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#溺愛
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黄金の光が弾け、三人の身体が乱暴に空間から放り出された。周囲は静まり返った深い森。大気がキーンと耳鳴りのような音を立てている。
「……ルート遮断か」
アレクが鋭い視線を前方の巨木に向け、忌々しそうに吐き捨てた。
「障害物があると、途中で止まっちゃうんだよね……迂回する? それとも──」
三人の目の前に立ちはだかるのは、天を突くほどに巨大な古木だった。その根は血管のように地面を這っている。
「……迂回などしている暇はない。焼き払う」
アレクの手のひらに、破壊の炎が灯る。闇属性の魔力が周囲の草花を瞬時に枯らせ、森に死の気配が広がった。
「……邪魔ですっ!どいていただけます?」
アレクを遮るように、フローラが一歩前に進み出た。
フローラが巨木に向けて手をかざす。 その瞬間、彼女の背後に、巨大な精霊魔法の緑のオーラが重なった。
――ズズズズズズッ!!
大地が悲鳴を上げ、巨木がまるで意志を持つ生き物のように動き始めた。
「……お姉さま。今、助けに向かいますねっ」
巨木によって作られた「道」を頼りに、再びレオンが移動スクロールに行先を記す。
三人の姿は再び光の奔流に飲み込まれていった。
***
次に3人が放り出されたのは、ウィステリア伯爵家の正門前だった。
アレクが呼び鈴を乱暴に鳴らすと、顔を青ざめさせた執事がでてきた。アレクとレオンの顔を見るなり、彼はガチガチと歯を鳴らした。
「こ、これはこれは……レオン王子殿下に、公爵様……!奥様とお嬢様方は今、外出しておりまして……」
「バイオレッタはどこだ?」
「バイオレッタはどこにいるの?」
アレクとレオンの問いに、執事は「い、言えません」と口を閉ざした。
その瞬間。 ゴゴゴゴゴ……と、物理的な質量を持った殺気が執事を襲う。
アレクが黒いオーラを纏い、フローラが茨の蔓で周囲を威嚇していた。
「王族の質問に答えないってことは、この場で王族侮辱罪を適用して、一族諸共処刑されてもいいってことかな?」
レオンの優雅な微笑が、何よりの脅しとなった。
執事はついに、震えながら口を割った。
「お、奥様とともに、お嬢様は結婚式に参列されております! 本日は……バイオレッタ様の、ご成婚の儀なのです!」
「……結婚だと?」
アレクの瞳から、光が消えた。
「相手は誰だ? ……そいつの首を、今すぐ獲りに行く」
***
……ぼんやりと、意識が浮上する。
(ここは……どこかしら?)
背中に走る痛みで目が覚めた。横になっていたのは、安っぽいベルベットのソファ。
ふと自分の姿を見て、私は絶句した。
(え、白いドレス? これ……ウエディングドレスじゃないの。なんで私がこんな格好?……)
ガチャリと扉が開き、けばけばしい化粧で、宝石をじゃらじゃらと身につけた継母が、見知らぬ男を連れて現れた。
「あら。目が覚めたのね、バイオレッタ。……紹介するわ、あなたの夫よ」
ガチャリと扉が開き、けばけばしい化粧に宝石をじゃらつかせた継母が、見知らぬ男を引き連れて現れた。
継母の隣に立つのは、脂ぎった顔にいやらしい笑みを浮かべた中年男だった。
「こちらはギルダス・ゴールドワース卿。莫大な寄付で男爵位を買ったばかりの商人よ。伯爵家の借金は全部、彼が肩代わりしてくださるの。ありがたく思いなさい?」
(要するに――継母〈ババア〉の浪費でできた借金のカタとして、私はこの成金ブタおやじに売られたってわけね。ふざけんじゃないわよ!……というか、私の婚約者はアレクのはずなんだけど!?)
ギルダスが、舐めるような視線で私の身体を這わせる。
(きっも……! 生理的に無理すぎるわ)
身体を動かそうとしたが、鉛のように重い。馬車で吸わされたのは、自由を奪う魔法薬だったのだろう。
私は継母とその侍女たちに、抵抗する間もなくずるずると引きずられ、司祭の待つ礼拝堂へと連行された。
***
「汝、この者を命のある限り、常に愛し、尊び、慰め、助けることを誓いますか?」
司祭の言葉が、天井の高い礼拝堂に響く。
(完全には動けないけど……量が足りなかったのか、それとも薬が代謝されたのかしら?)
身体の自由は、ある程度まで戻ってきていた。
私はわざと「ふらつくフリ」をして、会場を移動する際に机に激しくぶつかった。その衝撃で落ちた果物ナイフを、長袖の下に滑り込ませていた。
(さあ……反撃の開始よ)
継母たちが少し離れ、新郎のブタと司祭、私だけが祭壇に残された瞬間。
「誓うわけないでしょ!!」
私は叫ぶとともに、新郎の股間に渾身の力で蹴りを叩き込んだ。
「ぶほおっ!?」
悶絶し、うずくまるブタ親父。私はその隙を見逃さず、袖からナイフを抜き、そのたるんだ首筋に突き立てた。
「死にたくなけりゃ、道を空けなさい! でないと、このブタの首を掻っ切って、血染めのバージンロードにしてやるわよ!!」
静まり返る会場。招待客の悲鳴。 私はギルダスの耳元で、冷たく囁いた。
「いい? 少しでも逃げようとしたら、その喉笛に風穴を開けてあげるわよ。……分かったら、さっさとあんたの馬車まで案内しなさい」
「ひ、ひぃ……わ、分かりました……!」
私は涙目のブタを盾にして、会場の外へと逃げ出した。だが――。
「そこまでよ、バイオレッタ!」
式場の外に出た瞬間、私は絶望した。そこには、継母が手下の兵士を引き連れて待ち構えていたのだ。
(くっ……ギリギリで捕まるなんて……!)
私は再び捕らえられ、無理やり祭壇へと連れ戻された。
その時──
ドォォォォォン!!
教会の重厚な大扉が、粉々に砕け散った。