テラーノベル
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長い夢を見ます。
とても長い夢を見たのです。
そこにはハートの形をしたカラフルな風船が所々にあって、周りは暗かったけれど蝋燭の火がユラユラと煌めきを放ちながら佇んでいました。
あたたかい。
自分の格好を見てみれば少し大きめの帽子をかぶってお洋服はお気に入りのものを着て本日の主役なんて書かれたタスキをかけていました。
あたたかい。
ふと両隣を見れば私のことを優しい目で見つめる両親がいました。母は私の頭を優しく2回ほど撫でて父親はビデオを回していました。
あたたかい。
嗚呼、今日は私の誕生日です。
ほら、息を吹いてこの蝋燭を消してごらん。
母が私の頭を支えながらそう言いました。
それをよそに私は目の前でユラユラと揺れる蝋燭を3秒ほど見つめた後、ぎゅっと目を瞑りました。
知っていた、嗚呼、知っていました。
どれだけ望んでも、これは夢なのです。
温かい灯りも、眩い光も、優しい眼差しも、全てが虚像であり数字の羅列で満たされたこの空間では、私という例外的存在はどこにも在りはしないのです。
なので、目を瞑ります。そうしてしばらくするとあの温度も光も眼差しも全てがなくなって暗闇に放り出されるのです。そしてしばらくすると音が聞こえてきます。
ゆっくりと目を開けるとそこは冷たい空間のように感じました。白いベッドと腕に繋がれた線と見下ろすような電気の下で私はようやく目を醒ますのです。
つめたい。
今日は私の誕生日だというのに。
どうしてこんなにもつめたいと感じてしまうのか。嗚呼、悲しいな、かなしいな。
ただそこには、数字の羅列も虚像も偶像も存在しない無機質な現実だけが残酷なほどに広がっているのです。
コメント
1件
うわあ、これ、冒頭の“あたたかい”が三回も繰り返されるのに、全部が夢の記憶だと分かってる視点がすごく切ないですね……。風船や蝋燭の灯り、両親の優しさが“数字の羅列”でしかないと突き放す主人公の冷静さが、逆に傷の深さを感じさせます。ラストの“つめたい”が響きました。第1話なのに、もうこの世界に引きずり込まれています。続きが気になります!
37
羽海汐遠
13,008
るる
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