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すんごいどストライクなやつ作るじゃん() シスターと死神とかくっそいいじゃないか!
水と赤です!
『神の前に死はひざまずく』
静寂の教会に、足音が響いた。
蝋燭の炎が揺れるたび、ステンドグラスに
描かれた天使が、ほんのわずかに泣いているように見える。
黒衣の女が、祭壇の前にひざまずいた。
「……また、あなたですね」
そう言ったのは、この教会のシスター──
ほとけ。
白の修道服に身を包み、揃えた指の間から、十字架のペンダントがのぞいている。
彼女は祈りを止めずに、そっと視線だけを黒衣の女に向けた。
「ごきげんよう、シスター。今日も魂を一つ、頂きに参りました」
死神・りうらは、わずかに微笑んだ。
長い赤髪は夜の帳のようで、まばたきする 間に影となって消えそうだった。
しかし彼女は、確かにそこにいる。静かに、けれど否応なく、「死」の名を背負って。
「今日、連れて行くのは?」
「鐘を三つ、鳴らす頃……あなたの隣室にいる老婦人。肺が、もう限界です」
ほとけは祈る手を解いた。
そして、深いため息をつく。
「……あの方は毎日、私に『もう神様が迎えに来てくれてもいい』って、笑って言うんです」
「そう。なら、安らかに連れていきます」
りうらは立ち上がった。
その動きはまるで、礼拝堂に差し込む夜の影のようで、静かで、どこまでも穏やかだった。
「……ずっと疑問だったんです」
「ん?」
「どうして、あなたは……そんなに優しく“死”を運ぶんですか?」
りうらは答えなかった。
ただ、片目だけを伏せて、どこか寂しげに笑った。
「あなたが……神の使いでも悪魔でもないのなら。私、あなたのことを……知りたい」
「……シスター」
死神は静かに歩み寄り、彼女の手を取った。
その手は、冷たいのに、痛くはなかった。
むしろ、どこか懐かしいぬくもりがした。
「もし……私が、昔は人間だったとしたら? もし私が、この教会で死んだ女だとしたら?」
「──え?」
「そして、あなたに祈られて、導かれて、成仏せずに……“死を運ぶ者”に成ったとしたら?」
ほとけは、ことばを失った。
そんなこと、考えたこともなかった。
だが──ふと思い返す。
りうらが初めて教会に現れたとき、「久しぶり」と言ったこと。
祭壇の前で、一人きりで微笑んでいたこと。
亡くなる人たちに、花の名前で語りかけていたこと。
「あなただったんですか……?」
りうらは首を横に振った。
「記憶はない。ただ、あなたの祈りの声だけが……この身に残ってた。それが、私が“あなたに仕える”理由」
静かに、祭壇の鐘が鳴った。
──一つ。
「だから……私はあなたに従う」
──二つ。
「あなたが『死を止めろ』と願えば、私が運ぶ命も止まるでしょう。
でも……あなたが涙を流せば、私はそれを拭う。
あなたが誰かのために祈るなら、私は“その先”へ連れていく」
──三つ。
老婦人の命が尽きたのだ。
静かに、風が吹くように、魂の気配が消えてゆく。
「あなたは、神に仕える者。私は、あなたに仕える死神。
この関係は……罪ですか?」
ほとけは、りうらの手を握り返した。
「神は愛を禁じていません。禁じているのは、“嘘のない心”を否定することです」
「それは……」
「私があなたを愛することは、罪じゃない。私があなたに仕えられて、胸が苦しいのは……私があなたを、同じように愛してしまったからです」
死神は、わずかに目を見開いた。
次の瞬間、彼女は胸にすがるシスターを、そっと抱きしめていた。
この体は冷たい。
けれど、彼女の心は、初めて火が灯ったようだった。
「あなたが祈りの声をくれたから、私は死神になれた。
けれど、あなたが愛をくれたから、私は──人になれた気がする」
「じゃあ……これからは、一緒に、祈ってくれますか?」
「ええ。魂のために、あなたのために……」
死神とシスターが、寄り添って祈る。
白と黒の衣が、ゆるやかに重なり合う。
やがてまた、死神は命を連れ去るだろう。
しかしその手には、もう祈りが宿ってい る。
“あなた”のために死を運ぶ。
それが、彼女にとって──唯一、神に許された愛のかたちだった。
よくわかんない話ですね…
続きは明日投稿します!