『飴村さん、駆け落ちしませんか?』
彼女は突然そう言い放った。穏やかな笑顔で、それから数秒沈黙が続き彼女はまた寂しそうな笑顔でこういった。
『なーんて、もちろん嘘……』
『いいよ』
彼女の言葉を遮るようにそう言った。なんでこんなことしたいのか分からないが、きっとなにか理由がある。だから今は探ろう。
『えっと、いや!冗談ですって!』
半笑いでそう言うも真剣な話だと何も言わないことにした。そうすると流月も気まずいのか知らないが顔が緩んで笑っていない、寂しい顔になった。
『だからこの前あんなこと聞いてきたの?』
『え?』
『ほらあの時の』
あの時聞かれたこと、それは明日世界が滅びるなら誰と一緒いたいかだった。
☆彡.。☆彡.。☆彡.。
『飴村さん、もしも明日世界が滅びるなら誰と居ますか?』
そうやって急に聞かれた。返す言葉はこうだった。
『んー、やっぱりPosseの2人かな〜、流月は?』
『飴村さん、ですかね』
そうやって言うと流月は照れくさそうにした。でもすぐに少し切なそうにした。
『もし1人だけって言うならボクも流月かな〜』
『そう、ですか』
なるべく安心させたかった。彼女の悲しみの目を見るのがとても嫌だったから。でも結局は彼女は悲しみの目を俺に見せた。
『……なら明日世界が滅びるなら何が食べたいですか?』
次は何が食べたいかを聞いてきた。
『好きな物いーっぱいかな?実際は美味しければなんでもいいんだけど…』
『私も飴村さんと食べるならなんでもいいですかね……』
俺と一緒ならなんでもいい、そんな発言に少し喜びを覚えた。
『でも、結局私は飴村さんといたいだけなんですかね……?』
『別にいーじゃん、ボクだって流月といたいし』
『…………!なら、大丈夫ですね!』
笑顔でそう言ってくれた。大丈夫の意味が少しよく分からなかったが笑ってくれるならなんでもいい。
☆彡.。☆彡.。☆彡.。
『大丈夫ってそーいうことなんだ。』
『………………でも1人で死のうとしても止めてくるじゃないですか』
『それはそうだけど、ていうかいいって言ってるじゃん!』
『本当はそんなこと言って欲しくなかったッ!!飴村さんには、生きて欲しかった……』
泣き出す君を見るとただ一緒に逝ってあげようとしか思えなかった。寂しそうな君が一番嫌いだから、寂しいなら言って欲しい、我儘だって言って欲しい。それが本音だから。
『……行こ』
『え……?』
『電車乗るの』
『ちょっ、待ってください!手、離して!!』
腕を引っ張るしかできない、駆け落ちだってしてもいい、でもすこしだけ「生きたい」という彼女が見たい気もした。
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『どこで、降りるんですか…?』
『適当なところ』
怒ったような口調と低い声でそう言った。強く言う気はなかったが少しイラついていたのだろう。無自覚に流月を怖がらせてしまったかもしれない。
なんとなく北をめざして電車の中にいる。流月は口数は少なくなる。1駅、また1駅過ぎる度に人はどんどん減っていく。そろそろ降りた方がいいだろう。
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波の音が聞こえる。周りが静かでより大きく聞こえる。
『海で駆け落ちってロマンチックかもね』
『……ですね』
『その前にご飯食べよ!お腹ペコペコ!それに……』
『それに?』
『なんで駆け落ちなんてしたいか気になるから』
『…………分かりました』
無理矢理明るくしようとしても意味は無い。お腹が減っているのは本当なのでご飯で食べるついでになんでそんなことをしたいのか話し合いたかった。
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『わぁ、ザ・海!みたいな感じだね』
『…………ほんとに何でもいいんですね』
『うん、好きな物って言ってもドーナツだし』
『そうですね』
まだ暗い顔のまま無理に笑ってくる。彼女は嘘つきだ。俺と、駆け落ちしたいだなんて言ったくせになんでそんな寂しそうな顔をするんだ。しばらく経って聞きたいことを聞いた。
『ねぇ、なんでこんなことしたいって思うの?』
『クローンだからです。それに』
『それに?』
『こういう時間を永遠にしてみたかった…』
永遠、この幸せが壊れるくらいなら辛いことが来る前に、辛いことが記憶に刻まれる前に死ねば…この記憶は永遠となる。みたいなことをテレビか幻太郎の話で聞いた気がした。
『嫌なら断って欲しいんです。今では飴村さんには本当に生きて欲しい、私の都合で殺すなんて無理なんです。』
『……そっかボクは全然いいんだよ、ほら、海行こ』
気づけばご飯は食べ終えていた。そんなこと忘れるくらい話を続けていて駆け落ちのことを忘れてはいないが彼女がこのまま帰ろうだなんて言わないように先にそう言った。
『ほら早く!』
『…………はい』
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『ほら早く!』
『…………はい』
ただ海で遊ぶだけで死にたくはない、飴村さんが道連れになるなら死にたくはない。お願いもう止めてよ、
『見てみて!海!少し遊ぼーよ!』
飴村さんがそういうと足の裾をめくりだした。本当に海で遊んでる。飴村さんからかけられた海水、今日は少し暑かったけどその水は冷たかった。
『そんなにはしゃいでると転びますよ』
『大丈夫!大丈夫!』
『あっ』
『飴村さん?!』
言ったそばから滑って水に沈む、急いで海に入っていく、飴村さんは泳げるとは思うが上がってくる気配はない、声をかけてどこにいるか確認するも分からない。
『飴村さんどこですかっ』
『………………スゥ』
息を吸って海に潜ろうとする。このまま飴村さんが見つけられなくてホントに駆け落ちしたら?そんなの、そんなの
『!』
手と手が触れた。明らかにこれは飴村さんの手だ。
そっと目をあけると、彼は笑っていた。こちらの腕を引き寄せてきて、このままだと本当に海で駆け落ちになってしまう。そう思い男の力に勝るよう頑張って海から飛び出た。
『はっ、ハァハァ、飴村さん大丈夫、ですか というかわざと、溺れたフリをしましたか?』
『……そうだよ だって流月ボクと心中したいんでしょ?』
『したい、ううん、したかったです。』
本当の思いをこぼす。寂しい、寂しいよ、貴方がいなかったら私はもうダメだよ。
『あはっ、顔見たら分かるしずっとそう主張してたもんね…もう死にたくないよね』
『はい』
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『あはっ、顔見たら分かるしずっとそう主張してたもんね…もう死にたくないよね』
『はい』
涙を零しながらそう主張する流月は本当に生きてくれるだろうか、勝手にまたどこか行かないだろうか。不安も抱えつつ話を続ける。
『でもね、本当に心中してもよかったんだよ、だからここまで連れてきたんだよ』
『…………分かってますよ、貴方がどれだけ私を思ってくれているかなんて』
『ねぇ、流月は今どうしたい?』
『飴村さんを道連れにしたくない、死んで欲しくない、飴村さんが道連れになるくらいならまだ生きたい……』
やっと「生きたい」言ってくれた。嬉しかった。でも彼女がこのまま死ぬことを選んでもそれについて行こうと思った。考え直してくれて良かった。
『それに、有栖川さん置いていってどうするんですか?』
『幻太郎がいるよ』
『飴村さんには代わりはいませんからダメですよ』
そうやってまた泣いたあとの赤くなった頬のままいつも通りの優しい声で言ってくれた。
愛している。そう想いを伝えたくて、抱きしめた。
『ごめんなさい、飴村さん』
『ううん、いいんだよ』
☆彡.。☆彡.。☆彡.。
『まって!ホテルはいいけど着替えないじゃん!』
『地図でも送れば夢野さん達届けてくれますかね…?』
🕊 𝕖𝕟𝕕 𓂃 𓈒𓏸 💗
コメント
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楽しくて書き続けてたら3000文字いってた!わぁーい! 「サニー シー スポット」 sunny Sea spot 太陽 海 場所 (みたいな)