テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
そして来る(きたる)24時。
ポートマフィアは丁度に森鴎外は中原中也、芥川龍之介、黒蜥蜴を率いて例の袋小路に現れた。
「久しぶりだな、森先生。さして、『ヨコハマ全体を揺さ振る事』とは何だ?」
「ふふふ、単刀直入だねぇ」
二つの組織の長が見合う。この場には其れ相応の雰囲気が流れていた。
そんな中、江戸川乱歩は1人疑問を抱いていた。
(太宰が素敵帽子君をからかわない…)
そう、この場にポートマフィアが現れてから太宰は一言も言葉を発していない。常時は緊急時でも中也を煽ること忘れない太宰が、だ。
(真逆…!)
「今日はね、部下を引き取りに来たのだよ?」
「探偵社に貴様の部下は居らぬ」
「帰っておいで、太宰君。任務終了だ。」
中島敦side
は…?太宰さんがポートマフィアの首領の部下…?
あり得ない…だって太宰さんは…探偵社の…
その時、視界が砂色に染まった。僕の視界を一瞬だけ覆った物の正体は太宰さんが常時着ている外套だ。太宰さんは砂色の外套を脱ぎ捨て、ポートマフィアの方へ歩いて行った。
「太宰、さん…ッ!」
「おい、太宰!どう言う事だ!」
太宰さんは、僕達の言葉では振り返ってはくれなかった
敦side 終了
「おかえり、ポートマフィア五大幹部の太宰治君」
「只今戻りました、首領」
そう云った太宰の目は凍てつく様な冷たいものであった。
森は太宰に黒色の外套を着せ、右目に包帯を巻き付ける。その目は、まるで我が子を見る様な…
「おい、糞鯖」
「やぁ、蛞蝓。双黒は復活さ」
太宰と中原が少し睨み合う。その時の太宰の表情は探偵社に居た時より幾文か幼い。
「では、私達はこれで」
「待て。太宰は探偵社の探偵社員だ。連れ去らないで頂きたい。」
「福沢社長、私はポートマフィアの幹部、太宰治ですよ」
「そういう事なので」
太宰は森に肩を抱かれ、夜の闇に消えていった。
誰一人として太宰を追い掛けなかった。否、追い掛けることが出来なかった。
「太宰…さん…」
敦が膝から崩れ落ちる。其処に駆け寄った鏡花と谷崎の手も震えていた。皆受け入れられないのだ。共に探偵社員として働いた太宰が裏切った事が。
特に敦と鏡花は太宰のお陰で探偵社員に居るのだ。受け入れられないのは当たり前であった。
次に反応を示したのは稀代の名探偵、江戸川乱歩。
「クソッ!」
「乱歩…」
「僕が、僕が気付いていれば…彼奴、僕の目までも誤魔化すとは…ッ」
彼もまた、太宰の演技を唯一見破れる存在と自身で思っていたので自分の目を掻い潜られて感情が立っていた。
それだけでは無い。太宰は乱歩にとって永らく待ち望んだ幼子ではない“人間”だったのだ。乱歩に並ぶとは言わないが、乱歩が云った事を全く理解出来ない他の者達とは違い、其処から物事を組み立て正解に辿り着き幼子達に伝える。言わばお気に入りであった。
社員達が各々の後悔をしている中武装探偵社社長、福沢諭吉は声を張る。
「私はまだ太宰から退職届を受け取っていない。太宰を取り戻したい者は手を挙げろ」
社員達は社長の声に顔を挙げるが、様々な想いが交わり動けない中に真っ先に手を挙げたのは鏡花だった。
「あの人は私に光の世界を見せてくれた。あの人が、光の世界に身を置きながらも闇を見ていたと云うのなら、今度は私があの人に光を見せる」
「僕も…!太宰さんが見せてくれた光が太宰さん自身は見れていないものだとしたら、僕が太宰さんに手を差し伸べる…!」
「俺もだ!俺だって、彼奴の“相棒”だ!“元相棒”なぞ言わせん!」
鏡花を皮切りに全員が手を挙げた。
「決まりだな。これから探偵社に戻り太宰奪還作戦を立てる。」
「「「「「「「「はい!」」」」」」」
嘘吐きの正体は森さんでしたね!“元幹部”では無く、潜入捜査任務なので“現幹部”なので!
コメント
2件
なるほど!!凄い太宰さんはなんで敦や、鏡花ちゃんを助けたのだろう?続き楽しみにしています✨️