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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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前回の続きです。






虎ノ子。強力な薬で、どんな病気もすぐに治ってしまう。……という、幻覚をみせる薬。

正しくは麻薬なんだ。

ある時から、サガに虎ノ子が売られるようになった。数人の貿易商が、虎ノ子を売りに来て、それがサガの下っ端の間で流行ったらしい。幹部も数人、虎ノ子を使用して、

死んでいる。

それを売っている貿易商の1人が、金をちょろまかしているらしい。

白虎からの命令。

『見つけ出して殺せ』

「こいつか。」

証拠が見つかった。俺以外の幹部にも、同じ命令が黒い桐箱によってくだされていたらしい。

数人で調査すると、すぐに見つかった。

俺は、白虎のもとへ行き、報告した。

「どこにいるか分かるのか?」

「予想はつきます。」

「分かった。じゃあ、始末は任せる。」

頭を下げ、部屋を出る。

人殺しは、したくない。それが弟かもしれないとなると、恐ろしくてたまらない。

弟は、サガにいるはずだが、何年も、なんの情報も手に入らないから、もう実はサガから逃げ出しているんじゃないかとか、すでに死んでしまっているんじゃないかとか、いろんな考えが頭を巡る。

もう、死んでるかもしれない。

もう、いなくなってるかもしれない。

でも、もし、俺が弟を殺してしまったら…?

恐ろしくて、とてもではないが、引き金は引けない。

だが、命に逆らえば殺される。当たり前だ。

なら、

「先に殺せばいいんだ。」


簡単なことだった。




あれから数日がたった。俺は、白虎に呼び出されて、廊下を歩いていた。

拳銃を服の下に隠し、平静を装って歩く。悟られてはいけない。

部屋の前に立つと、途端に緊張してきた。でも、すぐに怒りがその余計な感情を打ち消した。弟を拐った張本人。

今日、やっとそいつを殺せる。

部屋の戸を、3回ノックして、返事を待つ。

「はい」

中から返事が聞こえたため、静かに戸を開けた。

「あ、きんときか。悪いな、急に呼び出して。」

白虎が、いつもの調子で声をかけてくる。

変わらない、日常。こんなんが日常なんて、馬鹿げてる。でも、今日やっと終わらせられる。

「きんとき?」

白虎の、その言葉と同時に、俺は拳銃を取り出した。

白虎に銃を向け、睨みつける。

「ッ……」

白虎は、驚いたような顔をして、何か言おうとした。

俺が引き金を引くのが、先だった。


パァァンッ

聞き慣れた音。見慣れた光景。……もう、嫌だ。

「じゃあな。二度と俺の前に現れんなよ。」

吐き捨てて、目を背けて。

「兄ッ…ちゃ゙…」

背後から聞こえてきた声に、体が固まった。


「嘘…だろ…?」




「シャークん…?」


思わず、振り返り、駆け寄った。

白虎が、口を開く。

「ご、めん……兄ちゃん…」

目の前が、真っ暗になった。

嘘だ、こんなの。俺は信じない。ありえない。弟を拐った張本人が、弟なわけない。でも、

「…シャークん?」

呼びかけると、優しい顔で笑った。

儚い笑顔だった。


「ばいばい。 」


言葉が出ない。何か言わなきゃ、と思うのに、うまく口が動かせない。


「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ッ!!!!」


俺の叫び声が、部屋に響いた。

血を流して倒れているシャークんを抱き上げる。

涙が止まらない。

シャークんは、すでに冷たくなってきていた。

もう助からない。俺が殺した。

最愛の弟を。ずっと探していた、弟を。

シャークんをぎゅっと抱きしめる。もう、あの温もりは感じられない。もう、あの温かさは、感じられない。

あとからあとから流れてくる涙で、視界が歪む。シャークんの姿が霞む。

「やだッ、シャークん…!何で…何でッ!!」

頬に触れる。冷たくて、硬い。人じゃないみたい。

どうして、こんなことになったんだろう。

白虎はシャークんだった。

おかしな話だけど、紛れもない事実。

復讐心に体を支配され、まともに物事を考えられなくなっていたんだ。

もし、俺が引き金を引くのが少しでも遅ければ、もしかしたら、

こんなことにはならなかったのかもしれない。

「シャークん…?」


もう、返事はしてくれなかった。








日の光に包まれているように温かい。懐かしい、匂いがする。

俺は今、最愛の兄に殺され、彼の腕の中にいる。

顔がみたい。どんな顔してるのかな。あの頃と、どれくらい変わったかな。

俺はすごく変わった。強くなったよ。2度と、大切な人と離れ離れにならないように。

でも、馬鹿だよなぁ。俺がもっと早くに言ってれば、きんときは苦しまなくてすんだのかなぁ。

悔やんでも悔やみきれない。

謝りたい。

ごめんなさい、俺が全部悪かったの。

兄ちゃんは悪くないよ。

だから、お願い。泣かないでよ。

きんときの頬に触れたくて、手を伸ばそうと力を込めてみる。でも、だめだった。俺はもう死ぬんだ。絶対に助からない。

「双子は生まれてくる時に幸せを半分こするから、不幸な最期を迎えるんだって。」

いつか、村のやつが言ってた言葉。

そんなことないだろ。二人で幸せ一個分、大事にしたらいいだろ。一生そばで分け合ってたら、そしたら二人とも幸せだろ。

言い返したかったけど、何も言えなかった。俺が弱虫だったから。

ごめんね、きんとき。辛い思いばっかりさせて。弟は、兄ちゃんを支えないといけないのにね。


あの日、クローバー畑で誓った約束、俺は忘れてないよ。


ねぇ、神様。俺の命をあげるから。俺の幸せもあげるから。

きっともう、きんときは立ち直れない。責任感が強いからね。だからいいの。俺の幸せ、神様にあげる。

だから、一つ、願いを叶えて。

四つ葉でも無理だった、あの願いを。








「生まれ変わったら、また二人で、今度は最期まで。」
















「笑っていさせて。」







続く。

次ラストです!

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