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突如として飛び出してきた人。
それはノアに飛びかかり、彼を押し倒した。
2人とも驚きを隠せず、唖然とする。
しかしその女の子はそんなこと気にしていないようだった。
ただただ、泣きわめき、怒り、叫んだ。
そしてその手にはーー
一本のナイフが握られていた。
ナイフを振りかざす。
「お前のせいだ……お前のせいだ!一生許さないって決めたんだ!私の大切な人を返せ!」
「ノア・カーター!」
ノア・カーター、それはノアのフルネームだ。
彼女の声は震えつつも、これ以上ないほどに感情がこもっていた。怒りに任せて泣き叫ぶ。
そこでやっと気づいた。自分は殺されそうになっているのだと。
普通ナイフを見た時点で気づくと思うが、彼はそれよりも乱入者と押し倒されたとことと、目の前で泣き叫ぶ子と……とで情報量がいっぱいだったのだ。
気づいたノアは瞬時にその手を払い除け、彼女を蹴り飛ばした。
その頃、神達の玉座でも混乱が起こっていた。
いや、混乱と言っても数秒だ、すぐに彼女の担当神であるアテナが、彼女を舞台から引きずり下ろしに行った。
本当に少しの出来事ではあったが、彼女が建物の内部へと消えていったあとも2人は放心状態だった。
「なあ、あいつ、お前の知り合いなのか?」
ルカは尋ねた。今1番こんがらがっているのはルカだろう。
急に乱入してきた子が対戦相手を殺そうそして、訳の分からないまま元の場所に連れて行かれたのだ。
「いや、初対面だけど…… 」
ノアは答える。
彼もかなり驚いている。知らない人が急に自分を押し倒し、殺そうとしてきたんだ。
数十秒、沈黙が続いた。
しかしながら、流石選ばれたものたちだ。
その数十秒で落ち着きを取り戻し、また両者構え直す。
鐘はもう鳴らない。
だが、戦いは再開された。
ノアが先に動いた。
引き金が引かれ、いくつもの乾いた音が連続して空間を裂く。
ルカは柱の影へと滑り込み、床を蹴って角度を変える。
一直線の攻撃に留まらないよう、常に位置をずらしながら距離を詰めていく。
(近づけば勝てる……)
その確信だけが、彼の思考を支配している。
一方ノアは、追い詰められているはずなのに、呼吸が乱れない。
むしろ頬がわずかに紅潮し、目だけが異様な輝きを放っていた。
(来る……来る……!)
その瞬間を、心の底から待ち望んでいた。
ルカが物陰から飛び出し、 一気に間合いを詰め、死角へ回り込む。
ノアは反射的に銃口を振るが、間に合わない。
距離が、もう“逃げられる範囲”ではなかった。
重い衝撃音が鳴り響く。
床に転がるノア。
銃が弾き飛ばされる。
ルカは立ち上がろうとするノアの前に立ち、腹部に足を乗せる。
しかしノアは、恐怖の代わりに、ゆっくりと笑った。
やはり気味が悪い
「お前わかってるのか?今から殺されるんだぞ、
もう勝ち目は無いんだ」
「分かってるよ、けど、殺し合いってものが楽しくてさーー」
もう精神が逝ってしまっている。
ルカは最後に話させてやろうと思ったが、無意味だと判断したようだ。
愛用ナイフを取り出し、ノアの心臓部に向けて一気に振りかざす。
そのとき、ノアは走馬灯のようなものを見た。
家族と過ごした、楽しかった日々。
動物たちと暮らしたのどかな日々。
しかしその中には覚えの無い記憶があった。
夜中に研究所に侵入して、フラスコ内の液体を混ぜたり、捨てたりする記憶。
母に対して
「他の人はのうのうと生きている。」
「その幸せを奪っちゃおうよ」
「これを飲めば楽になれるよ」
そんな言葉を告げる記憶。
父の飛行機の操縦席のパーツを何ヶ所か緩めたり、取ったりする記憶。
(そうだ、思い出した。)
「呪いを起こしたのは、家族や人を殺したのは…… 」
「俺だった」
そこで、ノアの記憶は途絶えた