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「……っ!痛った……」
「このヤリマンが……っ
俺のこと舐めんのも大概にせぇよ!」
「……いや、
私たちそもそも付き合ってないし……
そっちが勝手に勘違いして……」
「お前……ッ」
ソイツが手を高く振り上げたから私はぎゅっと目を瞑った
あぁ、
こんなどうでもいい男に
2回も殴られるのか
厄日だなぁ……
そんなことを思いながら
こんなにも話の通じない人間に
もう抵抗する気力も残ってなくて
大人しく殴られておこうなんて
諦めモードに入った時だった
「ちょっとお兄さん〜
うちの店の前で暴力沙汰やめて下さいよー
そういうの営業妨害になるんっすよ
ほら、うちの店の前だけ
人避けて通ってますやん
逃げてった客の分
お兄さんお金落として行ってくれますのん?」
声のする方を見ると
そこには長身でガタイのいい男が
私たちを見下ろしていた
私たちが揉めていたのは
ちょうど風俗店の前だったらしく
きっと男はそこの用心棒かなんかだろう
体つきもそうだけど
それ以上に顔がイカつくて
ヘラヘラと半笑いの表情が余計怖かった
「……っ、日和……!
そんなに尻軽ならここで雇ってもらえや!
客として行ったるわ!」
最低な文句を吐き捨てて
ソイツは私を残し走って逃げていった
「……あ、あの……すみませんでした……」
その男と目を合わせずに言うと
私もその場から全力で逃げようとした
「待って」
その男は私の腕を掴んだ
「……っひっ……!」
心臓が飛び上がるくらい怖くて
悲鳴のような声が漏れた
背の高いその男はちょっとかがんで
俯いている私の顔をじっと覗き込んだ
私はそれが怖くて怖くて目を必死にそらした
あいつが雇ってもらえなんて言うから
品定めされているのかもしれない
迷惑をかけたから
その分は働いて返せって
脅されるかもしれない
勝手に喚き散らした上に私を置いて行った
憎たらしいアイツをさらに憎んだ
今日は本当に厄日だ
何も悪いことなんてしてないのに
男に殴られるし
置いて行かれた上に
怖いお兄さんに絡まれるし
怖すぎて震えるし
自分が情けなくて
今にも泣き出してしまいそうだった
「……お姉さん、顔エグいな〜!大丈夫?」
「え……何……」
お兄さんの顔を恐る恐る見ると
ただただ心配そうな顔で私を見つめていた
「ちょっとここで待っててくれる?
そこのコンビニで冷やすもん買ってくるわ
絶対そこおってや!
そんな顔で電車乗られへんよ?
顔パンッパンやから!」
「え……」
そう言って私の言葉を待つことなく
お兄さんはコンビニにダッシュして
本当に氷と飲み物を買って来てくれた
「あの……すみません……
お店の前で騒いじゃったことも重ね重ね……
お金払います……」
「いやいや、ええよ、ええよ。
お姉さん全く悪くないし!
にしても災難やなぁ……
女殴るとかあり得へんやろ
俺が話しかけたら逃げたし……
ほんまあいつダっサい男やな。」
「いや……まあ……
私もちょっとは悪いし……」
「いや、それでも女殴るんはあかんやろ……。で、お姉さん何したん?浮気?
まあモテそうやもんなぁ……」
「いや、浮気っていうか……
そもそも付き合ってない、誰とも……
こうやって揉めるの面倒くさいから……
なのにあっちが勝手に
付き合ってるって勘違いして……
エッチしただけなのに……」
「ふっ……ぶはっ……っ!」
それを聞いてお兄さんは吹き出した
「お姉さん……
そんな可愛い顔してエグいなぁ!
そんなん正面切って言われたらそら傷付くわ!プライドズタズタやわ!
ちょ、おもろ……っはは、ヤバ……!
あはははっ、めっちゃヤバい、
お姉さんタイプやわ……!
おもろすぎる……!」
お兄さんはお腹を抱えて涙が出るほど笑っていた
「そんなおもろいかな……
それに私誰とも付き合わんよ
恋愛とかよく分からんし……」
「それでもいい!というかそこがいい!
なぁ、俺たち友達にならん!?
絶対気合うと思うねん!な!?
俺も恋愛分からんし!
俺たち似てると思うねん!」
「んー……まあ……友達なら……」
「やった!じゃあ連絡先交換しよや!」
「……これさ、風俗嬢になりませんかって
連絡来たりせぇへん?」
「せんわ!ほら!
こっちが俺のプライベートのケータイ!
こっちが仕事用!
連絡先交換すんのは俺のプライベートの方!」
「あの……お兄さんって……
たぶん、その……怖い人……ですよね……?
いわゆる……」
「……あぁ、そうやで。
全然下っ端やけどな〜
でも立派なもん背負ってんで〜
見たい!?脱ごか!?」
「いや……遠慮します……
なんかそういうお仕事の人って
もっと怖い感じかと……
いや見た目だけは
めちゃくちゃ説得力ありますけど……」
「よー言われんねん、それ!
中身全然なのに顔だけイカつい〜って
やから、やたらとこき使われるんよなー
上からも下からも……」
「というかお兄さん仕事は?
こんなところで油売っててええの?」
「あー、ええねん、ええねん……
この辺俺が仕切ってるから自由やねん
あ!そんなことよりさ、
さっきの経緯詳しく教えてよ!」
「めっちゃ興味津々やん……
まぁええけど……」
そっから顔の腫れが引いても
終電がなくなっても
私たちは喋り続けた
初体験から
独特の恋愛観仕事に
将来の夢に家族のことまで
自分たちのことを何から何まで話し続けた
始発まで話し続けても話し足りなくて
朝日を見ながら
なんかお腹空いたなぁって言って
2人でラーメンを食べて帰った
もう何年もずっとこうしてきた友達みたいに
悟の隣は私に馴染んで
私の隣は悟に馴染んだ
それから毎日LINEして
しょっちゅう遊びに行って
どんどんお互いを好きになって
ほぼ毎日会ってるのに時間足りんなぁ
日和とずっと一緒におりたいなぁ
もうさ、俺たち同棲しちゃう?
って悟の軽い提案で
本当に私たちは同棲始めた
キスもしたし
エッチもしたし
独占欲も感じるし
毎日好きって言うけど
それでもまだお互いを
恋愛的な意味では好きになれない
ずっと友達以上になれなくても
それでも私たちはずっと一緒がいい
「悟さー出会った時のこと覚えてる?
私が殴られて、悟が風俗の用心棒してて……」
「覚えてるに決まってるやん、懐かしいなー」
「あの時めっちゃ悟のこと怖いって思った
見た目がイカつすぎて
完全にあっちの人だったし
風俗嬢にされちゃうって本気で思った。」
「まあ多少イカつくないと
用心棒出来んからな……」
「でも今思えばカッコよかったな……
あれ仲裁入ってくれたんだよね?
悟が声かけてくれなかったら
2回は殴られてたし
そのあと氷買ってきてくれて
慰めてくれたし……」
「あー……あれ、……ごめん
今やから言うけど殆ど下心……
日和のこと顔可愛いなって思って……
ごめんけど日和がブスやったら
助けてない……」
「うわ……悟らしい……さすがヤリチン……」
「元やもん!
日和と同棲してからは日和だけやし!
日和やって元ビッチやん!
それに俺がダメって言わな
今でも他の人としちゃうやろ!」
「まあ誘われたら……」
「そういうとこやで!日和!
そんなんやから揉めるんや!」