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それから、買い足りない物はないかなどの話をしながら暫く休んだ私たちは、当初の目的でもある布団を見に行く事に。


「じゃ、そろそろ行くか」


言いながら席を立った尚はトレーを持って片付けに行こうとする。


「あ、いいよ、片付けくらい私が――」

「いいって。荷物あるし、夏子は待ってろよ」


買って来てくれたのは尚だし、片付けくらいは私がと思っていたのだけど、そんな私を制してスタスタと片付けに行ってしまった。


(……何だか本当、調子狂っちゃうな)


ナンパから助けてくれた事、さっき口に出してくれた感謝の気持ち、そして、今のようなさり気ない優しさを目の当たりにした私は、何だか胸の奥がむず痒い感覚だった。


それから私たちは布団を見て回って寝具一式を買ったのだけど、流石に持って帰る事は出来ないので配送の手続きをして店を出た。


思いの外遅くなってしまい、帰りの電車は激混みだった。


荷物の多い私たちは両手が塞がっていて、どこかに掴まる事も出来ずに立っていたのだけど、電車が揺れる度よろけそうになっていた私を見兼ねた尚が、「そっちの袋、貸せよ」と言って強引に私から袋を奪い取る。


「あ、いいよ、尚だって荷物沢山あるんだし――」


私が袋に手を伸ばそうとすると、


「いいから、空いた手で俺に掴まっとけよ」


突然そんな事を言うもんだから、ちょっとドキッとしてしまったけれど、


「こんな所でコケたら、知り合いの俺も恥ずかしいだろ?」


なんて余計な一言で、またしてもときめきは一気に冷めたけど。


「……ありがと」


それでも、それに言い返す事なく自然と感謝の気持ちが口から出て、私は尚の腕に掴まりながら満員電車に揺られていた。


マンションの最寄り駅に到着した私たちは大量の荷物を持って住宅街を歩いていた。


電車を降りたにも関わらず、尚は私の荷物半分も持ったままだ。


「私も持つよ」と言っても、


「いいよ。お前歩くの遅ぇから、持たせたらもっと遅くなる」


などと言われて断られてしまう。


「もう――」


何でそういう言い方しか出来ないのと言葉を続けようとすると、


「おい、車来たから端に寄れよ」


という尚の言葉に車道側に立っていた私は尚の前に立って車を避ける。


「行くぞ」

「あ、待ってよ」


先を歩いて行ってしまう尚の後を追い掛けるように私も続いた。


その後、私たちの横をバイクが通り過ぎた時にふと気付く。


(あれ? そういえば、車避けた後から尚が車道側を歩いてるような……)


偶然かなとも思ったけど、何だかそうではないような気がした。


直接確認した訳でもないし、尚はそんなつもりなかったのかもしれないけど、何気ない行動が私はちょっとだけ嬉しかった。


ショッピングモールで買い物をしている時、女装した尚とだと女友達と買い物をしているような感覚だったけど、フードコートや電車の中、そして今の出来事といい、やっぱり尚は男の子なんだと実感した。


「あ、尚、夕飯どうする? 何か食べたい物ある?」


私が聞くと尚は少し驚いた表情を見せた後で、「……ハンバーグがいい」と言った。

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