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こことは全く別の世界―――
所謂、『異世界』という存在を君達は信じるだろうか?
コレは異世界に転移してしまった主人公達が日常を取り戻す為に闘い続ける物語。
「は?なんだよここは…」
驚いたように呟く、一人の少年。
さっきまで現実世界のコンクリートに囲まれた世界にいたって言うのに、ここはもはや別世界。
周りには高い山が見え、森林に囲まれた大自然―――
獣達の鳴き声が四方八方から聴こえる。
どう考えてもさっきまでの現実世界とは別の世界だ。
少年は広大な森林には似つかわしくない人工的な立方体の箱―――、誰もが知っているエレベーターから出てきた。
この少年の名を天童(てんどう) 進(すすむ)という。
15歳の高校一年生。
身長175cm、体重64.0kg・・・最近絞って、63.2kgになった。
血液型はAB型、黒髪、童顔の見た目は至って普通の少年だ。
しかし、見た目とは裏腹に幼少の頃から天才少年として周囲から注目を浴びていた。
そんな優秀な彼でもいきなり訳も分からない世界に来て動揺する。
ココが異世界であることをすぐに察した少年―――、元の世界に戻るため、エレベーターに戻ろうと後ろを振り返るが、そこには既にエレベーターの影も形もなくなっていた。
「マジか・・・。」
この広い森林に学生服の少年。
通学で持つ鞄くらいしか手持ちの道具はない。
「ほとんど手ぶらでどうやって元の世界に戻るんだよ。」
と、つい愚痴を漏らしてしまう。
そもそもなぜこの男がこんな異世界に来てしまったかというと・・・
オカルト好きの幼馴染の真島 (ましま)未央(みお)を追ってきたのである。
◆時は少し遡る◆
世界中を恐怖に陥れた伝染病も収束し、日常を取り戻していた今日この頃―――
「ねぇねぇ、進ちゃん!!」
「この写真、見て!!スゴイのが写ってるから!!」
少女は高いテンションで進に話し掛ける。
少女の名前は真島 未央―――、進の幼馴染であり、進にとってかけがえのない大切な存在である。
「わ、分かった―――、見るから少し離れてくれ。」
進は少女から手渡された写真を眺める。
写真には薄暗いトンネルに未央が両手でピースをしている姿が写っている。
「これの何がスゴイんだ・・・?」
「まぁ、こんな薄暗いトンネルに一人で行っていることには驚きだが―――」
未央の行動力は凄い―――、廃墟や心霊スポット巡りから始まり、UMAの目撃情報があった場所にはすぐ飛んでいくアクティブな面がある。
「ここ見てよ!ここっ!!」
未央が指差す場所にはフワフワと光の玉のような物が浮かんでいる。
「・・・・・・これは?」
進がキョトンとした表情で尋ねる。
「えぇ!?進ちゃん知らないの!?」
「これはオーブだよ―――、オーブ!!」
未央が真剣な顔で云ってきた。
「いや、オーブは知ってるけど―――」
「あんなのは空気中の埃や水分が光で反射しただけのものだぞ―――」
呆れた顔で答える進。
「も~~う!夢がないなぁ、進ちゃんは―――」
一回、溜息を吐く未央。
「いい!私は口裂け女もきさらぎ駅も八尺様だって信じてるんだから!!」
「進ちゃんも乗ってきてよ!!」
流石、オカルト研究部の部長。こういった話への好奇心はとてつもない。
進と未央は同じオカルト研究部に所属し、普段からこのように登下校を共にする。
そうだ――――、これがオレ達の日常だった。
だけど、そんな恋焦がれた日常はもうやって来ない。
アレがオレ達の運命を大きく変えた。
それはいつも通り、オレと未央が一緒に下校している時だ。
皆さんは、聞いたことがあるだろうか?こんな都市伝説を…
1.まずエレベータに乗ります。
(乗るときは絶対ひとりだけ)
2.次にエレベータに乗ったまま、4階、2階、6階、2階、10階と移動する。
(この際、誰かが乗ってきたら成功できません)
3.10階についたら、降りずに5階を押す。
4.5階に着いたら若い女の人が乗ってくる。
(その人には話しかけないように)
5.乗ってきたら、1階を押す。
6.押したらエレベータは1階に降りず、10階に上がっていきます。
(上がっている途中に、違う階をおすと失敗します。ただしやめるなら最後のチャンスです)
7.9階を通り過ぎたら、ほぼ成功したといってもいいそうです。
5階で乗ってきた人は、人ではないということだけ……。
「わぁ!!!!」
「驚かすなよ未央!」
未央が楽しそうにこんな話をしていた。
「この話、部活で話題に上がって興味が出たから、試してみようと思うんだよね~」
未央は街の中心に聳え立つ巨大な高層ビルを指差した。
「この街で10階まである建物ってあそこくらいだよね~~。」
「・・・・・・・・。」
進は未央が指差した建物を見上げる。
「やめとけ、やめとけ―――」
「あそこは幽霊やお化けなんかよりものもっと怖いものが出てくるんだぞ―――」
「えぇ~~何それ!!」
未央が興味津々に食いついてきた。
「”社畜”というお化けだ―――」
「”社畜”~~!?」
吹き出しそうになる未央。進があまりにも予想外のことを言うんで可笑しくなってしまう。
「そうだ―――、あそこは世界各地の選ばれし社畜が集う超・超・超ブラック企業だ!!」
「だから、未央は絶対に近づくんじゃないぞォー!!」
進は未央にそんな脅し文句を言って聞かせた。
しかし、未央が突発的にこんなオカルト話に興味を持って、実践してみようというのもある意味日常茶飯事の事。
いつもの事と思い、その時はそこまで深く考えていなかったが、未央はその次の日行方不明になった。
警察にも話を聞かれたが、家出や自殺などするような奴にはどうしても思えなかった。
未央の両親に話を聞いたが、その日はオレと夜に出かけるといって家を出たそうだ。
「なんだよ!!ちくしょう―――!!」
「勝手にいなくなりやがってッ!!」
オレは何度も何度も自分の机を叩いていた。どうすることも出来なかった自分の無力さを感じながら。
そんなどうしようもない思いに駆られているとふと未央がいなくなる前日に言っていたことを思い出す。
「もしかして、未央の奴本当にあれを実践したんじゃ・・・。」
「この辺で十階以上ある建物で尚且つエレベーターがあるのってあそこしかないよな・・・。」
何か手がかりがあるかと思い、あのビルに行ってみることにした。
ビルに着いたが、ただ高いだけでやっぱり普通のどこにでもあるような建物だ。
そもそも普段から使っている奴がいるんだから、何かあるなんてことあるわけがない。
そう思い、帰ろうとしたが、ふと下を俯くと未央の持っていたクマのキーホルダーと同じものが落ちていた。
コレは未央が好きなキャラクターのキーホルダー。
「いやまさかそんなハズあるわけない…」
落ちていたキーホルダーを拾い、すぐさまエレベータに乗った。未央に会いたい一心で
ええとなんだっけな
たしかまずは、4階からか―――
未央が話をしていた都市伝説の通りにエレベータのボタンを押していく。
「そういえば5階で誰か乗ってくるみたいなこと言っていたよな。」
まさかそんなことある筈ないと思っていたが、その5階に着いたとき、進の背筋は凍った。
若い女が乗ってきたのである。
女は長い黒髪で、顔は髪に覆われて見えない。
不気味で仕方ない。
(今夜の10時だぞ。こんな時間にこのタイミングで女が乗ってくるのか?)
女が進の後ろに歩いてきた。
進はただの一般人かもしれないしなと思っていたが、女の言葉でさらに緊張が走る。
「異世界にようこそ…」
「異世界にようこそ…」
「異世界にようこそ…」
「異世界にようこそ…」
「異世界にようこそ…」
「異世界にようこそ…」
…
壊れたラジオみたいに何回も同じことを言ってくる。
「あははっはは!!」
女の不気味な笑い声がエレベータの中を反響する。
反応しようにも未央の話では、反応してはいけないらしいので反応はしなかった。
オレはゴクリと自分の口に貯まる唾液を飲み込んだ。
オレは未央の話の通りに、エレベータの1階ボタンを押したが、エレベータは1階に行くことなく10階を目指して昇って行った。
このタイミングで、違うボタンを押せば、異世界に行くことは失敗するらしいが、進は未央に会うためにここに居るんだぞといった強い意志でボタンを押すことをためらった。
女がオレの背後でこんなことを言ってきた。
「異世界ではステータスオープンと言いなさい。私からのプレゼントがあるから確認することができるわ」
「貴様が誰かは知らんが、この先にオレの幼馴染はいるんだろうな?」
オレは謎の女に尋ねた。この時、既に恐ろしいという感情はなかった。
寧ろ、幼馴染の未央の事だけを考えていた。
「えぇ…いるわよ!貴方の探してる子は。ただ、もう以前のその子とは思わない方がいいわよ!」
女の冷たい声が耳元で聴こえる。
「オイ!それはどういう・・・っ!」
どういうことだと思い、咄嗟に振り返るともうそこに女はいなかった。
と同時にエレベーターの「チン!」という音で止まり、扉が開き、目の前に異世界の景色が広がった。