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夢であると言って…
咲希said
朝起きて何時かを確認するためにテレビを見ようとリビングに行くとお兄ちゃんの代わりにほなちゃんがいた。
ほなちゃんは、アタシに気づいてこっちを見た。
「おはよう咲希ちゃん
朝ごはんは、もう少しで出来るから待っててね」
そう言ってほなちゃんは、アタシの頭を撫でた。
お兄ちゃんには、よく撫でてもらってるけどほなちゃんに撫でられると少し恥ずかしさがあった。
テレビを見ようとリモコンが置いてあるテーブルに向かうとテーブルには紙が置いてあった。
見てみるとそれは、お兄ちゃんからの置き手紙みたいだった。
『少し買い物に出掛けてくる。
お前達にキッチンは、まだ危ないから穂波を呼んでおいたぞ!
俺が帰ってくるまで良い子で待っていてくれ!』
何を買いに行っているのかは気になるけどそれは帰ってきてから聞こうと思った。
そしてアタシは、手紙を持って部屋に戻った。
もうすぐ朝ごはん出来るってほなちゃんが言ってたし、とーやくんの事起こさなくちゃ!
それにこの手紙もとーやくんに見せなくちゃ!
少し小走りで部屋に向かう。
部屋のドアを開けると眠そうに目を擦りながらベッドに座っているとーやくんがいた。
「おはようとーやくん!
もうすぐ朝ごはんができるって
あと、はいこれ」
アタシは、とーやくんにさっきの手紙を渡した。
とーやくんは、手紙を読んですぐに理解したみたいでアタシにお礼を言って部屋を出た。
アタシもとーやくんの後を着いて行った。
部屋から出ると美味しそうな匂いが広がっていた。
「ほなちゃん、何作ってるの?」
ほなちゃんの近くに駆け寄ってそう聞くとほなちゃんは微笑んだ。
「今日の朝ごはんは、フレンチトーストにしてみたんだ。
あとは盛り付けるだけだから2人ともテーブルで待っててくれる?」
フレンチトーストと聞いてアタシは、すごく嬉しくなった。
早く食べたくてとーやくんの手を引いてテーブルに向かった。
「楽しみですね」
「うん!」
少し待っているとほなちゃんがお皿を両手に持ってやって来た。
アタシととーやくんの前に置かれたお皿には、お店みたいにキレイに盛り付けされたフレンチトーストがあった。
「「いただきます!」」
食べてみると柔らかくてふんわり甘いパンの味が口いっぱいに広がった。
ベリージャムとの相性が抜群ですごく美味しかった。
とーやくんのは、少し甘さ控えに作ってるみたいでアタシのフレンチトーストよりも色鮮やかではないけどすごく美味しそうだった。
「ほなちゃん、すっごく美味しいよ!」
「はい。とても美味しいです。」
そう言うとほなちゃんは、少し照れていた。
「そう言ってもらえて嬉しいな」
すごく嬉しそうに笑ってくれてアタシも嬉しくなった。
それにしても本当に美味しい。
後でお兄ちゃんに自慢しようとも思うくらいだった。
朝ごはんを食べ終わってアタシ達は、服を着替えた。
特に出かける用事もなかったからラフな格好で髪も軽く結んで終わりにした。
とーやくんもきっとラフな格好を選んでいるんだろうけどアタシからしたらすごくオシャレだと思った。
もう少しでお昼になる時間になった。
少し遅いお兄ちゃんの事は、心配だった。
けど何かあったらきっとほなちゃんのスマホに連絡が来るはずだから大丈夫だと思った。
しばらくテレビを見ていると玄関の方から鍵が開く音が聞こえた。
「ただいま!」
お兄ちゃんの声だった。
アタシととーやくんは、急いで玄関に向かった。
そこには、大きな袋をいくつか持ったお兄ちゃんがいた。
「それにしても少し買いすぎてしまったな
お前達に着せてやりたい服や食べさせたいものを沢山見つけてしまって…
いつの間にか時間がこんなにも経ってしまっていたんだ」
お兄ちゃんが買い物中もアタシ達の事を考えてくれていたと知って嬉しくなった。
とーやくんも同じ気持ちだったのか嬉しそうに笑っていた。
お兄ちゃんは、服をすぐ見せたいからとリビングで待っていて欲しいとアタシ達に言った。
アタシは、ルンルン気分でリビングに戻った。
冬弥said
司先輩が朝から昼近くまで帰ってこなくて心配をしている時玄関のドアが開く音がした。
咲希さんと共に行ってみると大荷物を抱えた司先輩が立っていた。
司先輩は、俺たちのために服や食べ物を買っていたら遅くなったと話してくれた。
そして服を俺たちにすぐ見せたいらしくリビングで待機するよう言われた。
俺と咲希さんは、それに従ってリビングへと戻った。
リビングのソファーに俺たちが座ったタイミングで急に家のチャイムが鳴った。
俺は、気になって玄関の方へ向かった。
玄関へ続くドアの隙間から少し顔を出して覗いてみると、そこには知らない女性が立っていた。
その女性の事は司先輩も知らないらしく誰か尋ねていた。
すると女性は当たりをキョロキョロし始めた。
そして下の靴たちを見て動きを止めた。
「勘違いなんじゃないかって思ってた…
思いたかったのに…」
そう呟いて司先輩の方をまっすぐ見つめた。
その司先輩を見つめる目には、涙があった。
司先輩は、それを心配して女性に近づくと女性は、司先輩の方へ思いっきり体を前に出した。
そして女性がゆっくり離れると司先輩は、尻餅をついた。
その瞬間俺はしっかり見た。
司先輩で隠れていた女性の手には、赤い液体のついた包丁が握られている事ところを
「つか…」
すぐに両手で口を押さえた。
叫んでしまえば相手が興奮してさらに酷くなるかもしれないと思ったからだ。
そう思い叫びかけていた声を喉の奥にしまった。
「ずっと信じてたのに…
子供2人と楽しそうにお買い物なんかして…
そんな事どこにも公表してなかったじゃない!」
感情的になり叫ぶ女性の声が家に響く。
咲希さんがこちらに近づいて来た。
こんな所絶対に見させてはいけないと俺は思い俺は咲希さんを部屋で隠れているよう言った。
咲希さんは、困惑した表情で俺に部屋へ追いやられた。
その後すぐに望月さんに状況を説明した。
俺は、パニックになっていて順番がバラバラになっていたり言葉を詰まらせてしまった。
それでも望月さんは、分かってくれてすぐに洗面所に向かいタオルを持って玄関へと走った。
「冬弥くん私のスマホがテーブルの上にあるから警察に 通報して!」
俺は、望月さんに言われた通りすぐさま警察に通報をした。
玄関に向かいながら警察が出るのを待った。
すぐに警察とは繋がり俺は、状況をなるべく詳細に伝えた。
「お父さんが知らない女の人に刺されて今は、ベビーシッターの方が傷口にタオルを押し付けて止血をしようとしています。
女性はもういません。」
警察の方はすぐに向かうと言った。
向かっている間、司先輩に何かあったらすぐ伝えられるように通話は繋げたままにするよう言われた。
司先輩の顔色は、どんどん悪くなっていく。
俺は、これを現実だと受け止めたくなかった。
嘘だと…夢だと誰かに言ってもらいたかった。
しかしどんなにそう思ってもこれは現実のままだった。
望月さんは、そんな俺を見て携帯を床に置いてスピーカーにするよう言った。
「咲希ちゃんの事、任せても良いかな?」
「…はい。」
何もできない自分に腹が立った。
しかし腹が立ってもどんなに自分を戒めても現実は変わらない。
俺は、望月さんに言われた通り咲希さんのいる部屋に向かった。