side.Y
最近、気づけば視界にえとさんが居る。
たまたまなのか。
はたまた俺が本能的にえとさんを
目で追っているのか。
出来れば前者であって欲しいが、
それが叶わないほどには
今の自分の思いを自覚してしまった。
えとさんはどう思う?
迷惑かな。
それとも少し嬉しかったり、 なんて。
たとえそうであっても、そうでなくても
この思いは蓋をしておかなければならない。
だって、俺が大切なグループを、皆を
壊すわけにはいかないからね。
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今日もいつも通り。
平然を装って。
「ゆあんくーんゲームしない?」
よく通る元気な声。
からぴちではブサボ担当だけど。
「しゃーないなー。」
「なに、乗り気じゃないじゃん。」
「そんな事ないし、?」
こうみえてじゃぱぱは勘が鋭い。
のあさんとほほ互角だと思う。
メンバーの事は特に。
全てを見透かしてる様で、
内心、えとさんへの気持ちがバレていないかひやひやする。
そんなこんなでじゃぱぱと遊んでると、
見慣れた栗色の髪が視界をチラつく。
「お、えとさんじゃーん」
「風呂上がり?」
少し鼓動がはやくなる。
まだ髪が濡れていて、おまけにタンクトップときた。
危機感というものを持ち合わせていないようだ。
正直目のやり場に困る。
「コンセント壊れててさ。」
「こっちに乾かしに来たの。」
そう言ってまだ火照った顔で微笑む。
「え!まじで、壊れてんの?」
「早く直さないと、たっつんに伝えてくるわ!」
まだゲームの途中だっていうのに、
じゃぱぱはそそくさと去っていった。
つまり、俺とえとさん2人きり。
「っあー、えとさん!ゲームしない?」
2人きりという響きがくすぐったくて、耐えられなくて
苦し紛れに放った一言。
やらかした。 今から髪乾かすって言ってたのに。
「えっ、ほんと? 」
「ゆあんくんが誘ってくれるなんて珍しい!」
なんか変なものでも食べたのかと笑いながら
ソファの方に身を乗り出して、
俺の腕をぺちぺちと叩く。
いつの間にか俺とえとさんは ほぼゼロ距離。
長いまつげ。白くてきめ細かな肌。
ぷるんとした可愛らしい唇。
吸い込まれそうなつぶらな桃色の瞳。
近くで見れば見るほど、その瞳に吸い込まれそうで
視界が金縛りにあったみたいに動かない。
「ゆあんくん? 」
「っごめん!いや、その本当ごめん」
何してんだ俺。いつも、今も、
えとさんから目が離せない。
まるで君に視覚を奪われたみたい。