ここがどこだか分からない。いつの間にかここに居て、歩いていた。
日が昇る前だろうか薄暗くてよく見えないが、山か丘らしい。夏にしては寒く、秋にしては植物が茂りすぎている。
思えば、自分は誰であろうか。今まで何をしていたのだろうか。何も思い出せない。
ふと、足元に視線を落とすと、白いモノが落ちている。気になり目を凝らしてみるとそれは蛾であった。浅葱色の細い触覚の白くて綺麗な蛾。だが、それは死んでいた。周りを見てみると大量にこの綺麗な蛾の死体が落ちている。
そのまま横に視線を移すとフェンスがあった。そのフェンスにもまた蛾の死体が大量に引っかかっている。こちらの死体は焦げていた。フェンスには看板が取り付けられていて、「触れると電流が流れる」といった旨の内容が書かれていた。つまりはそういうことなのだろう。
瞼を開けると、見慣れた天井が広がっていた。
後でスマホを確認すると、3月20日。夏でも秋でも無かったのは言うまでもない。
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