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コメント
1件
みんなが優しいくていいメンバーだね(´ω`*)
玄関の扉がひまなつによって開かれた瞬間、家の中から飛び出すように小さな影が駆け寄ってきた。
「みこちゃあああああ……っ!!」
泣き腫らした目で、すちはみことの名を呼びながら一直線に走る。その声は掠れ、泣きすぎでしゃくり上げていた。
みことは背負っていたいるまの肩を軽く叩き、弱々しく頼む。
「……ちょっと、おろして……」
いるまはため息をつきながらもしゃがみ込み、慎重にみことの体を床に降ろした。
足元はふらつき、支えがなければ倒れそうなほど。
それでも、みことは両腕をすちに広げて迎えた。
すちは勢いよく飛び込み、みことの胸に顔を埋めて泣きじゃくる。
「みこちゃ……いなかった……どこにも……っ、どこにもいなくて……っ」
震える小さな背中を、みことは力なくも優しく包み込む。
「……ごめんね。不安にさせて、ごめん……」
耳元で落とす囁きは掠れていて、熱のある息がすちの髪に触れる。
しばらく泣いていたすちだったが、ふとみことの身体の熱に気づき、顔を上げた。
涙で濡れた睫毛を震わせ、みことの額にそっと小さな手を伸ばす。
「……みこちゃ、まだあつい……。まだ、つらいの……?」
純粋な心配がそのまま滲み出た声。
みことはほんの小さく微笑む。
「だいじょうぶだよ……すちがいてくれたから……」
だが、その微笑みに隠された“無理してる顔”を、すちは小さくなっても見逃さなかった。
眉を下げ、唇をぎゅっと結び、涙目のまま首を横に振る。
「……だめ。ちゃんとねなきゃ……。ねないと、みこちゃ、だめ……」
みことは弱りながらも笑って、すちの頬を撫でた。耳元でぼそりと呟く。
「……元気になって…すちも戻ったら……いっぱい……てね……」
すちはその言葉に一瞬ぽかんとし、 次の瞬間、耳を真っ赤にして視線をそらした。
「……ん……。だから、なおして……みこちゃ……」
いるまが再びみことを背負い、寝室まで運ぶ。
布団にそっと寝かせると、みことはすちの方を名残惜しそうに見たが、すちはひまなつとこさめに抱えられながら小さく手を振る。
ひまなつが声をかける。
「すち、しっかり寝とけばみことは治るから」
こさめも優しく頭を撫でる。
「ずっと起きて泣いてたもんね……すちくん、えらかったよ」
すちは涙目のまま、ぎゅっと二人の服を掴んだ。
「……ひまちゃ、こさめちゃ……ごめんね……。こまらせて……」
ひまなつは苦笑して抱きしめ返す。
「困ってないよ。すちは、みことのこと大好きだから心配なんだよな? 大丈夫」
こさめも頷き、幼いすちを優しく撫で続けた。
その夜から、すちは寂しくて涙ぐむことはあっても、もう大泣きすることはなかった。
ただ一つ、みことが元気に笑ってくれるその日を、 誰よりも純粋に願いながら。