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こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります
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水視点→桃視点
「癒しの香り」
「あれ? ないこ来た?」
事務所の一室に入ってくるなり、首を傾げながらいふくんが呟いた。
その声に、そこにいた僕だけでなく他のメンバーも顔を上げる。
「え? ないちゃん? まだ来てないよ」
「そうやんな…今日は昼から来るって言うとったし」
言いながらもいふくんは首を捻ったままで、何か釈然としないらしい。
時計の針はまだ正午も指していない。
打ち合わせと称して雑談をしていただけの僕らは、思わず互いの顔を見合わせた。
「なんかあった? ないちゃんに用事?」
尋ねた初兎ちゃんの隣の椅子を引きながら、いふくんは「…いや」と小さく頭を横に振った。
「今日は昼からって言うとったのに、ないこの匂いするからもう来たんかと思って」
「…は?」
何気なくさらりと告げられた言葉に、思わず僕たちの声が重なる。
「…確かないくん、昨日この部屋で1日作業してたけど」
「昨日のないちゃんの匂い嗅ぎ分けてるってこと!?こわ!!!!」
「まろ…それはもう末期やで…」
あにきにまで言われ放題で、何気ない言葉を呟いただけのつもりだっただろういふくんは思わずと言った様子で閉口した。
反駁しようにも言葉が出てこないのか、口をぱくぱくさせただけでそのまま諦めたように閉ざす。
だって、ないちゃんの匂いがするなんて言われても全く分からないのは僕だけじゃないだろう。
定期的に換気はされているし、空気がこもるような部屋でもない。
昨日誰がいたかなんて匂いで感知できるはずもない。
自分の発言を失言と思ったのか、気まずさを禁じ得なかったらしくいふくんはそのまま再び立ち上がり部屋を出て行ってしまう。
その後ろ姿を見送って、ふとひらめいた。
「そうだ」と弾んだ声を上げると、他3人の目がこちらを振り返った。
それからないちゃんが出勤してきたのは、1時間以上は経っていた頃だろう。
「おつかれー」と少し気怠そうにドアが引き開かれた。
どうやらないちゃんは今日もここの部屋で引きこも…いや作業に集中するらしい。
目の前のPCで、今日のメンバー全員のスケジュール管理表を開く。
…ふむふむ、いふくんはこの後会議室でスタッフさんと打ち合わせか。
その後は…1時間後くらいに別室に移動してまた別のスタッフさんとの予定が組まれている。
「ないちゃんないちゃん」
さっき閃いたことを実行するべく、僕は椅子に座ったないちゃんの方へ歩み寄った。
にやにやとした笑みを浮かべていたせいか、少しだけ警戒心を持ったような目が「…なに」と低い声で尋ね返してくる。
「ないちゃんさ、お気に入りの香水持ち歩いたりとかしてるでしょ? ちょっと貸してほしいなーなんて」
「えー? 何にするん」
「な・い・しょ」
くふふと笑みを漏らした僕に、ないちゃんは「…まぁいいけど」なんて言いながら持っていた鞄を探る。
ポーチを開き、小さなアトマイザーを取り出した。
受け取ったその蓋を、きゅぽんと音を立てて開ける。
それから自分の手首に一吹きし、首の辺りに擦るようにしてつけた。
他メンバーの元へ戻り、「はい手首出して」と促す。
前に差し出されたそれに順番に香水を一吹き。
あにきに至っては面倒くだがったのか手首を出してもくれなかったから、頭の上から吹きかけてやった。
「よし、移動しよう! 1時間後にいふくんが会議する予定の部屋に!」
1時間くらいかけて4人でこもってれば、ないちゃんの香水の匂いも充満するかもしれない。
大好きなないちゃんの香りが漂う部屋にないちゃんはいない。
それでもいふくんが嗅ぎ分けられるのか楽しみだ。
弾んだ足取りで廊下に出た僕は、初兎ちゃんりうちゃんと一緒にあにきを無理やり引っ張りながら、首を傾げるないちゃんはそのままにして目的の部屋へと移動した。
「…あれ、何しとるん?」
いふくんがその部屋に移動してきたのは、1時間経つよりも少し前だった。
仕事ではきっちり時間厳守のいふくんらしい。
まだ誰もいないだろうと思っていた部屋に僕たちがいたことに目を丸くしている。
「べっつにー」
「ここ次打ち合わせで使うんやけど」
「はいはい、すぐ退きますよー」
言いながらりうちゃんたちと目配せして立ち上がった。
さぁいふくん、どう出る?
さっきみたいに「あれ、ないこ来た?」なんて言ってくれたら僕の狙い通りだ。
「残念でしたーないちゃんはここにいませんー」なんて言って「どっきり大成功」のボードを掲げたいくらい。
そう思ったけれど、部屋に入ってきたいふくんは何も言わないまま手近の椅子を引いた。
荷物をテーブルに置いて座ると、手元のスマホに視線を落とし始める。
…あれ? 「ないこ来た?」は? 予想している言葉が降ってこない。
「ほとけ」
いふくんと入れ違いに部屋を出て行こうとしていた僕の背に、ようやく声がかかった。
きたきたきた!!!
目を輝かせて振り返った僕に、いふくんが言葉を継ぐ。
「なんかお前ら揃って新しい香水つけた? つけすぎちゃう? 臭いんやけど」
そんな予想外の答えが返ってきて、僕は「はぁ!?」とひときわ大きな声を上げた。
その後ろで初兎ちゃんとりうちゃんは吹き出しそうになるのを必死でこらえ、あにきは遠慮なくげらげらと笑い出した。
「いふくんってつまんないほんとに!!」
ぷりぷりと頬を膨らませて元の部屋に戻った僕の剣幕に、まだその部屋に残って仕事をしていたないちゃんは「…なに…どしたん」と尋ねてきた。
…尋ねてはくれているけれど、少し目が呆れているように見えるから「どうせろくでもないことだろ」くらいには思っているに違いない。
まだ笑い続けているあにきの声をBGMに、一連の流れを説明する。
聞き終えたないちゃんは、心底辟易したように眉と唇を歪めた。
「…きっしょ」
「そうだよねきしょいよねいふくんて! ないちゃんの昨日の匂い嗅ぎ分けるだけじゃなくて、同じ香水使った僕らに反応しないんだよ!?」
「いやそのいたずら思いつくお前らもきしょいわ」
げんなりした声のないちゃんに、あにきは「俺は付き合わされただけや」とぶつぶつ口の中で抗議を転がしていた。
まろに予定されていたスタッフとの打ち合わせは思ったより長くかかったらしい。
「おつかれー」と俺のいる部屋に入って来た頃には、他メンバーはもう帰っていった後だった。
「あれ、みんなは?」
「もう帰ったよ。あにきと初兎はジム行って筋トレするらしいし、天才組は今日ペア配信あるし」
「ほーん」
それを聞いたまろは、小さく頷きながらまっすぐこちらに歩み寄ってきた。
俺の座る椅子のすぐ後ろに立ち、そのまま少し身を屈めるようにしてハグしてくる。
「はー疲れた」なんて言っている辺り、今日は癒しを求める甘えモードに入っているようだ。
俺の首の後ろ辺りに額をこつんと押し付け、「ないこの匂いが一番癒される」なんてさらりと宣う。
…それで思い出した、ばかなあいつらの昼間のいたずらを。失敗に終わったそれをまろに暴露してやると、あいつは心底嫌そうな声で「はぁ?」とため息を漏らした。
「…きっしょ。なんなんそれ、いたずら通りこしてきもいわ」
「言っとくけど、元々きしょいのはお前だからな。何だよ俺の匂い嗅ぎ分けるって」
しかも話を総合すると、まろが俺の匂いとして認識しているのは香水のことでもないらしい。
じゃあお前は何をもって俺がいると勘違いしたんだよ。
フェロモン的なそういう話?
いやそれ以前に俺ってそんな匂う?
多少不安になり服に鼻を寄せて「すん」と吸ってみるけれど、自分では分かるわけもない。
「世界一好き、この匂い」
首元で大きく息を吸われ、ぞわりと全身の毛が総毛立つような感覚が走る。
「ばかまろ…! 俺今日本気で仕事しないとやばいんだって…!」
「いいよないこはお仕事しとって。俺も勝手に癒されるから」
言うや否や、まろの大きな手がニットの裾からずぼりと理もなく差し込まれる。
ひやりとした指先と掌の感覚に「ひゃ…!」と妙な声が上がると同時に、後ろでまろが笑みをこぼすのが空気で分かった。
そしてそのまま、あいつはまた大きく息を吸う。
まるで俺の匂いを肺のいっぱいに充満させるかのように。
コメント
4件
朝の投稿に驚いております…可愛いが詰まってて悶えております😖😖💘 桃さんの香水の匂いではなく自身の匂いが世界一好きだなんて…他メンさん達との絡みも見ていて終始笑顔でした✨ あおば様の作品はどの小説も面白くて魅力的なのがずっと尊敬なんですඉ_ඉ FAで描いてみたいお話が多くて悩むばかりですっ·͜· ❤︎ 日々あおば様の小説で幸せを貰ってます🫶🏻︎💕︎︎
初コメ失礼します! 朝からこんなに悶えまくりの作品を投稿していただきありがとうございます✨️💕💕 別サイトのほうでも、フォローさせていただいているのですが、どちらのサイトで読んでも飽きることなく、気づけば毎日毎日あおばさまの作品を読んでおります🤭 桃さんの匂いに気づく青さんからいたずらを思いつく水さんたちにらしさを感じつつ、そのいたずらに引っかからない青さん✨️✨️ 画面の奥で悶絶してしまいました。 これからもあおばさまの作品を楽しみにしています!💖💖