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三咲の心は、日に日に不安でいっぱいだった。智也と春菜の関係が少しずつ深まっていることに気づき、その心情はますます複雑になっていった。彼女は普段から敏感で、人の心情をすぐに感じ取るタイプだ。だからこそ、智也と春菜の間に流れる微妙な空気を放っておくことができなかった。
その日、三咲は智也に呼び出されて、公園で待ち合わせをした。智也は少し遅れて到着し、いつも通りの穏やかな笑顔を見せたが、その笑顔が三咲にはどこか遠く感じられた。
「智也、今日は何か大事な話でもあるの?」三咲は無理に笑顔を作りながらも、どこか胸の中で不安が募っていた。
智也はしばらく黙ってから、少し照れくさい様子で言った。「いや、特に話すことはないんだ。ただ、最近君と話していなかったから、少しだけ時間を作りたかっただけだよ。」
その言葉に、三咲は少し安心したが、それでも胸の奥には何とも言えない違和感が残っていた。智也は春菜と過ごす時間が増えていることを知らないのだろうか。そんなことを考えながら、三咲は無意識に彼を見つめていた。
「でも、智也…」三咲はゆっくりと口を開いた。「最近、あなたが春菜と一緒にいるところを見ると、なんだか胸が苦しくなるの。」
その言葉に、智也は驚いた顔をして彼女を見た。「どうして、そんなことを感じるんだ?」
三咲は少し躊躇ったが、胸の中の思いをそのまま吐き出すことにした。「だって、私は…智也のことが、友達以上に大切に思っているから。春菜とあなたが一緒にいると、何だか寂しく感じるの。」
智也はその言葉に黙って耳を傾けていたが、しばらくしてから、ゆっくりと話し始めた。「三咲…君は大切な友達だよ。春菜とも友達として接しているだけだ。それに、俺は君に対して特別な気持ちを持っているわけじゃないんだ。」
その言葉に、三咲の心は一瞬、安堵を感じた。しかし、同時に胸の中で何かが崩れ落ちるような感覚もあった。智也の言葉がどうしても自分の心に響かない。彼に対する自分の気持ちは、友情ではなく、それ以上のものだと気づかされていた。
三咲はそのことを認めたくなかったが、心の中ではっきりとその気持ちが固まっていた。智也をただの友達として見ているわけではない。彼に対する想いが、どんどん深くなっていることを、どうしても否定できなかった。
その瞬間、三咲は胸の中で何かが爆発するような感覚に襲われた。彼の言葉が痛かった。それでも、彼に自分の気持ちを伝えなければ、この胸の苦しみは永遠に続くと思った。
「智也…」三咲はその場で足を踏みしめるように言った。「もう我慢できない。私、あなたのことが好きなんだ。」その言葉は、これまでの自分を全て曝け出すような気持ちだった。
智也は一瞬、目を見開いて三咲を見つめた。その瞬間、三咲は自分が何をしているのか、わからなくなった。しかし、彼の顔に浮かんだ驚きや戸惑いの表情を見て、三咲は自分の気持ちを強く押し出すしかなかった。
そして、気づけば、三咲は智也に手を伸ばしていた。彼が何も言わないうちに、彼女はそのまま智也の唇にキスをした。
そのキスは、思っていた以上に優しく、そして切なかった。智也は驚いた表情を浮かべたが、すぐにその感触に応じるように彼女を抱きしめた。
キスが終わった後、三咲は恥ずかしさで顔を赤らめながら、何も言わずにその場を離れた。智也はその背中を見つめながら、何か言おうとしたが、言葉が見つからなかった。
その後、三咲は自分の気持ちがどうなるのか、まだ何も分からなかった。ただ一つだけ、智也の温もりを感じながら過ごす時間が、これからどう変わっていくのかに胸を高鳴らせていた。