・展開ジェットコースター
・5番さんツンツンデレデレ
「…だっていふくん、ぜんぜん構ってくんないし」
「……俺も忙しいねんて」
僕の隣で、パソコンとにらめっこするいふくんの横顔を眺める。
黒縁メガネをかけ直しながら、真剣に資料を見つめる魅力的な瞳。
少しでもこっちを向いて欲しくて、じっと見つめているとちらっと視線が合った。
でも、すぐに逸らされる。
「…いふくんなんて嫌い」
拗ねた気持ちのまま、つい言ってしまった。
ぴたり、と彼のキーボードを打つ手が止まる。いふくんは無言で鋭い視線を向けてきた。
「……」
「…そ。だったら俺も嫌いや」
それだけ言うと、パソコンを閉じてスタスタとリビングから出ていった。僕が居ると邪魔だから、部屋を変えるのだろう。
階段を登る足音の次に、ドアをバタン、と少し強めに閉める音がリビングに響いた。
「…なにあの言い方。むかつく。」
カーペットに寝っ転がって、思わず足をバタバタさせる。
「もう知らないし。ふん、」
あんまり静かじゃ落ち着けなくて、寝転がったまま適当にバライティー番組を付けた。いふくんには聞こえないように音量は1で。
テレビの雑音を横目にぼーっとしていると、だんだんいろんな感情が湧いてきた。
あーあ。嫌われちゃったな。
せっかく大好きな人のそばに居られたのに。
自分から台無しにしちゃった。
僕がわがまま言うからだ。
あんなこと言わなきゃ良かった。
そもそも僕なんかいふくんにつり合ってないし。いふくんにはもっとお似合いな人が居るんじゃないかな。
なんだか余計なことまで浮かんできた。視界がぼやけて、溢れた涙が頬を伝うのがわかった。
「…っ、やだなぁ…」
ぼんやりしたまま、だんだん眠気に誘われる。涙を拭うのも忘れて、いつの間にか眠りに落ちていた。
「…ん……」
目が覚めると僕はカーペットからソファに移動していて、ふわりと毛布までかけられていた。
それだけじゃない。妙に温かくて、なんだか心地がいい。
「……え?」
重たい瞼をこじ開けると、すぐそばにいふくんの寝顔があった。
しかも同じ毛布の中で。
「…!?!?」
いやいやいやいやいや、なんで!?
えっ、え、なんでこんな隣に!?
頭の中でひとり混乱していると、隣のいふくんが眉をぴくりと動かした。
「…..んー… 」
「えっ、い、いふくん!?」
「…うるさい……」
「なんでここにいるの…?」
「下降りたら、お前が寒そうに丸まって寝とったから毛布かけたんやけど」
「う、うん」
「そしたらお前、俺の服の袖ぎゅって掴んで離さへんから…しゃーなし隣座ってたら寝てた」
「……」
「ほら、これ」
そう言われて自分の手元を見ると、確かにいふくんの服の袖を掴んでいた。
「……」
なんとなく袖から手を離すと、今度はいふくんが僕の手を掴んで無言で指を絡められた。
「どんだけ寂しかったん?笑」
「ち、ちがうし」
「違わんやろ。寝言で『いふくんどこ…』とか言っとったで」
「……!」
「はは、かわい」
「だって…。僕さっき酷いこと言っちゃったし…僕なんかいふくんとは釣り合ってないし……」
「……ほとけ」
「俺はお前以外考えられへんけど?」
恋人繋ぎした指先にぎゅっと力が込められた。
「そもそも、ほんまに嫌いやったらそばにおらんやろ」
「さっきはごめんな」
「……っ、いふくん大好き」
「…ん。知ってる」
僕の額に、そっと唇が触れた。
「…もうちょい寝とけ。ほとけの隣落ち着く…」
「えっ起きてよ!」
「は?なんでやねん」
「だってなんか恥ずかしいじゃん…」
「はぁ……」
いふくんはめんどくさそうにため息をついて、僕の身体をぐいっと引き寄せる。
「えっ!?い、いふくん?」
「ほとけは俺のやし。こうしといたら、お前おとなしく寝るやろ?俺も眠いんやって」
至近距離で彼の低い声が響く。
「あー幸せ。お前ハグすんのにちょうどええサイズしとんな笑」
「っ…..!」
「ふは、顔真っ赤」
「それって僕がちっちゃいってこと!?」
「うそうそ、冗談やって笑」
「もう、しーらないっ」
「……ほんま、お前可愛すぎるわ…。ずっと俺のそばにいてな 」
「…当たり前でしょ。いふくんのばーか」
コメント
2件
好きです!とてもとっても!!仲直り後のカップルってどうしてそこまでかわいいんでしょうか!?