コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「…。」
「…あれ?セノさんかな…?」
足音がしたような気がしたから、気になってドアを開けてみた。
「…えっ?」
そこには、なんかよくわかんないけどボロボロな姿で立っているセノさんがいた。
「コレイか。ティナリを呼んでくれ。」
「えっ?いやいやいや、待ってくれ、その。えと、どうしたんだ…?」
師匠を呼んでくれ、とそんな平然な顔で言われましても、と困惑した。
「…セノでしょ?どうした…ん…?んん?」
ほら見ろ師匠も困惑してる。
「どうしたティナリ。俺の顔になにか着いてるのか?」
どうしてセノさんはそんなスンって冷静に話してるんだ???
「…いや、わざわざ言うのもあれだけどさ、君どうしてそんなボロボロなんだい?」
…ありがとう師匠あたしが怖くて聞けなかったことを聞いてくれた。
「あぁ、だからそんな変な目で見てたのか。」
変な目って言うか?普通。
「…で?どうしてそうなったんだい?」
はっ…そうだった。そっちが気になってたんだった…。あまりにセノさんが淡々と話してるから忘れてたな…。
「話すと長くなるが。いいか?」
「別に?僕は今日の仕事が終わった…と言うよりかいつもより少ないから、大丈夫だよ。」
…えっ?これあたしにも聞いてるのか?
「あ、あたしも…大丈夫…だな。」
「ならいい。話すぞ。 」
あっ、本当にあたしにも聞いてたんだな…。食い気味に話を始めたからな…セノさん…。
「そう、あれは数分前…。」
えっ?数分前なのか…?
俺はティナリの誕生日プレゼントに、ちょうど31枚目のカードを渡すために早めに仕事を終わらせたんだ。
「待ってセノ、ストップ。」
「どうした?」
…どうしたもこうしたも多分ないだろ…。
「僕にカード渡して喜ぶと思ってるの…?君。」
そっちなのかよ。てっきり31枚目なんて中途半端なところを渡すな、って言うかと思ったのに…。
「……あぁ。」
…その間はなんだ…?
「だったらその間はなんだよ!」
師匠も言ってる…。いやあたしは正確には言ってないけど…。
「…まぁいいや続けて、セノ。」
「あぁ。」
アビディアの森に入ってすぐの所で、俺は突風に襲われたんだ。多分コレイなら吹き飛ばされてたな。…その風で、俺はティナリに渡すカードを落としてしまったんだ。
もちろん、俺はそれを取ろうとした。いや、結論から言えば既に俺は今手元にカードがあるから取れたんだが、また突風が吹いたんだ。
その時微かに
「チッ…。」と、聞こえたような気がしたんだが気のせいだろうか。そういえば1回目の時にも「あれ?」と、聞こえた気がする。
恐らく気のせいだろう。2回目の突風で、俺が立っていた崖が崩れて俺は落ちてしまったんだ。
怪我はその時のものだ。
だが、もうすぐ日付が変わる時刻だったから俺はそのままガンダルヴァー村に行ったんだ。
普通に痛い。
「で、今に至るという訳だ。」
…どういう訳だ…?ちゃっかりあたしのこと軽いって言ってるし…。いや、いいけど…。
「どういう訳だこのバカ!」
「説明した通りだが?」
…まずいこれは**師匠激おこモード**だ…!
「はぁ…とりあえず、手当するよこのバカ。」
「…俺はバカじゃない。」
「そういうとこだよ、このバカ。 」
…あっ、あたしは空気だな…。
正直なとこ、セノがこの状態で来たことにはとても驚いた。それよりも、手当しないとだった。
「…セノ?」
「どうした?」
…全く君ってやつは…。
「僕たちに心配させてさこの…。悪いな…とかって思ったりしないの?君。 」
「……思ってるが?」
さっきも同じくらいの間取ってなかったっけ君。分かりやすくはあるんだけどね…。はは…。
「…はぁ、思ってないよね?絶対。」
「なぜバレたんだ?」
…君、君が思ってる以上に分かりやすいからね?
「さっきも同じリアクションしてたからだよ、このバカっ!」
…はっ…ついムカついて強く包帯を巻いてしまった…!?
「…痛い、ティナリ。…いてぃなり…? 」
……。
「…君ってやつは本当にさぁ…!それダジャレにもなってないからね!?僕の名前で遊ばないでくれるかな!」
結構本当にムカついて本当に強く包帯を巻いた。
「痛いやめろティナリ。」
「君が、最初にやったんだろ!?」
「…?」
…そういうとことかね…うん。
「俺は別に強く包帯を巻いたことはないが?」
「…それ悪化しない?大丈夫?」
つい心配をしてしまった。…しまった、というのも変だな…。
「ていうかセノ、君疲れてない?」
「崖登りしたからな、疲れた。」
…なんで数分で崖登れるんだよ全く…。
バタッ…
「…?」
「音がしたな。ティナリ見てきたらどうだ?」
「言われなくても、そうするつもりだよ。」
…この時間帯(0時近く)ってことは仕事関連ではなさそう…かな?知り合いの可能性が高そうだね。
「…は?」
「あれぇ?てぃなりじゃぁないかぁ!ここはどこなんだぃ?」
…そこには、酷く酔っ払ったカーヴェがいた。
「ちょ、君、どれだけお酒飲んだのさ!?」
「んーぅ?10杯近く…?」
…はぁ…今日は僕の誕生日だってのに厄介事が多いな…。
「ティナリどうし…。カーヴェか…。 」
「しかも、相当飲んで酔っ払った、ね。」
「俺とティナリの時間を邪魔するな。」
何を言っているんだこの大マハマトラは。
「ちょっとセノ?勘違いさせるような言葉言わないでくれる?」
「あれぇ…ティナリが2人いるぅ…?」
「だいぶ、まずいかもしれないね。君も含めて説教しようか。」
「俺もなのか…。」
「…セノ、まず君からね。」
「あぁ。」
正直、どんな説教かは想像がついている。俺とティナリの仲だからな。
「…変なこと考えないでよね?」
…ほら、皮肉にも俺が考えていたことを証明するようなことを言っただろ?
これが俺とティナリの仲だ。
「怪我したなら、まず真っ先に手当して、君の事だから持ってるだろう?」
「そうだな。持ってる。」
…今日は持ってなかったが…。
「それ以前にまず僕七星召喚のカードいらないって話する?」
…!?!?!?!?
「なん…っ!?」
「わかってなかったの…?」
…オレトティナリノナカナンダ。ワカッテナイハズナイダロウ。
「…。」
「…正確には、君からもう沢山貰ってるからこれ以上はいらないよ、ってこと。もし渡したいならコレイに渡してね。」
「”これ以”上…”コレイ”…。」
…天才的なだじゃれだ…!
「…やめてくれる?コレイも見てるんだよ?」
「えっあっ…セノさ…」
「コレイ、面白くないか?」
ティナリは冷ややかな目で見ているが気にしないことにした。
「えと…あたしの名前でだじゃれって言うのは…その、やめて欲しい…かな。この前のコレコレイもそうだけど…。」
…!?
「だってさ、セノ。せめてやるならカーヴェかアルハイゼンにしてくれる?」
…しかしそれでは…
「カーヴェもアルハイゼンもジョークが作りづらいんだ…!」
「…草神様なら受け入れてくれるよ多分。」
…もしかしてそのときは…!
「その時も僕とコレイ名前は使ったらダメだからね?」
…そうか…。
「はい、一旦セノへの説教は終わりにして…っと。次はカーヴェだね…聞いてるか微妙な感じだけど…。 」
「えぇ〜?どうしたんだぁ〜?」
どう見ても話の通じる状態じゃないな。
「カーヴェ、お酒飲みすぎ。ちょっとは抑えられないの?またアルハイゼン来ちゃうよ?」
またなのか…。
「今回はアルハイゼンが悪いんだ!」
「…?どうしたの?」
「だってあいつが!僕のなけなしのモラを使ったんだ!!今月分の借金返してないのにさぁ!!」
……。あのアルハイゼンが…?
「…それまたどうして?」
「本人曰く間違えた、とのことだ!ふざけるな!だからヤケになってあいつの金で酒を飲んだんだ!」
「…で、このまま帰るのも気まずいから僕の家に来た、と。」
「何をしてるんだカーヴェ。」
「どう見たって君に言われる筋合いはないように感じるが!?」
…どうやらバレてたらしいな。
「カーヴェ。いるか?」
カーヴェ、ご愁傷さまだな。
「今取り込み中…!!こらっ…!!」
「ではまた。」
そういったアルハイゼンはカーヴェをお姫様抱っこして持って帰ろうとした。
「聞こえなかったの!?お取り込み中!!アルハイゼン!」
…いつものティナリの口調じゃないな。
「悪い、遮音モードにしていた。」
「全く、君も君だよ。揃いも揃って僕に説教されたいの? 」
…俺は別にされたい訳じゃないが…。
「離せっ!このっ!姫抱っこはやめろばか!」
…それどころじゃないな、これは。
「…アルハイゼン?」
「どうした?」
「なんでカーヴェ抱えたまま座ってるの?」
それを見た俺は笑いを堪えずにはいられなかった。
「笑うなぁ!セノぉ!こいつ剥がすの手伝えよ!」
「…アルハイゼン?一旦おろそうね?」
「何故下ろさなければならない。話が終わったらすぐ帰るつもりだから抱えたままにしたまでだ。 」
疲れないのか…と一瞬思ったがこいつに多分疲れるとかいう機能はないだろう。
「あぁ!もう!君たち!僕をどれだけ怒らせれば気が済むのさ!?今日…いやもう昨日だけど僕の誕生日だったんだよ!? 」
「その点に関してはすまない。」
「…あっ…君の誕生日だってことすっかり忘れてたよごめん。」
カーヴェ…。
「…誕生日を祝う意味とはなんだ?」
もっと失礼なやつがいたな。
「アルハイゼン…君ねぇ…。」
「冗談だ。俺は早く帰りたい。」
良かった。失礼なやつではなかったようだ。
「ところで、いつまでお姫様抱っこしてるの?君。」
「無論、俺が家に帰るまでだ。酔ったカーヴェをベッドに降ろすためにな。」
確かに降ろしやすそうだ。さすが効率を求めるアルハイゼン(?)だ。
「はぁ……まぁいいや。今回、ここに居るみんなが僕に迷惑を掛けたことは自覚してるよね?」
「あぁ、もちろんだ、ティナリ。コレイとティナリにこれ……とても心配を掛けたからな。 」
「もう1個あるでしょ?」
……??あ……
「……コレイとティナリの名前でだじゃれを作って悪かった……。」
「よろしい。カーヴェは?」
…そういえばさっきほとんど酔いから覚めてたな。
「…アルハイゼンの金を使った挙句気まずくてティナリの家に来て悪かった。だがアルハイゼン、君は僕にも謝れ!!」
ティナリが凄く腹を立ててそうな表情をしていて面白いな。
「セーノー?面白くないからね?」
まずい、バレてた。
ペタペタ……
「あれ?セノ?今歩いた?」
「何をどう見たら俺が今歩いたと思うんだ。」
「いや、セノと少し似た足音がしたから……。」
……確かに、今足音がした。誰だろうか。
「あら?今お取り込み中かしら?」
なっ……
「「クラクサナリデビ様!?」」
…やはり俺とティナリは仲が良い……って今は違うだろう。
「ど、どうしてここに!?」
「それが……。」
あれは数分前の出来事だったわ。
「ストップ、みんな教令院からガンダルヴァー村に来るの速くない?」
「そうかしら?全速力で走ったら案外近いものよ?」
……クラクサナリデビ様が全力疾走か……。想像がつかないな。
「あっ……そうなの?セノ。」
「あぁ。俺が全速力の半分くらいで走れば10分より早くにつく。 」
……正確な時間はわからないが。
「そうなんだ初めて知ったよ。」
「話続けて大丈夫かしら?」
「あぁ、うん。」
スラサタンナ聖処で私含めた七神……といっても戦争で大変な炎神と何をしているのかよくわからない氷神は来なかったけれどね。その中で風神が遅刻してきてこう言ったの
「道中で誰かに強風当てちゃったっぽい!えへっ。」
ってね。その後すぐ笠っちがおつかいから帰ってきてこう言ったの
「……なんであんなとこに人がいるんだ……。チッ。」
と。私は気になって世界樹で見てみたの。そうしたら風神が貴方のカードを、笠っちが貴方を落としてしまってるのが見えたの。なんで風を吹かせながら飛ぶのか私には理解ができなかったわ。
「ということなの。ごめんなさいね。」
……なるほど、あの時聞こえた声はその2人のものだったのか。
「いえ、俺は大丈夫ですので……。」
「……僕とコレイにどれだけ心配させたかもう忘れたの?」
…今はそれ言わなくてもいいだろう……。
「大丈夫なら良かったわ。直接笠っちが行ったら良かったのにあの子ったら恥ずかしがって行かなかったの。」
多分それ恥ずかしがってるわけじゃないと思うのだが……。
「あ、あの、ちょっといいか?」
「コレイ、どうしたの?」
もう1時近いからもう寝た方がいいだろうと思ったが抑えておくことにした。
「風神……って風神バルバトスだよな。なんで遅刻したんだ……?」
「なんて言ってたかしら……確か…「えへっ、リンゴを食べてたら時間になっちゃってたんだぁ。」って言ってたわね。」
なぜリンゴ……。
「そうなのか……。」
「ところで、コレイ。もう遅いから寝た方がいいんじゃない?」
あ、俺がさっき言おうとして抑えたセリフを言われてしまった……。
「これで一件落着かしら?じゃあ私は帰るわね。」
「では、俺も。」
どさくさに紛れて帰って行ったなアルハイゼン。
「あっ、ちょっと待ってアルハイゼン!待ってって言ってるだろ、アルハイゼン!」
どうやらあの様子だとまた遮音機能を付けたらしい。もともとの目的も果たせたし俺も帰りたいところだが……。
「なあ、ティナリ。七星召喚をやらないか? 」
「いいけど、帰らないの?」
「明日は休日でどれだけ遅くなっても大丈夫だからな。」
「そっか、ならいいや。…僕は明日も、と言うよりか今日じゃない?まあ仕事があるから早めに終わらせてよ?」
「わかっている。睡眠不足でお前が崖から落ちたら大変だからな。 」
ってそれは……
「それは君じゃないの?」
……突っ込まれてしまった。
「ほら、早く始めるよ。」
「あぁ。そうだな。」
それから俺とティナリは七星召喚を何試合かやった。気づいたら2時を過ぎていた。
「あっ、まずい。こんな時間だよもう。」
「そうだな。じゃあ俺は帰るとするか。」
と、俺は帰ろうとした。が、
「ちょ、ちょっと君は今怪我をしてるんだよ!?それも大怪我。また崖にでも落ちたらどうするつもり?僕も付き添うよ。」
「……いや俺一人で十分……。」
「君は僕の患者だろ?患者は医師の言うことを聞かないとね?」
なんという理論を展開するんだこのティナリは。だがまぁ……
「分かったよ。だが、森を出るところまでで頼む。お前も早く寝た方がいいだろう。」
「仕方ないなぁ……。本当は最後まで付き添うつもりだったけど、君の言う通り僕は明日のために早く寝たいからね。 」
なら出発しよう、と言おうとしたその時
「ちょ、まっ、君、僕が手当してから服きてなっ……。」
すっかり忘れていた。包帯と俺の服はどちらも似たような(?)ものだからな。
「……着せてくれ。」
「はぁ!?なんっ、このっ、ばっ……。バカっ!!!」
ついティナリの反応を楽しんでしまった。
「さすがに冗談だ。大怪我人でもさすがに服くらい着れる。」
「……それは大マハマトラと大怪我を掛けてるの?」
……天才か?だが、
「そんなつもりでは無かった。天才だな、お前は。」
「そんなことで天才になっても嬉しくないよ。」
そんな会話をしながら俺たちは改めて出発した。
「ところで、君はどんな崖で落ちたの?」
「チンワト峡谷辺りだ。」
「確かにあの辺高低差あるもんね。」
……あれは。
「ティナリ、あれ見ろ。カーヴェがいつも髪に付けてる羽……?じゃないか?」
「確かにカーヴェの羽に見えるね。でも崖の近くにあるから取るのは……って聞いてないし。」
なにかティナリが言ってたような気がしたが気のせいということにして俺はカーヴェの羽に足を進めた。後ろを見るとどうやらティナリも追いかけてきてるようだ。
俺が羽を取り、ティナリが近くに来たところで俺が崖から落ちた時のような風が2回吹いた。
「あれ?君もこっちに帰るの?」
「たまたまだ。僕はルッカデヴァータダケが欲しいだけなんだ。」
そんな会話が聞こえたと思ったら、俺とティナリは崖から落ちていた。それとルッカデヴァータダケが欲しいだけ……きれいだな。
「えっ!?セノ、どうにかしてよ!」
「無理だ。死を感じよう。ティナリ。」
「なっ、この!諦めるなバカ!」
これに関してはお前の方がバカだろう。この落下速度で死を感じない方がおかしい。
だが、俺とティナリは最後まで落ちなかった。
「あれぇ?数時間前も落としちゃったよね?ごめんね。でも、落とした正確な人は〜。」
「チッ、わざわざ言わなくてもいいだろう。」
……ということはこの人が風神か。
「謝れば済む話だと思うよ?」
「……ごめん。」
「あぁ、うん。えっと、風神バルバトス、だよね?」
「うん、そうだよ〜。」
合ってたみたいだ。クラクサナリデビ様の説明を疑っていたわけではないが。
「とりあえず上まで引き上げてくれません……?」
「あっ、ごめんね、忘れてた。笠っち〜手伝って〜。」
凄く平和な会話に聞こえるがこれは崖から落ちたのを引き上げるという会話だ。忘れないように。
「君がひとりで引き上げればいいだろう……!」
「責任は負うべきだよ?」
この風神怖いな。
「……チッ。」
「ありがと〜。」
そう言った彼らは俺たちを崖上まで引き上げて行った。その後、彼らはすぐに帰ってしまった。
帰ったかどうかは知らないが。
「あの笠っちさん相変わらずだったね。」
「あぁ。そうだな。教令院に来る前の彼がどんなだったかこんど旅人にでも聞いてみよう。」
「そうだね。僕も彼のことは気になるよ。」
だが、前に旅人にあいつの事を聞いた時何か隠してるような気がしたのだが……。旅人のことだ、なにか理由があるのだろう。まあ聞けるとこだけ聞ければいいさ。
「ところでセノ。ここどこ?」
「どうやらあの風神たちは俺たちを璃月近くまで運んでしまったようだな。」
「なんでそんな冷静なの!?」
「…結構焦っているが?」
そんなことは特にないが……。
「バレバレな嘘はやめな?コレイにもバレたらどうするの?」
「なんとか押し通す。」
「やめろよ、バカ。」
なんとなく凄くティナリが笑顔な気がした。気のせいだろう。
「今日はやけにバカバカ言うな、お前。」
「だって今日は君がバカでアホな言動をするからだろう?」
そんなことした覚えは無いが、まあティナリが言うならそうなのだろう。
「以後気をつけるよ。」
「君がそう言って気をつけたことある?」
だいぶ意地悪な表情を浮かべてティナリは言った。
「ないな。」
「即答なのかよ……!」
パイモンみたいなツッコミのしかたをしたな。
「で、どっちに帰ればいいの?これ。」
「多分南西方向だろう。」
……まずいそっちはアビディアの森だった。教令院に帰るには西南西から西あたりだったな……。
「はぁ……ちょっと違ったんでしょ?顔に出てるよ。」
「あぁ。南西じゃなくて西南西から西だった。」
「大して変わらないだろ!」
距離が離れてるとだいぶ変わると思うが……。璃月とスメールは言うほど離れてなかったな。
「では、改めて帰るとしようか。」
「おやおやそこのお2人さーん。往生堂に御用でもあるのかな?」
不気味な笑みを浮かべた女の人がこちらに話しかけてきた。
「……えっと、セノ?ここってスメールから見て東北東辺りなんだよね?だったら層岩巨淵くらいのはずだよね!?なんで璃月港に居るはずの往生堂の人がここにいるの!?」
深夜テンションも相まってティナリは相当混乱…?してるようだ。
「……胡堂主。」
「どしたの?鍾離先生?」
「どう考えてもこの方たちは帰るところだろう。勧誘してどうするんだ。」
「そっかぁそれは残念。でーも、いつでも往生堂は歓迎歓迎!」
なんなのだろうか、この話は。
「あはは……お世話にはなりたくないかな……?」
「残念だなぁ……。人はいずれ死するものなのに……。そっちの方は?」
……まさかこっちにまで火が飛んでくるとは……。
「俺も遠慮したいな。もし死んだとしてもティナリに弔って貰いたい。」
「……はぁ?それ冗談だよね?僕にそんな技術はないよ。」
まずい、つい本心が出てしまった。
「おやぁ、仲のいい友人さんに弔ってもらえるだなんて…いいですねぇ!」
「あ、あはは……。」
なんだかティナリが物凄くここに居づらそうな表情をしている……。
「胡堂主、そろそろ帰したらどうだ。」
「それもそうだね。じゃ、また会うことがあったら。」
なんともキャラの濃い人だったな。改めて帰ると……って何回言うんだ俺は。
「…ねえセノ、今日散々じゃなかった?」
「あぁ。だがお前の方が……」
そう言った俺を見てティナリは不敵な笑みを浮かべ
「へぇ、ちゃんと反省してたんだ。よかった。あっ、そうだセノ今日君の家に泊まらせてくれない?」
と言った。突然の泊まらせてくれ発言に俺はびっくりしたが、
「あぁ。」
と、めっちゃ普通に承諾した。
「だがどうして急に泊まらせてくれと言ったんだ?」
「んー?さっきの人の相手と七星召喚と今日の面倒事に疲れちゃってね。ここから自分で帰るよりもセノと帰った方が安全でしょ?」
と言って笑った。
確かにその方が安全だな、と俺も思ったがここで事件がひとつ。
「俺の部屋、凄く狭いぞ?」
そう、いつも俺がティナリの家に泊まりに行く、ということはあってもティナリが俺の家に泊まりに来る、ということは今まで1度もなかった。
だからまあ大丈夫だろうと俺は狭い部屋のまま生活し、必要最低限しか整理していないのである。
「あ、あはは……。じゃあスメールシティで部屋でも借りようかな。」
なに、それでは……!
「わざわざ俺が迷惑を掛けたのに金を払って部屋を借りるだと……!?」
「冗談。狭くても全然僕はいいよ?セノの家に泊まりに行ったことなんてないしね。」
俺はほっとしたがその後すぐに何にほっとしたのかよく分からなくなってしまった。
「これでセノから迷惑料は貰えたね。じゃああとはアルハイゼンとカーヴェからも……」
……!?
「迷惑料……だったのか……?」
「じょーだんさ。ちょっと深夜テンションみたいだ。眠気覚ましにスメールシティまで走らな……あぁ、そうだった。君怪我してたんだった。」
そうだった。ついでにまだ服着てないんだった。
「ていうか君、さっき僕が服着てって言ったのにまだ着てないよね?」
すごい、バレてる。
「バレてたか。着せ……」
「その会話はさっきやっただろう!いい加減にしてくれ!」
「すまない。」
つい反応を見て楽しんでしまうな。
「おや。」
凄く聞いたことのある声が聞こえた。
「げっ……。」
「げ、とはなんだ。カーヴェと同じような反応をしないでもらいたい。」
だろうな。と思った。
「アルハイゼンか。さっきぶりだな。」
「どうして君たちはまだ寝てないんだ?」
「君こそだよ。僕たちは七星召喚をしてから崖に落ちて、往生堂に絡まれてちょうど帰ってきたと……。あっ、そうだセノ。さっき拾ったカーヴェの羽返さない?」
すっかり忘れていた。探してみよう。……
「……どこかに落としてしまったようだ。」
「ちょっ、えっ?セノ?」
「カーヴェの羽……?あぁ、あれのことか。道中で「ない!探せー!このやろー!」などと騒いでいたな。」
アルハイゼンがするカーヴェのモノマネがシュールで思わず笑ってしまった。
「ふふっ……。でもアルハイゼン、なんで探してあげなかったの?」
「面倒だったからだ。」
あはは……。とティナリは今日何度目かわからない苦笑いをした。
「…アルハイゼンはなんで今外にいるの?」
「君に迷惑を掛けた非礼を詫びようかと思ってな。あの様子だとカーヴェは来れないだろうから俺一人で来たのだが、君がちょうどいい所に居たからな。」
「はぁ!?もし僕が寝てたら起こしてたわけ!?」
ティナリはいつも以上に大きい声でツッこんだ。
「それはもちろん起こすつもりだった。……それと声が大きい。ここはシティの近くだ。あまり声をあげない方がいい。」
それとからの文の方が長くて少し笑ってしまった。
「…君が変なことを言うからだろう……?」
ティナリは不服そうな表情で言った。
「変な……?」
「ま、まぁまぁ……。わざわざ帰るのも面倒だし…こ、ここでやるのはどうかなぁ……?」
なんとなくティナリが話を逸らしているような気がする。
「それもそうだな。はい、これ。」
「……なんだい?これは。」
見た限りキノコか……?
「カーヴェが採集したキノコセットだ。本人に許可は取っていない。」
「取れよ!それは取らないとだめだろう!?」
「あぁ、俺もそうおm「安心しろ。カーヴェの採集はいつも保険をかけている。」
なに……!?華麗にスルーされただと……!?
「はいはい。受け取ればいいんでしょ?じゃあまた、ばいばい。」
ものすごい速さで話を切り上げてるな……。
「さて、正真正銘本当に帰ろうか、セノ。」
「いや帰るのは俺の家だが……。」
「う、うるさい……!」
そう言って少し怒っているようなティナリを見て俺はティナリと一緒に足速に家へと帰った。
その道中では、今までの道中にないくらい平和な時間が流れていた。
そう、俺の家に1人のマハマトラが泊まっていなければ……。俺はすっかりあるマハマトラを泊めていたことを忘れていたのだ。
次回、ただの修羅場。続く
「続かないよ!バカ!」
「そもそも俺は部屋にマハマトラを泊めることはない。」
「じゃあなんだよこの回想は。」
「今適当に考えたものだ。」
「……はあ……。」