テラーノベル
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『見えるものがあるとするのならば、絶望と白い壁のみでしょう。』
「ッは…床がかてぇ…」
誰に言うでもない愚痴、というかシンプル悪口。
聞いてくれる人がいないとこうも虚しいものか…
聞いてくれる人なんぞ私の周りに五人といたことはないけれど。
そんな風なことを考えて喋って顔を上げて、あたりを見渡せば知らない部屋。
何だろう、ゲームの中的なそれかな。
夢魔にでもやられたか。
あんな事は言ったが、床に寝たことがないだけで我が家よりはマシ…だよね…?
そんな気になる床の材質はコンクリート。に、薄いカーペット。
固いのは当たり前じゃないか、何を言っていたんだろうな私は。
壁は白塗り。
それと家具が何個か、すべて木製の扉とちっさい机、それからまたもやちっさい棚。
何もかもが小さい、小さい。
子供部屋かいな。
まあ、子供部屋にしては殺風景だよね。
彩色って物をもう少し工夫できなかったのか、設計者は頭が悪いのかもしれない。
しかも汚れてますよちゃんとお掃除してくださいね?
汚くちゃ困るでしょうよ、しかも血だなんて…
「ぁ、おはよう!」
ちょうどリングも起きたようだ。
「ここ知らないところ?」
「うん。特になんもないから出なくてもいいと思うけど。」
そう。そうなのだ、こんな世の中で安全な場所がやっと見つかった気分。
犯罪者がいないし、ゴミも落ちてないし、無料だし。
暇だけど、二人いれば話せるし。
そんな風に考えていると、リングが起き上がって先ほどの扉をガチャガチャやる。
「鍵かかってるよ?あ、」
鍵が閉まっている以外にも何か見つけたらしい。
「どしたの、他になんかあった?」
「文字が書いてあるよ、『goout』だって!」
つまりはまあ、出ていけってこったな。
初対面にしてはひどくないですかどこかの誰かさん…
そんな扉に書かれた言葉を取り敢えず鵜呑みにして辺りを見渡すが、何か危険があるようには見えない。
ただ、何もないだけ…
何もない?
「ごめんリング、噓ついた。ここから出よう。」
「なんで?」
よくわかっていないリングはさておき、歩きながら部屋の隅から隅を眺める。
床には何も落ちてないし棚を開けても中身は空、窓はないから扉を開ける以外に脱出方法はない。
本当に、正に何もない、本当は理想としていたはずの空間。
あーあ、これで食料があったらよかったのに!
私はよかったとして、リングが困る。
水分も存在しないため、私も別によくはないが。
「焦らなくていいんじゃないの?」
戸惑いながら問いかけ続ける隣のオムライスカラー。
何も説明しなくちゃまずいか、そうかそうか。
焦り始めって人の話聞けないよな。
「ここには何もないって、私は最初に説明したよな。」
「うん。」
「別にいいかなって思ってたんだけどさ、」
「うんうん。」
「食べるもんもなかったわ。餓死する。」
「そっか!じゃあ早く出なくちゃ…」
「うん。」
よし、まずは鍵を探そうか。
リングは反対側の小さい机を、私は棚を。
隅から隅まで撫でまわして、開けて、傷つけてみて。
下を覗いたら、カーペットの切れ目が見つかった。
「ん…」
めくってみる。
カーペットが明らかに湿っていて萎えたが、代わりに苔の生えたコンクリートの地と鍵が見えた。
手を伸ばしてそのべたりとした鍵を取り、起き上がろうとして棚の底に頭をぶつけた。
ごん、という響くような絶妙な音がする。痛い。
今度はゆっくりと棚の下から体を出し、起き上がる。
「リング、鍵あった。」
机を模索していたリングがこちらを振り返る。
「やったー!早く出ちゃおう。」
「そうだな。」
鍵を使って扉を開けた先には、木製で温かみのある廊下が広がっていた。
いくつかメモ帳サイズの張り紙が貼られており、廊下の向かい側には目視できる限り三つの扉がある。
「これって、どれかに入ったほうがいいのかな?」
先を歩いていたリングが引き返してきて、こちらを見る。
まあそうだろうな、窓とかないし。
外の世界を見せたくないという絶対的意思を感じちゃうよ、もう。
「ほかに出口がなかったんなら入ろうか。」
「なかったよ?」
即答かよ。
「……じゃあどこに入る?」
「右!」
休む間もなく、張り紙を読む暇もなく。
私たちは次の扉を開けた。
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