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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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「凪…」

微かに息がある凪の体を玲央が静かにゆっくりと抱きしめ守るように後頭部に手を置いて首に顔を埋めた

言葉も発さずに涙をこらえるような声が僅かだが聞こえてくる

草原の上、空は今満月に近い形をした月と風力が強くなっていく中森の音と動物の声が一斉に騒がしくなる

「…やつを殺せ」

「え?」

「凪を殺したクソ野郎を殺しに行くぞ、簡単には死なせてやらねぇ」

瞳の奥にはドロドロとしたどす黒い何かが漂っていた

それが何なのか分からない歳ではないが 、ひとつわかるのは強い執着心が玲央には芽生えていたことだ



ドカンっ!!

建物の中から煙と赤い炎に包まれる姿を見るのに数秒もかからなかった

仲間を森の端に置いてこようとした時に建物内が爆発した

まるであの時のようだった

俺が実験を成功した同時に爆発をしたのと似ていた

バンバンッ

小さい爆弾がどんどん建物を壊していき街中を見ると騒がしくなってきていた

何を企んでいる?わざとなのか?それをせざるおえなかったのか?意味がわからないことを行う奴らに意図が分からなかった

「No.4141!こいつがどうなってもいいのか?!」

首を捕まれ施設長を睨みつける蜂楽が目に入った

「蜂楽!」

「殺されたくなかったら、俺に従え。さもなくば此奴をあの世に送る」

かチャリと蜂楽の頭にぐりぐりと押さえつけ殺すことに躊躇は見えなかった

建物は壊れていくばかりで國神も重症だ

今すぐにでも薬を飲ませてやりたいが今ここで動けば奴は蜂楽を打ってしまう

蜂楽も重症とまでは行かないがかなりの出血をしているはずだ

そんな状態で抵抗をする力なんて残ってない

誰も動けない状態が続いていく中建物は壊れだしていく

奴の意図が分からない

何を考えているのか

「…何をして欲しい」

「口の利き方を忘れたのか?No.4141、まぁいい。そんなことは今どうでもいいからな。」

無駄事を話すほど余裕のある態度が今の状態では不気味に感じ怒りさえ湧いてこない

「ただ一つだけだ、お前を殺す」

「…いいんだ?お前の大事な処理係が無くなるのに、俺が大好きなくせに」

「嗚呼、愛しているさ。殺したいほどにな」

「へぇ、ブタに好かれる趣味は持ってないけど」

口では余裕ぶっこいでいるが内心どうすればいいのか混乱状態だった

「でも、お前の防御範囲が狭いのは此方として有難いけどな」

金髪に向かって青いグラデーションの髪型をしている好青年、カイザーが奴に向かって銃を放った

バンッ

「ちっ…」

蜂楽を離し流石に避けたが頬を掠った

「蜂楽!大丈夫か?」

「だいじょーぶ、でも、やばいね…」

俺たちの周りには研究員、政府の援護、その他諸々…が集まり銃を向けていた

ここに残っているのは俺含め蜂楽、國神、玲央、カイザー、ネス、計6人だ

死亡者含め9人対数十人の研究員

負けるなんて思ってない

多分俺たちの頭の中は一緒だろう

「殺るぞ」

『もちろん 』

一斉に駆け出し足に向かって右足を振りかざし銃を向け放った

他のみんなはどうなっているのか分からないがまず見る余裕なんてないんだが

腕を掴んでこちら側に引っ張り足で銃を向けている敵側に蹴った

頬に掠り銃の角で殴られたりと散々だったが結構な数が減ったはずだ

周りを見渡した時みんな無事だった

「潔!!」

ドカンっ

「…は」

後ろを向いた時ぶしゃっと何かが顔にかかる音がした

地面には心臓を打たれた國神が倒れていた




『なぁ、潔』

『んぉ?どうした、國神』

『これ』

青紫の色をした四角い箱は手に収まるか収まらないかぐらいのサイズでそれを俺の腰あたりに当ててきた

『…チョコ?』

『嗚呼、この辺りの駅前に新しくスイーツ屋が出来てたんだ。食べさせたかったってのとお詫び』

『まじ?!やったー!…ん?でもお詫びなんて俺なんかしたっけ』

これといっていいほどお詫びなものは無い

強いて言えば國神のご飯を作ってみて地獄のような飯を食わせてやった事ぐらいだ

『遊び、連れてってくれたろ』

『遊び…』

はて…?そんなことはあっただろうか

遊び…遊びのような遊びはしていない気がするのだが

それに今まで散々な目に合わされてきたせいで麻痺しているんだ

『この前の戦い、覚えてないか?』

『…え、もしかしてあのカス野郎の話?』

『嗚呼、あの時遊んでくれたろ』

果たしてあれは遊びに入るのか

俺の記憶には銃を散々使い國神と走り逃げたことは覚えている

『走り出した時は驚いたが…楽しかった』

あっていた

まさかのそれだったとは

楽しかったってなんだ

俺は死に物狂いで逃げたんだぞ

お前が何としてでも息の根止めようとしてくるもんで人数には叶わない相手にだぞ?

それに戦闘能力プラマイゼロの奴と筋肉ムキムキ君だぞ?

そりゃ逃げるって

『た、楽しかったなら…いいよ』

あまりにも幸せそうに話す顔は今まで友との繋がりは持てなかったのか

難しかったのかもしれない

本人には聞いてないが人殺しをする環境にいたとするならば人間関係なんて遮られていたはずだ

遊びなんてないし学校帰りの娯楽なんて知らないのだろうな

そう考えるとどう感情にすればいいのか分からなかった

可哀想と思った方がいいのかもしれない

けれど相手にとってはそれは普通の事で初めて娯楽というものを得たベイビーなんだから

可哀想と思うのは違うのかもしれない

けれど良かったねと言うとも違う

お前が普通と思っていることはふつうではなく異常なんだ

それもお前は普通だと思い俺らのことを異常者だと思うのかもしれない

それを否定していいのか躊躇ってしまうのだ

どの方向から見てもどの言葉も正解では無い

彼自身の捉え方の問題になる

まずこのように正解を見つけること自体が間違ってると思うが

『なぁ、國神』

『ん?』

『なんで、ここで人を…殺してるんだ?』

咄嗟に聞いてしまい後悔した

もっとオブラートに包めばよかったと

でも聞いてよかったかもしれない

だって、その時の國神の顔は

『人を…救いたいんだ』

ヒーローのようなものだったから




「國神ッ!!」





あまりにも美しすぎたから

一般人は裏社会に足を踏み入れてはダメ・絶対!

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