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角名side
数秒、沈黙の時間が流れた。
「…うお、(名前)。先行ったんじゃ無かったの」
(名前)の後ろにあるトイレのドアが押され、中から出てきたチームメイトであろう男が(名前)を呼んだ。
あぁ、なんかイライラする。
今まで(名前)相手にムカついた事なんて無いのに。
「角名便所長いわ、うんこか」
トイレから出てきた奴は誰かと(名前)に聞こうと口を開けた瞬間、背後から治の声が聞こえた。
「…治」
治が俺の背後について(名前)に会釈をした。
目の前の(名前)は、それを見て少し顔を歪めたと思ったら、何も言わずに俺らの横を通り過ぎた。
「おい、どうしたんだよ!待てって(名前)!」
チームメイトが(名前)を呼ぶたびに胸に針を刺された様な感覚になった。
…あぁ、そうか。
さっきまでの意味のわからないイラつきも、不快感も、(名前)に強く当たってしまうのも全部
ヤキモチだ。
「…ははっ、俺ダサすぎ」
俺は額に両手を当てながら、その場にしゃがみ込んだ。
もう、俺と(名前)の関係は直らないとこまで亀裂が入っているのに。
さらにヒビを入れるような事を言って、それがヤキモチと言う醜い感情だったことに気づいて。
俺が兵庫に行く事を黙ってたのだって、全てヤキモチから始まった事だって。
最初から分かってたくせに。
また同じ過ちを繰り返そうとしている。
なんで、こんな今更。
どんどん関係に亀裂が入ってしまうのは、俺がヤキモチを認めないプライドのせいだ。
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