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俺は大切な人を探している。
前世で出会った、俺の親友。
他愛のない会話も、君と見た海も俺はしっかり覚えているよ。
「会えるわけ…ないよね、」
君と出逢った海に足を運んだとき、
波の音が君の声を運んで俺の耳に届くんだ。
もう聞けるはずもない君の声も、俺は覚えているよ。
「まだ…来ないか…」
俺は海の渚に灯る赤色の光を思い出しながら浜辺を歩く。
ぽつりと独り言を零しながら波の音に耳を澄ませ、君のことを想う。
この思いは君に届くだろうか。
泡沫のように消えてしまうのか。
不安で仕方がなかった。
いつものように渚に立ち尽くしながら夜空を見ていると、
目の端に赤い何かが映った気がした。
もしかしたら。と思い其方に目を向ける。
「……っ、!」
前世の記憶と同じ、赤色の瞳、俺より少し小さい背丈。
間違いなく君だ。
俺はまた、君に向かって消えそうな笑顔を見せる。
「君も一人?」
「はい…そうです、」
俺が聞きたかった声。やっと君に会えた。
「君、名前は?」
「りうらです。お兄さんは?」
「おれはないこっ」
前世と変わらない対応、態度。
君が俺を知らないことはもう分かっている。
でも、俺は違う。君をもう知っている。
俺との時間が特別で、太陽みたいに明るい笑顔で話したいと
願っていることも、俺が辛いとき傍にいてくれるところも。
また君を知れることが少し嬉しかった。
「ないこさんは、どうして海に?」
「大切な人を探していたんだよ」
「大切な人…」
りうらのことだよ、なんて言えない。
困らせてしまうから。
「りうらも大切な人いるよ」
君は嬉しそうに微笑む。
「そっか、大切な人がいるっていいよね」
俺は優しく微笑む。
力尽きた(