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『すまない、風邪を引いてしまったので、今日は学校も練習も休む』
『了解。帰りに寄るからゆっくり休んどけよ』
このやりとりをしたのは朝礼が始まる前だった。集中しなかっ……できなかった授業をすべて終え、途中のコンビニで買い出しをする。
(ゼリーと、冷えピタと…あと一応自分用のマスクでも買っておくか)
万が一風邪をもらったら全体練習の回数が減ってしまう。それはなんとか避けたかった。そうこうしているうちに、冬弥の家についた。鍵は開けてくれていると言うので、(一応)ピンポンを押して中に入る。どうやら両親は出張でいないらしく、この場にいるのは彰人と冬弥だけ、ということになる。部屋の前に立ち、ノックをする。
「冬弥、開けるぞ」
「あぁ、っ…」
「だいぶしんどそうだな…。飯は食ったか?」
「食欲がなくて…っ、ぅッ」
「ゆっくりでいいからな。ゼリーは食えるか?」
頷いたのを確認し、ゼリー蓋を開けた。スプーンは会計したときにくれたので、それを使う。
「冬弥、口開けろ」
さすがに食べるのは大変だろうと思い、ゼリーを乗せたスプーンを冬弥に向ける。所謂あーんってやつだ。
「えっ」
「え?」
「…自分で食べられるほどの力はあるんだが…」
(あれ?オレすげぇ恥ずかしいことしたのでは?)
「………………………………………………………」
「あ、いや、嫌がってる訳じゃないんだ!少し驚いただけで…、…いただきます」
「……………」
「美味しいぞ、!あきと!」
「………………それならよかった」
美味しいという言葉が聞けたので今のはなしとしよう。ゆっくりだが、ちゃんと全部食べきり、冷えピタを貼った。
「じゃあそろそろ行くな。無理すんなよ」
とドアに向かうが、冬弥の腕によってそれは拒まれた。
「あきと……その、寂しいんだ…もう少し、側にいてくれないだろうか……」
「________ぉぅ」
そう言われては側にいるしかない。確かに親もいないから寂しいのは当然だ。いや、でも、今のは破壊力が高すぎた。
(キスしてぇ……)
危うく襲いそうになったことは墓場まで持っていくことにしよう。