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ガラガラガラ
ゆっくりと病室のドアが開いた。そこには以外にも一郎が俺の見舞いに来ていた。
『……乱数』
『なーに?イチロー』
花束なんて柄でもない、見舞い用の花だろう…どこも体調が悪くない俺からしてみると変でしかない。ただただ大切に思う人を探すことを邪魔されているだけだ。不愉快でもある……
『あの、見舞いに来た…その……』
『ほーんと花束なんて持って来ちゃって』
一郎は次に何を口にするだろうか?言い訳を並べるのだろうか、はたまた諦めろと言うのか…予測不可能なのがこの世界だ。今が「過去」というものにならなければその次なんて分からない。
『乱数は、その、本当にまだ探すのか?誰かも分からないんだろ?』
『でも、イチロー達は分かるんでしょ?』
『……お前からして大切な人ってことは分かってるけど、でも、いや、だからこそ教えれないんだ』
大切って知っているから教えれないなんて聞き飽きた。何を知ってそんなこと言ってるのか…何もかも知っている顔して本当は知らない……分かったつもりでいるだけだ。知ってこようとしない。
『何が分かるの?ボクの、』
『お前がクローンってことを隠してたのもどれだけ辛かったのかも、全部知っているつもりだ』
あぁ、そうかバレていたんだ。飴のことも、忘れていた。じゃあ俺が探している相手も知っているのか?知らなかったとしても教えれる勇気なんか俺にはない……。俺が好きでも相手が俺を好きとは限らない……そんなことを思っただけで胸が痛くなる。
『それだけでしょ……どうせ』
俯いてしまった。顔を見て話した方がいい、そんなこととっくに分かっている。でも、何故か「そんなことだけ」という言葉が頭をよぎった。
『いや、それだけじゃないぞ!乱数、お前がどれだけ探している相手が大切だったかも分かる!』
……?「大切だったかも」?やっぱり俺は探している相手が好きなのか?愛しているのか?分からない。そんな気がするだけで探してきた俺には何が本当なのか分からない。
『あ、すまん混乱させちまった……帰るな、乱数、また……』
『うん……またね』
なんとなく疲れた気がする。手がかりになる情報が少なすぎる……もう、諦めてしまおうか?
『フゥーフゥー グス』
疲れが酷い、また泣いてしまった。今日はもう寝よう。ゆっくり疲れを取ろう。
✩.*˚✩.*˚✩.*˚
コポポポコポポポ
ある地下室のあるポットの中、彼女は1人目覚めない。あなたはクローンを信じますか?まぁ非現実的でしょう。あるポットとはクローン用ポット、彼女はクローンなのです。初めは種のような小さい形からポットに送られる物。それは簡単に言えば養分。その養分をクローンに与えれば成長もする。そして生きられる。成長しポットから出たクローン達は薬……「飴」を舐めて生きます。彼女はある人の犠牲になり倒れてしまいました。
コポポポコポポ
飴を1つ舐めていた彼女は持ってもあと3週間近く。それだけしか生きれません。ポットに入っている今は簡単に言えば昏睡状態。
(あの人に会いたいな……でももう私の命は長くない)
そんなことを考える彼女は一人孤独にこの世から去ってしまうのでしょうか?