テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「 木洩れ日の奥で 」
もりょき
「 …..ねぇ、涼ちゃんってなんでそんなに優しいの? 」
夕暮れの帰り道。
学校の裏手の並木道を歩いていた時 不意に元貴が口を開いた。
その声は、どこか震えていて でもどこか答えを欲してるように聞こえた。
「 …..優しい? 」
涼架は足を止めた。
元貴の目は、前を向いたまま。けれどその表情は 風に揺れる葉のように、不安定だった。
「 僕、こんなに……なんにも出来ないのに 」
「 すぐ熱出して 嘔吐して、…まともに笑うことも出来ないのに 」
涼架は、答えず空を仰いだ。
「 僕さ、嘘って嫌いなんだよね。 でも、嘘でもいいから笑って欲しいって思う時もある。」
「 …..え? 」
「 元貴が苦しそうな顔してるとさ、俺まで苦しくなる。だから、無理やりでも笑ってほしくなる。……最低だよな、俺 」
「 …..それって、僕に無理をさせたいってこと? 」
「 ううん。違うよ 」
涼架はふっと微笑んだ。
その目には、まっすぐな光が宿っていた。
「 俺は、元貴が笑いたくなるような時間を、一緒に作っていきたいんだ。……無理やり笑わせるんじゃなくてさ 」
その瞬間 何かが少しだけほどけた気がした。
元貴の口がゆっくり開いた。
「 …それ、本音? 」
「 うん。超本音 」
「 じゃあ、僕も…本音 言っていい? 」
涼架は真剣な顔で頷いた。
「 僕……、ほんとは、ずっと誰かに助けてほしかった。苦しい時に、“大丈夫だよ”って言ってほしかった。でも……信じるのが、怖かった 」
言葉は途切れがちだったけど それでも紡がれたその言葉に、涼架は静かに耳を傾ける。
「 ……涼ちゃんのことも、信じたいのに、怖い。こんな僕を優しくされると、いつかその優しさを失うのが、怖くなる。 」
「 ……うん わかるよ 」
涼架は一歩、元貴に近づいた。
けれど、手は伸ばさない。ただ、同じ目線で立ち止まる。
「 でも、僕はここに居る。ずっといる 」
「 離れない。……そう言っても 信じて貰えないかも知れないけど。」
夕焼けの光が 二人の間に差し込んだ。
「 信じられるようになるまで、傍に居てもいい? 」
その言葉に 元貴は小さく、けれど 確かに頷いた。
その夜、元貴はひどい頭痛で目を覚ました。
熱がまた上がっていた。
喉の奥が詰まるように苦しく、吐き気も治まらない。
だけど スマホを開くと
涼架からのメッセージが一通だけ届いていた。
「 明日も明後日も 傍に居るよ 」
泣きそうになっていた。
いや、もう泣いていた。
信じるなんて簡単にはできない。
でも ほんの少しだけ、信じてみたいと思った。___
#3.「 嘘と本音 」
涼ちゃんっていじられキャラとして浸透してますが凄く面倒見が良さそうですよね。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!