テラーノベル
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すっかり暗くなった空の下、俺は待ち合わせ場所を前に右往左往していた。
「大遅刻だ」
雲に向かって独り言。イルミネーションがあちこちに施されたモール周辺は、高校生にも大学生にも見える若いカップルでいっぱいだ。
……理子、もう着いてるかな。
あーっ、もう!勇気を出して誘ったはいいけどさ……緊張しすぎたばっかりに、電車の方向間違えるなんてな。
待ち合わせ時間にはちょっと遅刻。謝罪の意でスタンプを添え、そうメールを送った直後だった。
「あっ、悠真くん!」
横断歩道の向こう側から声が飛んできた。この歳にもなって「くん」付けなんて、理子くらいしかいない。
車が二台走り抜けるのを見て、理子がいる方へ渡る。
「もうすぐ七時なっちゃうね、どこ行こっか?」
「やべ……俺、行き先もなにも全然考えてなかった」
「えへ、私も。じゃあ適当なお店で食べる?」
昔っからこうだ。俺も理子も、周りのムードなんて関係なく話せるような、所謂「マイペース」だったから。
雪がちらつき始め、俺たちはそれを避けるようにしてショッピングモールに駆け込んだ。
「悪い、俺から誘ったのに遅くなった」
「ううん、いいよ。別に他の予定なーんにもないし」
中学三年くらいまでは、俺と同じ位置にあった理子の肩。今ではずいぶん小さくなってしまった気がする。
「悠真くん!今日は何食べる?」
「ん、あー……どうしようか……」
実家暮らしの大学生とはいえ、ゲーム好きの俺にとって金欠はつきものだった。大人気分で背伸びした長財布を開くも、そこにあるのは精々二、三千円……。
「贅沢は、できんか……」
「? 何か言った?」
「いや、何も……」
仕方ない。途中でATM見かけたら、そこでお金を引き出そう。多分一万円くらいなら残ってるはず。多分な。
「ここのモール来るの、久しぶりだね」
「ああ、理子は高校の時部活ばっかりだったもんな」
「もう、そういうこと言う?」
他愛もない話をして、手も繋がずぶらぶらと歩く。これだけ見て、一体何人がデートだと思うだろうか。
いや、無理もない。俺の片想いだからな。
独り脳内でぶつぶつ言っていると、ギラギラ光るゲームコーナーに理子がいた。
「悠真くん、あのぬいぐるみ取ろ!」
「クレーンゲーム?」
「交代でやって、取れた方が勝ちね!」
さよなら、俺の千円。
俺は貴重な三枚のうち一枚を、全自動金食い虫こと両替機にそっと差し込んだ。間も無く百円玉が10枚出てくる。
「取れっかな……」
何回かやるうち、少しずつ動くぬいぐるみ。俺の手元に来たって、精々男臭さが移るだけだぞ。
「「あっ」」
……俺かよ!
しかも残り二百円。まあ、残りの二千円もスらなかっただけマシと捉えるべきか……?
「悠真くん、やったね!」
うっ。理子の笑顔が眩しい。俺が純粋に喜んでないみたいで、ずいぶんバツが悪い気がした。
その後も大学生デートとは思えぬような所を連れ回され、気分がどっと疲れた……
「今何時だろ……」
「……」
「理子?」
「わっ、何っ? えーと……今は八時前くらい」
よかった。聞こえていたらしい。しかし、もう八時か。いい加減、どこの店で食べるか決めないとな。
その時だった。
「……は?」
サラリーマンだ。一見、何もおかしなところはない。しかし、仕事疲れと言うだけにしては顔色がおかしい。
おまけに、妙に唸り声を出して苦しそうだった。
「おいおい……」
これじゃまるっきり「ゾンビ」だ。それも、ゲームとか映画に出てくるベタなやつ。
理子はまだ違和感に気づいていないのか、俺の独り言に首を傾げるだけだった。
理子を怯えさせないために、俺は自然を装ってそこを離れた。そうだ、食いたい飯屋があるって事にすれば……!
「理子。やっぱり俺……」
「きゃっ!みんな……泡吹いて……」
……遅かった。
理子も違和感に気づいたらしい。
このサラリーマン一人だけじゃない。ここにいる客はほとんど、ゾンビみたいになっている。
「理子、一旦離れよう!」
……なんで、イブに限ってこんな目に……?
魚住
ふぃる汰
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羽海汐遠
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コメント
1件
「デートの甘酸っぱい空気から、まさかのゾンビ発生⁉︎ 急転直下すぎて震えた……(笑) 悠真くんの金欠と片想いの切なさがリアルで、ぬいぐるみ取った後のバツの悪そうな感じとかすごくわかる。クリスマスイブにこれって……続きどうなるの!? 理子ちゃん守ってあげて〜😭」