「ねぇねぇ美海ちゃん、今日は何しよっか?」
「え〜?何でも良いよ?」
私はいつもこんなふうに、美海ちゃんと話している。けれど、”普通の友達”ではない。〈イマジナリーフレンド〉なのだ。
イマジナリーフレンドとは、自分が作った、想像上の友達のことだ。自分の想像の中での友達なので、他の人には見えないそうだ。私だけの存在なのだ。でも、何が駄目なのだろう。
───八年前、5歳の時、私は
「私にはお友達が出来たんだよ!」
と母に話した。私は保育園とかも通っていなかったし、人見知りな性格だった。母は私の性格のことを良く理解していた。なので、
「お友達が出来たの!?すごいじゃない!」
とびっくりしつつも、大袈裟に喜んでくれた。私は、友達が出来たのは嬉しかったけど、母が喜んでくれたのも嬉しかった。
すると母は、
「お名前は?紹介してくれる?」
と言った。
「あのね、『美海ちゃん』っていうお友達だよ!」
と答えた。
「みみちゃん?いつからお友達になったの?」
「う〜ん⋯⋯いつ、だろう?」
と私が曖昧な返事をしていると、母は心配になったのか、「どこでお友達になったの?」「どんな子なの?」と次々に質問してきた。
「えっと、いつの間にかお友達になってた!今私の隣にいるよ?」
と私は答えながら指を指した。でも。
「何、言ってるの?誰もいないじゃない」
「いるよ?ほら」
私はまた自分の隣に指を指した。
「⋯⋯」
母は黙り込みながら、スマホを取り出し、数分ほど操作し始め、いくつか質問をし始めた。
「隣にいるお友達は、私には見えないの。貴方には見えるの?」
「うん!見えるよ!美海ちゃん!」
「そっか、⋯なら、その子──美海ちゃんは、きっと”普通の友達”じゃなくて、”イマジナリーフレンド”っていうんだと思う。ほら」
母はそう言いながら、スマホの画面を見せた。
《イマジナリーフレンド》
イマジナリーフレンドとは、自分自身が作った、想像上の友達のこと。自分の想像の中での友達なので、他の人には見えない。イマジナリーフレンドは、主に──────。
「イマジナリーフレンド⋯?」
不思議な気持ちだった。私の身近にはお母さんと友達の美海ちゃんがいた。親と友達。普通だと思っていた。八年前の事でも、今でもずっと、鮮明に覚えている。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!