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彼は心を探していた。
あてなど無く、ただふらふらと歩く。
飢えた獣は早急に他者を喰らわねば死に場所すらも選べない。
彼もいつ倒れるか分からない。
彼自身、もうどれだけ歩いたのか分からない。
ズキズキと痛む左脚を引きずって、
とても不安定な歩き方をしている。
無謀だ。
実に愚かだと思ってしまう。
心など有りはしない。
神話や宗教と同じ、紙芝居や本で語られる様な実にくだらない妄想だ。
反吐が出る。
さっさと諦めてしまえばいいものを、馬鹿の考える事は理解出来ない。
ふと思ってしまうんだ。
何故生きているのだろうか…と。
自分は何故生まれたんだ?
それに意味はあるのか?
そもそも自分とはなんなんだ?
これは本当に現実なのか?
そもそも現実や非現実の違いとは?
これは悪い夢なのか?
それとも誰かが作った物語なのか?
俺は生きているのか?
それとも死んでいるのか?
この巨大な宇宙は誰かの脳細胞で、我々は細胞を形成する物質の一部分に過ぎず、そしてその誰かも同じ巨大な脳細胞の中の物質の一部として生きていて、それが無限に繰り返されている様な。
そもそもこれが現実じゃないとしたなら我々は一体何者なのか。
世界は循環し続ける、まるで季節の様に何度も同じ事が繰り返されていく。
そんな事などつゆ知らず、我々は増えては減ってを繰り返させられている。
おかしい。
今日までは普通に生きていた筈なのに…
まるで翼の動かし方を忘れた鳥の様に、哀れで無様なものだった。
呼吸の仕方が分からなくなる。
いつの間にか自分の身体じゃ無いような感覚に陥っている。
私はどうやって身体を動かしていたのだろう…
思い出せない。
最初から何も覚えていないみたいな、空っぽの脳みそがそこにある。
かち割った。
無心で、ただひたすらに。
血塗れの両手で、彼の顔を見て言った。
もう要らない。