注意事項⚠️
・knkz
・空想リスナー
・トラウマ表現
「よぉ……久しぶり」
しばらくぶりの配信。葛葉の声は、どこか掠れていた。顔出しはなく、画面にはゲーム映像と小さなアイコンのみ。
画面越しのチャット欄には「おかえり」「待ってた」「無理しないで」と優しい文字が並ぶ。
「まー、いろいろあったけど……とりあえず、元気、っちゃ元気だし。ちょっとだけ、な」
笑ったような声。でも、視聴者は気づいた。その笑いの奥に、怯えがあったことに。
ゲームはFPS。いつものように、銃声と足音の中で動く葛葉。しかし──
「……あっ」
画面内、突然背後から敵が現れた。葛葉のキャラが殴られ、倒れ込む。
その瞬間、マイク越しに小さな「ッ……!」という息が漏れた。
その声は、以前の配信終了直前に聞いた“あの時”の声に酷似していた。
そして──葛葉のキャラが倒れるのを見ながら、彼の手元が止まった。
「……ごめ、ちょっと、今のは……ごめん……」
動揺を隠しきれない。手の震える音が、マイクに乗る。
コメント欄はざわつき始める。
「大丈夫?」「なんか声おかしい……」「無理しないで」
すると──別のVCが入った。
「……葛葉、大丈夫? 今のちょっと焦った?」
叶の声だった。
「あ、いや……わり。ちょっと、変なフラッシュバックっていうか……はは」
笑う彼の声に、叶は静かに続ける。
「……僕、さ。あの時、もうちょっと早く行けてたらって、ずっと考えてた」
「……叶」
「でも、今はいるよ。今ここにいるからさ。怖くなったら、僕のこと思い出して」
葛葉の操作はまだ止まっていた。でも、マイクに入った音が変わる。
微かに、震える息が落ち着いていく音。
「……ありがとな。ほんと、叶……おまえがいてよかった」
ゲームは再開した。まだ手は少し震えていたけど、彼は前を向いた。
視聴者たちは知っていた。彼の背後に、もうひとりの“味方”がいることを。
その夜、配信後
「……叶、今日、助かった」
「葛葉……ちゃんとご飯、食べた?」
「はは、結局それかよ……食ったよ、カップ麺だけど」
「それは食べたうちに入らないなあ。明日、作りに行こうか?」
「……うん。……行く、じゃなくて、“いてくれ”」
「……うん。いるよ。ちゃんと、そばにいるから」
暗い部屋の中、手元のモニターにはまだゲーム画面が残っていたけど、葛葉は見ていなかった。
代わりに見ていたのは、通話画面の向こう。そこに映る、叶のアイコンだった。
――あの日、間に合わなかった声。
でも今は、確かに届いている。少しずつ、心の奥へ。
コメント
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/ くろのわてぇてぇすぎます 続きが楽しみすぎます