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確かに一瞬退職も考えたけれど、1年後、もし自分が1人になってしまった時のことを考えれば、この仕事から離れてしまうのが不安だった。
この仕事が好きで、同僚との関係も良好。私は「AYAI」で働き続けることを選んだ。
お店の横に佇む桜の木――
今はもう散ってしまったけれど、来年また美しい花を咲かせるために頑張ってると思うと、私もしっかりしなければと力をもらう。
仕事の時も、それ以外でも、綾井店長は、私に何か言ったり、何かしたりすることもなく、普通に接してくれる。それはとても有難かった。
そんな優しい綾井店長には、私への想いなど早く消して、新しい恋を見つけてほしいと切実に願う。店長みたいなハイスペックな男性には、もっとレベルの高い素敵な女性がお似合いだから。
必ず最高のパートナーが見つかると信じたい。
本当に心から思う、綾井店長には幸せになってもらいたいと――
そして……
最後は、1番言い出せずにいる涼香姉さんへの報告。
いったいどんな風に伝えればいいのか。
いや、伝えなければならないのだろうか?
龍聖君は、悩む私を見て、自分が話そうかと言ってくれた。だけれど……それは断った。
姉さんのことだから、知ればきっとすごく怒るだろう。それでも、必ず誰かから聞いてしまうのは間違いない。その時に、怒鳴り込まれて龍聖君に迷惑をかけるのだけは絶対に嫌だった。
今、話しておかなくては――
そんな思いが私の背中を押し、意を決して涼香姉さんを部屋に呼んだ。
答えはわかっていた。
案の定、激怒され、私と龍聖君は「絶対に似合わない」と、はっきり言われた。
もちろんその通りで反論の余地はない。
「どうしてあなたみたいな地味な子が鳳条グループの御曹司と結婚できるの? 有り得ないわ。何か弱みでも握ったわけ?」
目の前で強く責める姉さんの勢いは、まるで突然現れた超巨大な嵐のように激しい。
「そんな……弱みなんて。龍聖君は本当に素晴らしい人格者だよ」
「だったらどうして? 琴音と結婚するメリットは何なの? あんなイケメンなら隣に美人を置きたいと思うでしょ、普通。なのにどうして琴音なの?」