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家のドアが勢いよく開いたかと思えば、最近姿を見せなかったヒスイがやってきた。
ヒスイの顔は涙に濡れている。
「ごきげんよう。ヒスイ……私になんか用?」
「た、大変なの……みんながっ……みんなが……!」
涙を零しながら叫ぶ。
うるさいわね……声の大きさ考えなさいよ……
耳が壊れる…………
「それで? 貴方のお友達がどうしたって?あ、今は悪女のお友達だったわね」
コイツがどうなろうと知ったこっちゃないけど……聞くだけ聞いておかないとね……
ヒスイによれば、悪女が館で虐殺ショーを開いていたのだそう。
虐殺の対象は、洗脳の切れたと見なされた者たち。
今までに、ココン、ルミナ が対象になってたみたいね……
そして今回の対象は、ベルソー。
彼は悪女のお気に入りらしく、今のところ瀕死で済んでるみたい。
ヒスイのお友達が殺されようと、私には関係ない……だけど……………
私の友達が殺されるのは気に食わないわ……
「元」親友だとしてもね。
「私の館でそんな事してるの?」
「ランとかアオトは大丈夫かな……」
信じられないという顔で眉間に皺を寄せるアスカと、屋敷に居るはずの助手2人を心配するアルカ。
そんな2人を見つめて、ヒスイは言った。
「そ、それで……このままだとみんな死んじゃうから……私、あの館に乗り込むことにしたの!」
「「「は?」」」
何を言い出すのよコイツ……
とうとう頭狂った?
それとも……まだコイツは救世主らしくみんなを救いたいだとか言い出すのかしら……
「私……みんなのこと助けたいの……!」
大当たり。
「……あ、貴方……何言ってるのよ……今日って……無茶よ。」
「そ、そうだよ!もうちょっと準備しよう?」
流石の二人も、止めに入る。
「……今日行かないと……今生きてるランとかアオト……ハルカも死んじゃうから……」
「っ……」
「死んじゃう」その言葉にアルカが食い下がる。
「……アスカ…アルカ……どうするの?」
「ぼ、僕は……行く。行くよ……」
「……私も……行くわ」
そう……みんな行くのね……
全員死んで、私だけ残されるくらいなら……
「……行く……」
みんなで死んだ方がいいわよね……
二度と同じことは繰り返さない。
「あ、ありがとう…! 」
「それで? いつ出発するの?」
「……1時間後くらい……かな?」
「わかった。 それじゃあ早速準備しましょ…」
「えぇ…そうね、それじゃあ……1時間後……」
「うん。 じゃあね………」
それぞれ、荷物を取りに行く。
二人の荷物は家に来る時に持ってきてたみたい………
私は自分の部屋に向かい、引き出しからカッターナイフを取り出す。
今まで自分の腕ばかり傷つけてきたこのカッター。
「……私以外を切ることになるのは初めてね……」
このカッターの最後の仕事。
悪女の始末。
《………お前も行くのか?》
少し寂しげな様子のカルヴァリーが尋ねる
「……えぇ。 貴方に会うのもこれで最後かもね。」
《おいおい……そんなこと言うなよ…》
「……それじゃ、お留守番、よろしくね……カル。」
《……あぁ。》
懐かしいわ……ここに住み始めて、初めて貴方にあった時のこと……
初めて見た幽霊に、少し驚いたけど……貴方が初めての友達だった。
たまに、喧嘩をしたり……冗談を言い合ったり……一緒に出かけたりもしたわね………
貴方は覚えているかしら……?
《気をつけてな……帰って来るの待ってるから。》
「えぇ……ありがとう。」
《幽霊仲間も、大歓迎だけどな》
部屋を出る直前、彼がそう呟いたのを聞いて、
口元に笑みが零れる。
不器用な貴方だったけど……何度も救われてるのよ……?
また会えるといいわね……