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お? 一連の経緯を説明し終えた親父ナガチカがナッキに言うぞ。
「ナッキ殿、サニー殿、私はね…… 臆病なのですよ」
そう言って自虐的に微笑む親父に、ナッキもサニーも掛ける言葉を見つけられないようだ、まあ、当たり前だろうな……
「う、うん……」
「そ、そうなの、か、な?」
親父は言う、天を仰いでだよ? 見ていて辛いっ、一人息子としてっ!
「そうなのです、私は臆病者の極みなんですっ! それを、その事をそれまで以上に感じた、確信したのは我妻、美雪と掛け替えの無い息子、聖邪(せいや)を送り出した日、無為に失ったあの日だったのですよ!」
ん? 私と母を…… 一体何が有ったと言うのだろうか?
無言のままなナッキとサニーの声を待たずに親父、いいや私の父、ナガチカは言葉を続ける。
「あの日…… 村の長としての立場も何もかもうち捨ててハタンガを出よう! そう思いました…… でもね、こっそりと村外れまで向かった私には、それ以上足を踏み出す事が出来なかったんですよ…… 自分自身の望みを叶える為に村の面々を捨てる? その勇気が無かったんですね…… 結局私はそのまま村に帰り今この時まで十年に余る月日をハタンガで過ごしている、そう言う事なんですよ! 弱いんですよね、ははは」
ナッキが聞く。
「そこまで覚悟を決めて村を出ようって決めたんでしょ? どうして思い止まれたの?」
ナガチカははにかんだ笑顔で答える。
「何ででしょうか? うーん…… まあ、その頃には村の皆が私の家族、そんな風に思っていましたからね、判るでしょう? 自分の独りよがりな気持ちみたいなフワッとした物で捨てられないじゃあ無いですか、家族ですから」
ぐすっ、お聞き頂けたであろうか?
これこそ私、観察者の父である…… ぐすっ!
母、美雪はハッキリと伝えてくれはしなかったが、この村人一人一人を家族だと断じ、自らの気持ち、判りやすく言うと心から愛した母と、何よりも可愛くて尊(たっと)かった私の後を追う事を思い止まった立派な人物こそ、めっちゃ稀有(けう)な清廉潔白な責任感に溢れた存在が私の敬愛する父の姿なのである、ううううぅっ……
やはり親子と言う事だろうか、私自身の性格と酷似しているようだ…… 当たり前か、父親なんだし♪
兎に角、リーダーの資質に満ち溢れた自慢の父に対して、只の悪魔に過ぎないフナ二匹は返す言葉を見つけられないで居るようだ、残念な事だが仕方が無い、我が父がレベチ過ぎるのだ。
「う、うん、気持ちは判るよ、僕にとっても池の仲間は家族と同じだし…… えっとぉ、ごめん、本当は良く判らないんだ、奥さんとか子供とか居ないから…… ごめん」