テラーノベル
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朝――。
まだ陽が差し始めたばかりの時間。
ネグリュシカがゆっくりと目を開けた時、すぐ隣には、すかーと夢魔がぴったりと寄り添っていた。
まるで子どもみたいに、2人ともネグにくっついたまま寝息を立てている。
「……ふふ」
ネグは小さく笑いながら、そのまま布団をそっと抜け出した。
昨日の夜――あれだけ甘えたり、怒ったりしていたのに。
今は、まるで何事もなかったように、すかーも夢魔も甘えた顔で眠っている。
(……もう、しょうがないなぁ)
無視して、キッチンへと向かう。
コップに冷たい水を注いで、静かに喉を潤したあと、ベランダへ出た。
まだ少し肌寒い空気を胸いっぱい吸い込んで――そのまま目を閉じる。
数分ほど、ただ静かに過ごした後、ネグはまた寝室へ戻っていった。
そして――そのまままた、布団へ潜り込んで。
眠りにつく直前、ふと2人が目を覚ましたのがわかった。
「……ネグ、戻ってたんか」
すかーがぼそりと呟き、夢魔もまた、目を細めた。
「ネグ……朝だよ……」
それでもネグは目を閉じたまま、ふと声を震わせるように言った。
「……やだ……も、ちょっと……だけ……」
その小さな声と共に、ネグの細い指がすかーの服をクイッと掴む。
体を小さく丸めて、上目遣いで見上げるその仕草。
「……っ」
すかーも夢魔も、一瞬完全に動きが止まった。
(無理……可愛すぎる……!)
(……こんなん、起こせるわけないやろ……)
けれど、起こさないと――そう思いながらも手が止まったまま。
結局、2人はそっとスマホを取り出して、ネグの寝顔を一枚だけ写真に収めた。
「はぁ……」
深くため息をついてから、ようやく佐藤を起こすことにした。
「ネグ……起きてや」
その時――。
ネグが、急にすかーの手をガブガブと甘噛みし始めた。
「……っ!? え……?」
そのまま指先をべろべろと舐めたり、歯で甘く噛んだり。
夢魔の手にも同じことをし始めた。
2人とも完全に思考停止。
(え……な、何や……?)
(ネグ……え、そんな……)
心臓が爆発しそうになるのを抑えていると――
ネグはふっと噛むのをやめ、ニヤッとした笑顔を浮かべた。
「……おはよ」
そのまま2人から離れて、ゆったりと立ち上がる。
2人は深く、また同時にため息をついた。
「……やばいわ……」
「……ネグ、ほんま可愛すぎる……」
そんな小声で長文の会話が交わされた。
「さっきのは……甘噛みとか……まじで……」
「俺もう無理や……」
――その後、佐藤は仕事へ行く準備を始めた。
「……正直、行きたくない……」
ボソリと漏らした言葉に、夢魔がそっと声をかけた。
「……車で送っていこうか?」
少しだけ迷ったけれど、佐藤はその言葉に甘えることにした。
車の中、2人で少しだけ話をして――。
会社に着くと、夢魔は静かに見送った。
「……行ってらっしゃい」
「……うん」
会社の中で、社長に「あれって彼氏?」と茶化され、
「違うよ」と否定した。
――だが、その後は地獄だった。
仕事、仕事、また仕事。
夜遅くまで、朝の4時まで。
家に帰らず、そのままコンビニでご飯を買い、眠気覚ましを飲み、また仕事へ。
それを3日間繰り返し――。
4日目の夜。
「ごめん、今日も帰れな」
スマホで、夢魔たちにだけ短く連絡を入れた。
そして5日目の朝。
社長が驚いた顔で佐藤に話しかけてきた。
「え、なんで帰ってねぇの!?仕事終わらしてただろ!?なんで!!?」
佐藤は、疲れ切った顔で、弱々しく答えた。
「Aさんと……Bさんの仕事が回ってきて……今で……4日?あれ、違う……5日は帰れてなくて……」
「風呂は!?」
「休憩……時間に……近くの温泉で……2日くらいは……あはは……」
無理して笑う佐藤に、社長も本気で焦り始めた。
「早く帰れ!!」
けれど佐藤は、まだパソコンを閉じようとしない。
「まだ……仕事が……」
「それは君のじゃないだろ!?」
社長はパソコンをバンッと閉めた。
「迎えに来てもらえ!」
そして、佐藤はしぶしぶスマホを取り出し、すかーへ電話した。
「……あ、すかー? ごめんね、朝に……悪いんだけど、迎えに来てくれる……?」
電話口の向こうから、静かに、しかし確実に怒りを孕んだ声が聞こえた。
「……分かった」
そのまま電話は切れた。
佐藤は乾いた笑いを浮かべた。
「あー、出来れば……3日は寝てたい……」
社長は即座に叫んだ。
「寝ろ!!それはもう寝ろ!!」
その後――
黒色の車で迎えに来たすかーに、社長が必死で事情を説明し、謝り倒して、佐藤はすかーと共に家へ。
家に着いた佐藤は、そのまま風呂に入り、綺麗さっぱりしたあと――。
寝室へ入り、鍵をかけた。
ガチャン――。
その音と同時に、すかーと夢魔は寝室の外で立ち尽くすことになる。
ネグは静かに布団へ潜り込み、そのまま深い眠りへと落ちていった。
――誰にも邪魔されないように、ゆっくりと。
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