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好奇心だったとはいえ、怖がらせたのは申し訳なかった、と思う。
枕と布団をセカイに持ってきて、相当一人で眠るのが怖いことが分かった。私じゃなくても、セカイにいる住人がいるじゃないか、と思ったりもしたけど、理由が思い至って、落ち着いた。事情を知っているのは私だけ、理由が分かると、高まっていた気持ちが戻ったのを感じた。
もう朝だ。気持ちよさそうに眠る絵名の前髪を分けてみる。苦しそうでなくてよかった。昨日の夜はとても強張った表情で、眉に力を入れて寝ていたから、ちゃんと寝れているのか不安だった。
「ん……? あれ、ああ、」
起こしてしまったか、絵名はうっすらと目を開けて私の姿を確認した。でもまだ眠いのだろう、目を閉じた。眩しいのか、手を繋いでいない左腕で目元を隠した。
「まだ寝る? 朝ご飯を食べなきゃいけないから、私はもう少しでセカイから出ていくけど」
「んー……それは、やだ」
「お母さんに心配されちゃうから」
「んぅ……」
右手がピクリと動いて、それから絵名は体を起こした。それから数秒右手を凝視していたが、何も言わなかった。
「ねむい……」
「絵名にとっては早い朝だもんね。夜も寝付き悪かったし」
「でも、なんか寝たらスッキリしたかも」
「女の子の幽霊だっけ」
「……ちょっと、思い出させないでよ」
「眠気が覚めるように?」
「忘れかけてたし、一人でも二度寝できそうだったのに……」
ぶつぶつと口を尖らせて文句を言う絵名。どうして私は思い出させるような事を言ったのか。
ああ、そうだ、
「でも、また、夜一緒に寝る、から……?」
「……いいの? 流石にもう怖がってないだろうけど、一応言葉に甘えとく」
「う、ん……」
多分、最初から寝るつもりだったのは、私だけ。
少しずる賢い方法で約束を取り付けてしまったのかもしれない。絵名と一緒に居れること。それは、私にとって嬉しいことなんだろうか。少しあたたかいこの気持ちを、大切にしたいと思った。