テラーノベル
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目の前にそびえ立つ圧倒的な巨体を前に、佐山昭子は思わずごくりと息を呑み込んだ。
(どれほど鍛えたらこうなるの…!?まるで魔界のボス…!)
二頭筋好矢はズシズシと重い足取りで一歩また一歩と近づいてくる。
昭子はいつでも迎撃できるように太腿にぐっと力を込め、いつ襲いかかられてもおかしくない戦闘態勢のまま立ちはだかった。
(もっとも、相手はただ居酒屋にやってきた一般客の可能性が極めて高いのだが)
緊張感が張り詰める中、好矢の足元で奇妙な異変が起きた 。
「……ん?」
ギ ギギ……と音を立て、古びた木製の床板にどう見ても致命的なヒビがミシミシと走り始めていたのだ。
その光景を目の当たりにし、昭子は冷や汗を流しながら冷静に呟く。
「あれ 結構まずいやつ?」
───その頃、階下の1階フロアでは。
「はい〜 はい〜♪」
灰色のキノコ頭に丸メガネという独特の出で立ちをした児玉太労が、オレンジ色のリュックを揺らしながらご機嫌な足取りで来店してきた。
「店長〜!!焼鳥ちょうだい!いつものやつ〜!」
元気よく右手を挙げる児玉に対し、厨房からは「また児玉かよ!!」と波和原の盛大な突っ込みと怒声が飛んできたが、児玉は全く気にする様子もなく、我が物顔でテーブル席にドスンと腰を下ろす。
そこへ、ブルーパープルのロングヘアを揺らした成竹が小走りで近づいてきた。
「ちょっと児玉くん この前アンタから聞いた宝くじ当選したの!」
そう興奮気味に告げると、成竹はなぜか中身の半分ほど減った誰かの飲みかけのペットボトルを差し出す。
児玉は中身の出所を全く気にする様子もなく「ありがとうございます〜」と自然にペットボトルを受け取り、目を丸くして驚いた。
「おめでとうございます!羨ましいです〜!いくらですか〜!?」
「3億円よ!」
満面の笑みで指を3本突き出す成竹に対し、児玉はペットボトルの蓋をキュッと開けながら、笑顔でやんわりと だが強烈な一言を放った。
「多分それ詐欺ですね〜」
その直後、児玉はペットボトルを傾け、中身を豪快にラッパ飲みし始めた。
その時だった。
頭上の天井から、メキメキ……と建物全体の悲鳴のような不穏な音が響き渡る。
「ん?」
ラッパ飲みを中断し、児玉が不思議そうに顔を上へ向けたその瞬間。
バキィィィン!!!
すさまじい破砕音とともに、2階のロフト部分が文字通り丸ごと抜け落ちてきた。
大量の韓国のりの残骸と、巨漢の好矢、そして戦闘態勢の昭子を乗せた床ごと、すべてが1階へと盛大に落下してきたのである。
運悪くその真下にいた児玉は、逃げる暇すら与えられず、無残にもその全ての直撃を受けて見事に下敷きとなってしまった。
───南無阿弥陀仏。
#ギャグコメディ
澪
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腐ったカップラーメン
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コメント
1件
いやあ、凄まじい物理ギャグ回でしたね。二頭筋好矢が魔界のボス級なのも、児玉への「それ詐欺」の冷静なツッコミも、全部がロフト崩落の布石だったとは。飲みかけペットボトルを何の疑問もなくラッパ飲みする児玉の図、あれはもう清々しいまでの無防備さで、直撃を受けるべき運命の人に見えました。テンポの良い台詞回しと、情景が目に浮かぶ破砕描写、笑わせていただきました。次回、児玉の運命が気になります…!