで。明るい道を選ぶんだ」


「……親かよ」


思わずそう言うと、ゼノは小さく笑った。


「忠告くらいはできる」


それから、分かれ道の前で立ち止まる。

黄色のレインコートの袖が、雨で少し重そうだった。


「じゃあ……」


ゼノは一歩下がり、手を振ろうとして――

その動きを、途中で止める。


「……いや」


一瞬の沈黙。


「“またいつか”って言うと、会えなくなる気がする」


その言葉に、胸の奥が少しだけ締まった。


雨音が、その隙間を埋める。


「だから」


ゼノは小さく息を吸う。


「次に雨が降ったら、ここに来てみて」


「……なんで」


「今日と同じくらいの雨なら、きっと僕も来てる」


確信はないはずなのに、

ゼノの声は妙に真っ直ぐだった。


俺は少し考えてから、短く答える。


「……気が向いたらな」


「それでいい」


ゼノはようやく、手を振った。


「じゃあ、スタン」


そう呼んで、分かれ道の向こうへ歩いていく。


俺はしばらく、その場に立ち尽くしていた。

雨は止まない。

でも、さっきまでとは違う重さだった。


(……次の雨、か)


傘を握り直し、俺は自分の帰り道へ向かった。






僕と君だけの図書館

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

514

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚