キャラ設定
藤澤涼架 (女) 美術部に所属する高校二年生
若井滉斗 (男) 軽音部に所属する高校二年生
プロローグ
若井side
その年の夏は、始まりも終わりも、いつもより少しだけ静かだった。
アスファルトの照り返しが、校舎の壁を揺らめかせる。
熱気に満ちたグランドの騒音から離れ、俺はいつものように人目のない屋上へと向かった。
錆びついた扉を押し開けると、微かに風が肌を撫でる。
コンクリートの片隅に座り、お気に入りのギターを抱え、弦を弾く。
誰に聞かせるでもない、ただ自分の中にある感情を音に変えるための時間。
ドクドクと高鳴る心臓の音を、ギターの弦に乗せてかき消そうとする。俺という人間は、いつもこうだ。強い狼のように振る舞いたいのに、その自信はいつも見当たらない。
そんな俺の静かな世界に、ある日、一人の少女が現れた。
彼女は、いつも美術室の窓から見える景色を、スケッチブックに切り取っていた。
時折、俺のいる屋上を遠くから見つめていることに俺は気づいていた。
彼女はまるで「白熊」のように涼しげで、その表情は読めない。でも、その視線の奥には確かな熱意が宿っていることを俺は知っていた。
夏休み前最後の授業が終わり、俺は誰にも見つからないように、屋上へと続く階段を上っていた。その時、ふと、柔らかな声が聞こえた。
「…貴方って人はどんな人?」
俺は足を止め、振り返った。そこにはスケッチブックを抱え、少しだけ俯きながら佇む彼女がいた。
彼女の頬は、夏の夕焼けのように、ほんのり赤く染まっている。
「そんなふうに聞けたらな」
彼女の言葉は、まるで詩のようだった。そしてその瞬間、俺の中で何かぎ動き出した。
夏は、新しい時代への入り口。
この日から、俺と言う「狼」は、涼架という「白熊」に恋をしていたのかもしれない。
俺の恋は、始まりを告げようとしていた。
次回予告
[白熊と狼の出会い]
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コメント
4件
ロマンチシズム〜!?おいおいおい!!天才じゃん!新作楽しみにしてます!
やば、新作楽しみにしてますっ!!