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ひかれた。

「×月×日、十字路で起こった交通事故で被害に遭った17歳女子高生の死亡が確認されました。」

セブンティーンは轢かれた。

幸色に塗りたくられた日々は突如として奪い去らそれはそれでれたのだ。運転手は45歳の会社員で、ブレーキだと思ったらアクセルを踏んでいたというよくあるパターンだった。

仕事帰りで眠気に耐えられず居眠り運転だと

『…やったあ』

それが私の遺言。

私この世界に嫌気が差してたの。

だから正直丁度いいなって。

ただ愛が欲しかった。

ママは私の話は嫌いみたいで、

勉強とか友達とかそんな話のどうでもいいって 毎晩お酒に言わされてる。私よりもそこら辺の男から貰う愛に価値を見出してた。

パパはいつの日からか帰ってこなくなった。

パパは…、優しい人だった。

あんなママに愛想を尽かすことはなく、

真面目に熱心に家族を想っていた。

パパは逃げた。

けど、それは正しかったと言いたいの私は。

愛娘を置いていった事実は残るけれど、

彼は自分を守ったのよ。

私が轢かれたのは、 パパが居なくなってから4日後のこと。 それまで死ぬ気はなかった。

死ぬ暇なんてなくて、ママをどう支えようかと必死になってたと思う。

ママはパパの前では大人しかったから。

外の男はいても、彼の前では子猫を演じていた彼女を私はどう見ればいいのか分からずに困惑した記憶がある。

いわゆる推しみたいなものだと思う。

「パパ推し同担拒否」ってね。

え、なんで自分が死んで家族紹介しちゃってるの?どういう神経してる…?

あ、これが走馬灯ってやつか。

そっかそっか…。

へぇ〜…

うん。

私の思う世界って、案外小さかった

worldじゃなくてhomeかも

セブンティーンは惹かれた。

普通の家庭が羨ましくて、

でも普通って誰の普通に基準を置いてるの?って自問自答してて。

結論私自身には手の届かないところにあると分かってしまった。

友達が話すママやパパの話はあまりにも素敵で、私の理想だった。

『うちのお母さんさ、過干渉気味なとこあってちょっと怖いんだよねぇ…監視されてるってか、信じてくれてないみたいでさ』

『昨日親父が勝手にあたしの部屋入ってきてさ、マジありえないよねー?ノックくらいしろって話だよ…ったく。』

いいな。

私の家には干渉してくるママも、部屋を訪ねてくるパパもいない。

なんでそれを怒ったり、怖がったりするのかもよく分からなかった。

これは普通の幸せじゃないのか、きっと

セブンティーンは引かれた。

『あんたの家やばくねw』

聞いてしまった。その言の葉を。

急に背中に棘が刺さる。

あれだ、ほら。指にいつの間にか刺さってる

名も知らない植物の棘みたいな。

刺さった時には気づかないのに、気づいた途端に『抜かなくちゃ』と焦り、何故か痛みを増すあの棘。そんな感じ。

そりゃ私のママとパパはやばいかもしれない

私が他の家族を羨んでいたら、そんなこと言う輩は予想通りに現れるものだ。

けど、名も無き棘は思いのほか痛かった。

もはや抜く気も失せてきたよ。

もう勝手に刺しておけと。

本当は痛いくせに、偽りの思考が巡る。

透明の、私にしか見えない血が

ポタポタと教室の床に垂れた。

綺麗しなきゃと思ったが、見えていないから

掃除する意味もそこには無かった。

誰にも見えないなら綺麗にしたってしなくたって大差ない。

私が耐えればいいだけの話で。

でも、命を散らす瞬間にその血は見えた。

鮮明な赤をコンクリートに塗った。

私の日々は幸色なんかじゃなかった。

黒く淀んで何も見えない日とその未来。

でも、私はその時ある言葉について考えた。

「黒は何にも染まらない」

それは嘘。だって黒だって乾いてしまえば、その上に色をのせられる。

黒の上にだって青空は描けるし、黄色い鳥も、緑の草木だって、お気に入りの紫のワンピースだって描けるよ。きっとね。

死んでしまった今じゃ赤のままで終わりだけど、別に後悔はしてない。

世界のズレを気にしていたのは本当のことだから。

でも、黒じゃなくて良かったとは思った。

赤で、良かった。

真っ黒に塗られていた私の日々に、最後に色彩を加えてくれたのは










パパの車でした。

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