テラーノベル
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東京×大阪(攻め受け無いです)
東京は、夜になると少しだけ人が変わる。
正確に言えば、昼の東京が“鎧”なら、夜の東京は“シャツ一枚”だ。
ネクタイを外し、ジャケットを椅子に掛け、照明を一段落とした執務室で、東京は一人、資料を読んでいた。
時計は、23時42分。
本来なら、誰もいないはずの時間。
「……はあ」
小さく息を吐いた、その瞬間。
「おーい、まだ起きとるかー?」
ノックもなしに、ドアが開く。
大阪だった。
「……なぜ、いらっしゃるのですか」
東京は視線を上げない。
「冷たいなぁ」
大阪は勝手に入ってきて、ソファにどさっと座った。
「今日の会議、長引いたやろ。帰るのだるなって」
「だからといって、ここに来る理由にはなりません」
「あるやろ」
大阪は笑う。
「東京んとこ、静かやし」
東京の指が、一瞬だけ止まった。
「……騒がしい方が、お好きでは?」
「昼はな」
大阪は天井を見上げた。
「夜は、別」
沈黙が落ちる。
東京は、ペンを置いた。
「……お茶をお出ししますか」
「気ぃ遣うなって」
「習慣です」
そう言いながら、東京は立ち上がる。
給湯室で湯を沸かす間、大阪の声が、遠くから聞こえた。
「東京さぁ」
「はい」
「なんで、そんなちゃんとしてんの」
東京の手が、少し震えた。
「……役割ですから」
「役割、なあ」
大阪は苦笑した。
「それ、しんどない?」
東京は、答えなかった。
カップを二つ持って戻り、大阪の前に置く。
「……どうぞ」
「サンキュ」
大阪は一口飲んで、目を細めた。
「相変わらず、落ち着く味」
「業務用です」
「そこがええねん」
大阪は、東京を見た。
「全部、“ちゃんとしてる”味や」
東京は、その視線を受け止めきれず、少しだけ目を逸らした。
「大阪さんは……」
「ん?」
「どうして、ここに?」
「言うたやろ」
大阪は軽く肩をすくめる。
「静かやから」
「……私ではなくても」
「ちゃう」
即答だった。
「東京やからや」
東京の喉が、鳴る。
「昼の東京はな」
大阪は、指でカップを回しながら言う。
「近寄りがたい」
「自覚しております」
「せやけど」
大阪は、少しだけ声を落とす。
「夜の東京、誰にも見せへん顔しとる」
東京は、何も言えなかった。
図星だった。
「……失礼ですが」
東京は、静かに言う。
「大阪さんは、なぜそんなに……距離が近いのですか」
「近い?」
大阪は笑った。
「これで?」
「はい」
「東京が、遠いねん」
その言葉は、冗談みたいに軽くて、でも、妙に重かった。
大阪は立ち上がり、東京の机に手をついた。
「なあ」
距離が、詰まる。
「たまには、肩の力抜いたらええ」
「……業務に支障が」
「今は業務ちゃう」
大阪の声が、低くなる。
「今は、夜や」
東京の心臓が、少し速くなる。
「大阪さん」
「敬語やめ」
「……無理です」
「夜も?」
「夜でも、です」
大阪は、ふっと笑った。
「頑固やな」
「職務ですから」
「それ、職務超えとる」
大阪は、東京のネクタイに指をかけた。
軽く。
引くでもなく、外すでもなく。
ただ、触れる。
東京は、息を止めた。
「……それは、何の行為でしょうか」
「確認」
「何を」
「東京が、生きとるかどうか」
指が、ゆっくり外れる。
ネクタイが、ほどける。
「……生きております」
「ちゃうな」
大阪は、囁く。
「感じとるか、どうかや」
東京は、目を閉じた。
「……卑怯です」
「せやろ」
「その自覚があるなら」
「やめへん」
大阪は、東京の額に自分の額を軽く当てた。
触れるか、触れないか。
その距離。
「東京」
名前を呼ばれる。
敬語じゃない、
ただの名前。
それだけで、
東京の中の何かが、音を立てて崩れた。
「……大阪」
初めて、敬語を外した。
大阪の目が、少し見開かれる。
「今の、もう一回言うて」
「……言いません」
「ずる」
大阪は笑った。
でも、その笑顔は、
どこか優しかった。
「今日はな」
大阪は、そっと離れる。
「ここまででええ」
「……?」
「東京が壊れたら、困る」
「……私は、そんなに脆くは」
「脆いで」
即答。
「せやから、守っとる」
東京は、言葉を失った。
大阪はドアに向かい、振り返る。
「また、夜に来るわ」
「……勝手に来ないでください」
「敬語戻っとる」
「……職務です」
大阪は、笑った。
「ほな、おやすみ」
「……おやすみなさい」
ドアが閉まる。
静寂。
東京は、ネクタイを見下ろした。
ほどけたまま。
心臓は、まだうるさい。
「……本当に」
小さく呟く。
「騒がしい方ですね」
でも、その声は、
少しだけ、柔らかかった。
リクエスト待ってます。
コメント
5件
なぜこんなに神作なんだよ…
ぐわぁあああああ吐血ぐはっ💋💋💝💝💝❤️🔥🫵😆🤩🤩🤩🍓好きですラブリーーーーッッッ❤️🔥❤️🔥💝