鮭金組、花龍列車です!
BL要素はないですが、地雷がある方は読まないでください!
それでは、なんでもOKな方のみ、本編へお進みください!
あと、似たようなお話書いてる方、もしかしたらいるかもしれませんが、パクリではないので、そこはご理解をお願いいたします。
話がそれましたね。では、本編どーぞー!
パァァンッ
聞き慣れた音。見慣れた光景。……もう、嫌だ。
「じゃあな、二度と俺の前に現れんなよ。」
吐き捨てて、目を背けて。
「兄ッ…ちゃ゙……」
背後から聞こえた声に、体が固まった。
「嘘、だろ…?」
「シャークん……?」
「ッ!!!!」
勢いよく布団から飛び起き、目を見開く。
またこの夢を見た。またこの悪夢だ。
「はぁ…はぁ…シャークん……」
肩で息をしながら、もう数十年も前に離れ離れになった弟の名を呼ぶ。
息が苦しい。たった今みた光景が、一瞬で頭の中から消え去った。
俺が夢の中で殺したのは、シャークんだ。でも、顔がわからない。誰を殺したのか、わからない。
「シャークん…やだよ、俺…。お前を殺したくないんだ……」
目を閉じてみても、もう一度眠りにつけるわけではなく。ただただ、世界が漆黒に染まるだけだった。
気を取り直して、俺は立ち上がって身支度を整えた。
サガの幹部の証拠である服を着て、黒い色眼鏡をかける。いつも通りの身なり。
自室を出て廊下を歩き、すれ違いざまに数人と言葉を交わす。
何一つ、いつもと変わらない日常。そうして俺は、サガのボスである、白虎のもとへと向かう。
俺の双子の弟シャークんは、十年ほど前に、大きな街で名を轟かせているサガというマフィアに連れ去られた。俺は、シャークんを助け出すためにサガへの潜入捜査をはじめ、ついに幹部へ上り詰めた。サガのボスである白虎は、他でもない、弟を拐った張本人。そいつのそばで話を聞けるのは、弟探しに大いに役に立つ。
更に、俺は最終的には白虎を殺そうと思っている。幹部であれば、接近も容易い。
幹部になれて良かったと思う。
弟を連れ去った奴に頭を下げるのは、本当に最悪な気分になる。吐き気すらする。
でも、幹部である以上これは避けられないことだ。
「おはよう、皆。昨日はよく眠れたか?任務のあった者は、ご苦労だった。」
白虎が話し始める。俺はそれを、数人の幹部たちの最後尾で聞く。
白虎は、長い黒髪を、後ろで細い三つ編みにしてまとめている。目つきは冷たく、冴え冴えとしているが、どこか温かい。俺は、白虎の瞳だけは、嫌いではなかった。
白虎は、名を明かさない。まぁボスだからそれが普通なのかもしれないが、どうにも何か引っかかる。気になって仕方がない。そのわだかまりが解ければ、弟に会えるのだろうか。
目を閉じて、朝の夢を思い出す。弟を殺した。あれは、紛れもない俺だ。どうしたらいい?どうしたら助けられる?俺は、これから人殺しをしてはいけないのだろうか。
そんなことを考えながら、白虎の話に耳を傾ける。
白虎は、ひとしきり何かを話し終えると、奥の間に戻っていった。それと同時に、幹部たちも散らばっていく。
俺も集団に背を向けると、歩き出した。
「おぉい、きんとき。」
不意に背後から呼び止められ、振り返る。
白虎が立っていた。
「…何でしょう?」
「一つ、仕事を頼んでいいか?」
「はい。」
いつも、白虎からの指示は黒い桐箱で届く。それは、幹部である者たちに対しても同じだ。
だから、白虎直々の依頼は、相当珍しい。年に1回、あるかないかくらいだ。
「今回の仕事は、どのような内容で?」
「それがな、サガに、虎ノ子を売ってくれてる貿易商が数人いるだろ?その中の1人が、どうやら報酬をちょろまかしてるんだ。そいつを見つけて、始末してくれ。」
「分かりました。」
そうは答えたものの、内心少し驚いていた。怪しい人を見つけ、始末する。そんなの、日常的な仕事だ。なのにどうして、白虎直々に依頼しに来たのだろう。
心の中では首をかしげつつ、俺は軽く頭を下げてその場を立ち去ろうとした。すると、そんな俺の腕を、白虎がおもむろに掴んできた。
「…?」
振り返って立ち止まると、白虎は笑っていた。
「気をつけろよ。」
儚い笑顔だった。何故かシャークんの顔が頭に浮かんで、涙で視界が滲む。
「…はい。」
それだけ答え、俺はその場を立ち去った。
その夜。俺は、ひたすらシャークんのことを考えていた。早く会いたい。日を増すごとに、その想いは強くなっていく。
でも、中々有効な情報は手に入らない。
幹部だからと言って、簡単に情報が手に入るわけではなかった。
ただ、まぁやはり、シャークんを拐ったのは白虎で間違いなさそうだ。
数人の幹部から、話を聞いた。
白虎は、自分では行わないものの、人攫いもするらしい。反吐が出る。
俺みたいな思いをしてる奴らがたくさんいるということだろう。
白虎は、サガは、この世に存在してはいけないものだ。
消さなければならない。たくさんの人が被害にあっている。俺が止めないと。
改めて心に誓い、布団に体を投げ出した。
最近、目をつむるのが怖くて仕方がない。夢であっても、最愛の弟を手にかけるのは、耐え難いことだ。
「早く…早く、見つけないと。」
会いたいよ、シャークん。
銃声が響く。
また、殺した。
続く。