テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

異能探偵局

一覧ページ

「異能探偵局」のメインビジュアル

異能探偵局

28 - 間話 鋼鉄の戦士 / 八百万昴

♥

47

2024年05月12日

シェアするシェアする
報告する

 俺は、異能発現後すぐに、”神童” と呼ばれた。

どこからでも自由に、それも大きさも自在に、鋼鉄を放出させることが出来るなんて凄いですよ! お宅のお孫さん、将来が楽しみですね!」

「はは、そんなことはない。此奴の姉がまたヤンチャでな。真似をして育ってしまったら困るところじゃ」

 そして、姉は鋼鉄の家では笑い者にされていた。

 しかし、姉さんは強かった。

 なのに、家訓とは違う異能の使い方をしているからと言う理由だけで、親族からは忌み嫌われていた。

 ” 鋼鉄の真髄は防衛にあり “

 それが、攻撃主体の姉さんの異能には合わなかった。

「なんだ? また修行サボって来たのか? 昴!」

「だって……姉さんとの実践訓練の方が絶対強くなる。大人たちは昔の人を敬いすぎなんだ……」

「仕方ねえさ。八百万家が国家直属の護衛騎士にまで力を付けられたのは、鋼鉄が誇る防御の賜物だからな。防御の異能力が落ちれば、そりゃ不安にもなるさ」

 こうやって笑う、姉さんの方が、器も、何もかもが強いんだと、幼いながらに感じていた。

「おい、昴! 型が乱れておるぞ! また神子と勝手な鍛錬でもしただろ!!」

 バシン!!

 そうして、祖父から殴られる。

「すみません……」

「ふん、まあ良い。今日は実戦を模した試合をして貰う。剣の使いとして有名な四波家の子供だ。お前と同い年らしい。いいな、問答無用で蹴散らせ」

 現れたのは、竹刀を携えた四波慎太郎という少年だった。

「初めまして……」

「ああ、よろしく頼む」

 慎太郎は、小さいながらに毅然とした男だった。

「グハァ!!」

 そして俺は、一突きも出来ぬまま、彼に敗北する。

 それでも、何度でも立ち上がった。

 しかし、彼は突如、竹刀を置いた。

「なんで……まだ俺は負けてない……」

「君では僕には勝てない。異能を使った勝負でもな」

「なんでそんなこと断言できるんだ!!」

 歩みを止めると、俺の目を見つめて答える。

相手を負かそうと言う気概を感じないからだ」

 そして、初めて自分の愚かさに気付いた。

 自分が戦っていたのは、四波慎太郎ではなく、一族の名に恥じない名誉、怒られたくないという子供じみたもの

 それからはずっと、放心状態となっていた。

「三日間、この中で頭を冷やしてろ!! グズが!!」

 水を掛けられ、物置小屋に閉じ込められる。

 頑丈な手枷も、全て鋼鉄で磔にされた。

 しかし、そんなことよりも、ずっと頭の中には、自分の弱さがヒシヒシと巡り、体罰など何も感じなかった。

「ん? ここか?」

「バカ……! もう少し静かに喋れよ!」

 そんな夜、物置小屋の外から二人の声が聞こえる。

 屋敷の人間の声ではない。

 若い男二人の声だ。

「やっぱ頑丈だな。壊すか?」

 なんだ……?

 この倉庫をこじ開けようとしている……?

 泥棒か……?

「ああ、そうか! その手があったな!」

 もう一人は、コソコソと小声で話しているが、聞いたことのない声は、馬鹿みたいに声が大きい。

 その瞬間、真っ暗闇に染まった俺の目の前は、煌々と眩い光に包まれた。

「お前が八百万昴? なんか酷い有様だな」

 なんだ……コイツは……。

 ソイツは、会釈を終えると、入り口のドアを開ける。

 中に入って来たのは

「四波慎太郎……!」

 先程戦った、四波慎太郎だった。

 二人は懸命に俺の手枷を外すと、服を貸してくれた。

「どうして……」

 聞きたいことは山程ある。

 助けに来た理由、なんで閉じ込められていると分かったのか、他にも沢山。

 でも、声が出せなかった。

 悔しかった。

「ひとまず自己紹介する。俺は三嶋光希光の異能を使えるから、あーやって物質をすり抜けられるんだぜ!」

 そして、自慢気にニヤッと笑う。

「改めて、僕は四波慎太郎波動の異能と剣術を合わせて戦う。まだまだ拙い型しか出来ないがな」

「なんで助けに来たんだ……。君たちがここにいたら、家の者が黙っていないぞ……」

 すると、慎太郎は俺の頭をデコピンした。

「いたっ」

「お前、まだそんなこと言ってるのか。家柄に縛られて、お前は強くなる気があんのか?

「強くは……なりたいけど……でも……先祖様の偉業を踏み躙るような真似は出来ない……。俺は、これでも神童と呼ばれて期待されているんだ……」

 慎太郎は溜息を吐くと、俺に向かい合った。

「お前の弱点はそこだ。責任感強すぎ、真面目すぎ。ホント、身も心も鋼鉄って感じだな」

「仕方ないだろ……君たちには関係ない……」

「じゃあ最後に一つ聞く」

「何……?」

「八百万昴、お前は、“強くなりたいか?”

 月明かりに、二人の目は照らされている。

 俺の心には、どんな言葉よりも、その言葉が刺さる。

 馬鹿にされた姉さんのように、打ち負かされた慎太郎のように、自由で、どこまで強くなれるのか試したい。

 そんな、シンプルな願い。

「俺は……強くなりたい……!!」

「昴!!」

 そこに、怒りを露わにする祖父が現れる。

 こんな声で話していたら当然だ。

「慎太郎くん、それからお友達かな? これは、立派な不法侵入だよ」

 しかし、慎太郎も三嶋も何も答えない。

「聞いているのか!!」

 怒る祖父、怖い。 ただ、怖い。

「昴」

 俯いた俺の顔を、上に向かせたのは、姉さんだった。

「二人を招き入れたのは私だ。だから、不法侵入にはならないだろ? な? 爺さん」

「神子……! お前には関係ないだろ!! 昴は鋼鉄に相応しい異能を得たのだ!! 貴様と違ってな!!」

 そして、祖父はワナワナと俺たちに近寄る。

「こちらに来なさい。昴」

 怖い。

「早く、こっちへ!!」

 怖い。

 何かに引き寄せられるかのように、勝手に足は動く。

「そうだ、こっちに来い……」

 その肩を、姉さんは掴む。

「強くなるんだろ?」

「姉さん……」

 俺は歯を食い縛り、心に鋼鉄を宿した。

「お前の言う通りにはしない……クソジジイ……!!」

 そして、鋼鉄の異能を両脇に召喚する。

「クソ……!? 言葉遣いまで神子に似おって!! すぐに罰して、愚かさに気付かせてやるわ!!」

 すると、祖父もまた、鋼鉄を自身の身に宿す。

 シャキ……

「はーい、そこまで」

 祖父の首元を、姉さんの刃が捉えていた。

「なあ、爺さん。私、実はNo.3の称号を得たんだ。国内三位の実力者ってことだな」

「な、なんだと……!? 本当か……!?」

「もう分かるな? 昴は、誰に鍛えられた方が強くなるのか……。古ボケた頭でも冷やしてみるか?」

 祖父は、その場にワナワナと座り込んだ。

「サンキューな、ガキ共!」

「ガキって言うんじゃねぇよ!!」

 姉さんの発言に、三嶋は荒い口調を向けていた。

 それから、俺は祖父に縛られることはなくなった。

 もう一つ、変わったことは

「昴! もう一本だ!!」

「慎太郎!! 次は本気で行くぞ!!」

「神子さん! 次は負かすっスよ!!」

「掛かって来いよ! クソガキ!!」

 俺たちは、喧嘩するように、四人で稽古に励む日々を送るようになっていた。

 三嶋は元々、姉さんと喧嘩して、負かされてから勝つまで戦うと付き纏われたらしい。

 慎太郎は、姉さんが以前、勝手に四波家へ道場破りに行っていたとか。

 姉さんの自由奔放振りには、少しだけ呆れる部分もあるけれど、今の俺があるのは姉さんのお陰だ。

 必ず、姉さんのような強い鋼鉄の戦士になりたい。

 その為に、俺は強くなるんだ。

loading

この作品はいかがでしたか?

47

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚