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第28話「返して」
路地裏。
静かな夜。
街の喧騒が遠くに聞こえる。
だが、この場所だけ空気が重い。
駆人の手はまだ男の首元を掴んでいる。
駆人「……」
ゆっくりと視線を莉々に向ける。
その目。
昔と同じ顔。
でも、感情は違う。
冷たい。
駆人「久しぶり」
莉々は静かに答える。
莉々「……手を離して」
駆人は少し考えるように首を傾ける。
そして。
男を突き放した。
男「っ……!」
壁に寄りかかりながら咳き込む。
駆人「大丈夫ですよ」
冷たい声。
駆人「殺す気はないので」
男は莉々を見る。
莉々「……ごめん、なさい」
男は首を振る。
そして、距離を取る。
駆人はそれを横目で見る。
駆人「優しい人だね」
莉々は答えない。
ただ、駆人を見ている。
駆人「元気そうでよかった」
莉々「……」
駆人「ちゃんと生きてる」
莉々「駆人」
駆人「ん?」
莉々の声は低い。
莉々「どうしてここにいるの」
駆人は笑う。
小さく。
そして言う。
駆人「会いに来た」
莉々「……」
駆人「お兄ちゃんの仇に」
沈黙。
風が吹く。
莉々「……」
駆人を見る。
その姿。
昔より少し背が伸びている。
でも。
顔はまだ子供。
莉々「ねぇ……」
言葉がつまる。
駆人「僕、ずっと探してた」
莉々の胸が少し痛む。
駆人「研究所」
その言葉。
空気が変わる。
駆人「全部なくなってた」
駆人「みんな死んでた」
駆人「仲の良かった子も、ぜーんぶ」
駆人の声は淡々としている。
感情がない。
駆人「でも」
ゆっくり歩く。
莉々に近づく。
駆人「お姉ちゃんは生きてた」
数歩の距離。
駆人「よかった」
莉々「……」
駆人の顔。
笑っている。
でも。
目は笑っていない。
駆人「ねえ」
静かな声。
駆人「一つ聞いていい?」
莉々「……何」
駆人の表情が消える。
駆人「どうして」
一歩近づく。
駆人「お兄ちゃんを殺したの」
空気が止まる。
男が息を呑む。
莉々は動かない。
駆人「覚えてるよ」
声が少し震える。
駆人「全部」
駆人の頭の中。
あの日の記憶。
炎。
警報。
血。
そして。
倒れている兄。
駆人「お兄ちゃん」
「優しかった」
「ずっと僕を守ってくれた」
拳が震える。
駆人「なのに」
顔を上げる。
目が赤い。泣きそうな顔。
駆人「お姉ちゃんが殺した」
莉々の胸が締め付けられる。
莉々「……」
駆人「返して」
小さな声。
駆人「お兄ちゃん」
駆人「返してよ」
その言葉。
子供の声だった。
怒りでも憎しみでもない。
ただ。
悲しい声。
莉々の目が揺れる。
莉々「……駆人」
駆人「何」
莉々「本当に」
駆人の眉が動く。
莉々「ごめん」
沈黙。
駆人「……」
駆人「本当に思ってる?」
莉々「本当」
駆人の目が鋭くなる。
駆人「僕、見た」
莉々「違う」
駆人「見たんだ!」
声が路地に響く。
男が驚く。
駆人の呼吸が荒くなる。
駆人「お姉ちゃんが」
駆人「ナイフを」
駆人「お兄ちゃんに――」
言葉が止まる。
駆人の目に涙が溜まる。
駆人「……刺した」
静寂。
莉々はゆっくり言う。
莉々「……そう、だ」
駆人の拳が震える。
駆人「じゃあ!」
莉々「でも」
駆人の声が止まる。
莉々「殺したよ海斗を私は!」
「でも、私じゃない、の」
その言葉。
駆人の顔が固まる。
駆人「……え?嘘つくな」
莉々は静かに続ける。
莉々「あなたは途中からしか見てない」
駆人「……」
莉々「真実は」
その時。
背後から声。
「その通りだ」
全員が振り向く。
路地の入口。
そこに立っていたのは――
白衣の男。
男は微笑む。
「本当のことを教えてあげよう」
莉々の目が大きく開く。
莉々「……生きてたの、ですね」
白衣の男が笑う。
「久しぶりだね」
そして言う。
「被験体No.027」
空気が凍る。
莉々の声が低くなる。
莉々「……博士」
見てくれてありがとう!
嬉しいよ✨
関係ないけどエイプリルフールの番外編でも作ろうかな過ぎちゃうけどね
コメント
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今回も神作でした!続き待ってます!