テラーノベル
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貴女が言った。
「ねぇ。これは最初から決まっていたの?」
俺は答えた。
「…いいえ。」
「うそ。最初からこのつもりだったんでしょ」
「――」
「ふふ。なら、泣かないでよ。宗谷くん。」
「うるさいですよ。――沙織さん。」
そう言って俺は拳銃をひいた。
蝉の鳴き声が耳を占拠する。
子供の笑い声が、優しく頭を抱えこんだ。
公園のベンチに座り、目を閉じる。
あの日から拳銃を持てなくなってしまった。
俺は依頼を受け、金を稼ぐ。
依頼費の高い殺しの仕事ができないと、何だかんだで
金がなくなる。
だから今は子供の子守りで金を稼いでいる。
ベンチで座っていると、子供がこっちをみて手を振っている。子供は嫌いじゃない。
だって「あの人」が子供を好いていたから。
「会いたいなぁ。」
俺は一人呟いた。
「――会いたいって。だれに?」
「そりゃあ、沙織さ――」
「へへ。私かぁ。やっぱ宗也くん私のこと大好きじゃん。」
「――沙織さん?」
「なぁによ。お化けでも見たみたい顔して。」
だって。
そう言いかけた時、子供の泣き声がした。
はっ。と見ると転けてしまったよいだ。
「あらら、可哀想に」
沙織さんは子供の方にかけより子供の肩に触れようとした。
でもそれは叶わなかった。
沙織さんは困ったように笑った。
「はは。死んでるんだった。」
宗谷は子供のもとに歩いていった。
「大丈夫か?」
「うん。お兄ちゃん」
子供は笑って答え、友達の方に走っていった。
「へぇ。宗谷くんも優しくできたんだ。」
「ずっとですよ。」
「はは。生意気。」
沙織は笑ってベンチに座った。
「ねぇ。気にならない?私がなんでいるのか。」
「――別に。いつか帰ってくるって予想できましたから。」
「そーなの?殺しておいて?」
「――。」
「ごめんごめん。意地悪のつもりだったんだよぉ。」
「すみませんでした。」
「――いいよぉ。だって依頼でしょ。
まぁ。最初からそのつもりであんな惚れたみたいな顔してたなんて、そこは許せないなぁ。」
「惚れてなんか――」
「そう?私は好きだったよ。」
「――。」
「ねぇ。デートしよう。」
沙織は火照った顔をして宗谷の手を握った。
お願い。
沙織は言った。
宗谷は小言を言いながらも結局その提案を飲んだ。
「で、結局お家デートですか、しかも俺んち。」
「別にいいじゃんか。」
「まぁ。いいですけど。」
宗谷の家にはゆったりとしたソファがあった。
そこに2人は腰を下ろした。
「お菓子でも食べます?」
「ううん。いらない。」
2人は沈黙を重ねた。
「ねぇ。覚えてる?初めてあったとき。」
「あぁ。水族館の。」
「そうそう。イルカショーの時に濡れるからって後ろの席に座ったこと。濡れるからいいんだって私が説得してさあ。」
「懐かしいですね」
「うん。あの日、宗谷くん。私に惚れたみたいな顔してたや。」
「は?そんなわけ、」
「ううん。してた。だって覚えてるもん。」
「そんなに細かく?」
「そうだよ。だって大好きな人との初デート。楽しみだったんだもん。」
また沈黙が続いた。
2人とも頬が少し赤めいている。
「ねぇ。――これは、覚えてる?」
「何ですか?」
「あの日、私を殺した時のこと。」
「――っ。」
2人の間に沈黙が流れた。
「宗谷くん。泣いてたね」
「――。」
「じゃあ。私を撃ったあとは?」
宗谷は記憶を呼び起こした。
いや、呼び起こそうとした。
「――覚えて、ない?」
沙織が宗谷の手を強く握りながら言った。
宗谷は笑った。
「覚えて、ますよ。」
そして涙が頬を濡らした。
「いま、思い出したんです。」
「そっか。」
沈黙が続く。
「沙織さん。俺のこと恨んでますか?」
「恨みたかった。が正解かな。恨めなかったや。
あの顔をみたらね。それに――」
「俺ってほんとバカですね。」
「ううん。あの頃はいまと違って2人とも荒れてたもんね。世界なんてなくなればいいと思ってた。」
「そう、ですね。」
「まぁ。結局。私たちが世界から逃げたけど。」
沙織は嗚咽を涙混じりにこぼす宗谷の肩を抱いた。
――ねぇ。迎えに来たんだよ。
沙織は言った。
――子供って可愛いよね。私達の声だって聞いてくれる。
――はい。俺も好きです。
宗谷が答えた。
――覚えててね。あの日、私達が一緒に死んだこと。
沙織は過去を振り返るように記憶をさかのぼる。
あの日、宗谷が自分を撃ってからした行動。
ごめんなさい。宗谷がそう言って銃を自分の頭に向けたこと。
――ねぇ。依頼してもいい?
――はい。
――これからも心から笑ってくれる?
最初から決まっていたんだろう。
こうなる運命は。
初めてあったあの日、頬を赤らめた2人は。
また手を取り合って困ったように笑いあっている。
明日が来れば、なにか変わっていたのかもしれない。
撃ち抜かれたあの瞬間に思った言葉を、沙織は飲みこんだ。
だって明日は二度と来ないのだから。
それを分かっているから。
コメント
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とーとさん、こんにちは。みぅです🥀 「僕を♡♡♡てください。」読ませていただきました…。 第一話からもう、胸がぎゅっとなる感じがすごくて。沙織さんが幽霊になって戻ってきたのに、子供に触れようとして手がすり抜けるところ、切なすぎました。「死んでるんだった」って笑うところが、もう…。 最後の「明日は二度と来ない」って沙織さんの言葉、すごく重くて、でもだからこそ今この瞬間を大事にしたくなる気持ちが伝わってきました。 続き、すごく気になります。また読ませてくださいね🌙