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後日

結局それから、太齋さんのお店に大学の女子が来るようになって、それに伴って、ヘルプとして僕にも店に出て欲しいと頼まれて接客についていた。


「ひろくん、二番テーブルにこれ、お願いね」


「はいっ!」


太齋さんがそのくらい女子に人気なのは知っていたが今日もまた女子に囲まれている。


一人は栗色のロングヘアーが美しい華やかな子で、もう一人はショートカットのスレンダー美人。


胸まで伸びたロングへアーに、優しそうな笑顔の大人しい印象の子、合わせて三人が太齋に夢中になっていた。


「太齋さんって下の名前なんていうのー?」


「え〜しゅんって言うんだかわい〜!!」


「しゅんって呼んじゃお〜♥」


「はー?私のしゅんくんだから!」


「いやあたしのっ!!」


なんて言い合っていて、それを「俺のために争わないで、ね?」と、人差し指を口の前で立たせて、アニメの主人公みたいなセリフで一瞬にして女の子たちを静まり返らせる。


同時に「きゃー!」という雄叫びが上がる。


女たらしがすぎるのでは??と関心さえしてしまう。


でも、こんな可愛い子たちに、今までアプローチされたことぐらい山ほどあったろうに…


ずっと彼女がいないのが謎だとは思っていた。


それは僕のことが好きだから、断ったりしてたのかな…なんて妄想して、頬が緩んでしまう。


そして数日後の大学で、瑛太に言われた。


「てかこの前聞き忘れたけど、結局太齋さんとはどうなったんだよ?」


どうなったんだ、と聞かれて気付いたが…


好きだと言われただけで、よくよく考えてみればそれに応えてもいなければ


別に付き合ってと言われたわけでもない……のでは?


「いや、それが…好きとは言われたんだけど…別に付き合ってって言われたわけじゃないし…?」


そう素直に答えると、瑛太はそっかの一言だった。


さらに意外なことに、昼休みに「今日太齋さんの店一緒に行かね?」と、甘いものがあまり好きじゃない瑛太がそう言ってきたのだ。


普段そんな事言わないから驚いたけど、些か張った声で、一言返事で了承した。


「うん、行こ….!」


そして午後の光がいくらか薄れ、あたりに夕暮れの気配が混じり始めた頃、予定通り瑛太と太齋さんの店に足を運んだ。


相変わらず給麗な内装の店内には、スイーツと太齋さん目当てで来ている女性客で埋まっていた。


そんなことを思っていると太齋さんがこちらにやってきて席に案内してくれた。


いつもの席に腰掛け、瑛太も反対側に座った。


『今日は二人で来たの?珍しいね』


「あっはい!瑛太が一緒に行きたいって言ってくれたんでせっかくだしと思って…あ、瑛太、甘いもの苦手だったらティラミスにする?」


「ああ、そうしよかな。ひろは?」


「うーん、僕は…パフェにしよっかな〜」


『了解、じゃ今日は瑛太くんもゆっくりしてってね』


そう言うと、太齋さんはどこか満面の笑みで厨房へと戻って行った。


注文したものが出てくるまでしばらく待ったが、


その間なにも言葉を交わさないのはいつもなら気まづくないはずなのに、今日の瑛太はいつもと違う気がした。


なにか話した方がいいかと思って、とにかく思いつく限りの話題を振った。


「あ、甘いものだけじゃなくてさ、太齋さんのティラミスは格別なんだよね」


そして運ばれてきたチョコパフェとティラミスを目の前にし、頂きますっと二人同時に手を合わせると、互いにスプーンで掬ったスイーツを口に運ぶ。


「ん、ほんとだ、美味いな」


そう言って、ただ淡々とスプーンを口に運ぶだけの瑛太に少し疑問を抱いていた。


すると急に瑛太が口を開く。


「…んでさ、お前は太齋さんのこと好きなのか?」


「へ……っ?」


不意にそう聞かれ、変な声を出してしまったが、すぐに言葉を紡いだ。


「す、好きって……確かに太齋さんの作るチョコレートは美味いし、なんだかんだ優しいし、昔から頑張り屋な人だとは思うけど…」


その反応で察したのか彼は続けた。


「はっ、べたぼめじゃんか。やっぱ好きだろ、見てたら分かるぞ?」


「いやそういうのじゃないから!あっても友達としてだよ」


反論してから、またパフェをスプーンで掬ってロに運ぶ。


でも僕の口にはチョコの味なんてひとつも入ってこなかった。


(瑛太が変な事言うからだ…っ)


「絶対恋してんだって、お前分かりやすいし?」


僕はしっかりと飲み込んでから、また口を開く。


「そんなこと、ないって。大体この前なんか送迎を体にタクシーに連れ込むんだよ?歩かなくてよかったのはいいけど、強引すぎるし僕のことからかってばっかだし!」


「あんな無駄に顔が良くてチャラくて軽薄で女たらしな人のことなんか誰が好きに…」


「おい、お前…うしろ」


「え…….?」


急に瑛太からそんな声が掛かるから、なんだろうと思って後ろを振り返ると


『ひろくーん?誰が︎︎"︎︎チャラくて軽薄で女たらし︎︎"︎︎だってー??』


そこには、満面の笑みなのに目は全く笑っていない仁王立ちの太齋さんがいた。


「だだだ、太齋さん…….!べ、べつに僕は……」


僕が焦って言い訳をしようと試みたが、その前に太齋さんの訂正が入る。


『あのねぇ、ひろくん?俺そんなんじゃないから、ちゃんと誠実だから』


僕の肩を両手でガシッと掴むと、僕に寄りかかる体勢で、明るく若ぶった声でそう言ってきた。


かと思えば、他の客に呼ばれてすぐに解放してくれたので、ホッと一息つくと、瑛太が咎めるような厳しい目付きでこちらを見てきた。


まだなにか言いたげで、なに?と聞く。


「いや、恋してんなぁって」


「だからしてないってば…!」


「も、もう太齋さんの話はいいじゃん?」


そう言うと、瑛太は飲んでいたコーヒーをコトっとソーサーに置くと、真剣な物言いで告げてきた。


「だな、今日ここに来たのはお前に言いたいことがあるからだったし」


「え、僕に言いたいこと?」


瑛太と目を合わせて、首を傾げて聞くと、何の邪神も偽りも無いであろう切れ長の瞳がそこにはあった。


「俺、男も女もどっちでもイケるゲイなんだけど、お前のことそういう意味で好きなんだっつったら、アイツのとこじゃなくて俺のところに来てくれるか?」


その真剣な表情と言葉から、目を背けることは不可能だったし、驚くしかなかった。


ゲイやバイだということを隠さず堂々としているところもそうだが、何より直球すぎる告白にだ。


「は?え…それ、は….」


僕が言葉を紡げずにいると、瑛太は荷物を持って椅子から立って、財布から取り出したお金を机に置いて言った。


「これ俺の分の、払っといてくれ。返事はいつでもいい、じゃあな」


「…あ…っ」


瑛太は振り返ることなく、僕に背を向けて店を出て行ってしまった。


帰宅後


「……」


「いやなんでこうなった…?!!」


え?いつから?


いつから瑛太は僕のこと好きだったの?


聞きたいけど聞けるわけないぃぃ…


あーーーむり、明日も大学で会うのにどんな顔して会えばいいんだ…!!


……普通にしてればいいとは思うけど、好きって言われたことも驚いた。


でもそれよりも、あの堂々さは憧れるものがある…


そんなことを考えていたとき、携帯が震えた。


画面を確認してみると、一件のLINEが届いていた。


それは太齋さんからで、内容は至ってシンプルに今から会わない?ケーキ作って待ってるよ、とのことだった。


全く、いつもこうだ。


こうやってスイーツで僕を釣ってくる。


まあ、それに釣られる僕も子供なのだけど…


数分後、気づくと店の前まで来ていた。


いつも通り入ってみると、席に座ってチョコを用意している太齋さんがいて、謎の実家感が沸いた。


僕に気づいた太齋さんが「待ってたよ、ひろくん」と言うので、お邪魔しますと口にして太齋さんの座っている向かい席に座る。


それからはいつも通りで、出されたケーキが二層、三層にもなって中も外もチョコレートまみれで、パラパラ乗っかってある金箔も上品感を出している。


そんなチョコケーキを、フォークで一日分切って口まで運ぶと、一度噛んだだけで口内に広がるチョコのまろやかな香りと甘味に頭が蕩けそうになる。


「あ~美味しい……ほんっと持つべきものはショコラティエの幼馴染!」


「ははっ、本当にひろくんの嬉しそうな顔見てると俺も作りがいがあるよ」


「だってほんっと美味しいし……太齋さんも一口どうです?」


「……いや、俺はいいよ。」


あの太齋さんだ、こんなこと言ったら絶対に人のフォーク奪い取って、関節キスのひとつやふたつしてくるだろうに。


それに、さっきからいつもと様子が違う気もする。


なにか言いたげな表情にも見える…


そんなことを考えていたが、会話という会話もしないままペロリとチョコケーキを食べ終わってしまった。


「ごちそうさまでした…」


同時に食器が片付けられ始めて、太齋さんの後ろ姿が妙に虚しく写った。


太齋さんの浮かない表情も気になって、席に戻ってきた太齋さんを見るなり、気が付くと言葉を漏らしていた。


「太齋さん、あの、さっきからずっと浮かない顔してますけど…」


「え、そう?」


「あ、まあ僕の気のせいなら全然、いいんですけど!」


笑いながら、二つの掌を柔らかく合わせる。


すると、太齋さんは僕の目を真っ直ぐ見て言う。


「今日さ、瑛太くんに告られたでしょ」


焦がれるカカオ~敦くんは僕に甘すぎる~【スパダリ執着年上攻めによるリハビリ調教】

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