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探偵ランピー 第二話「兄弟殺人事件」
ある朝、森の静けさを破るように、ひどく耳障りな悲鳴が響き渡った。
「ぎゃああああ!!」
声の主はシフティだった。彼の足元には、動かぬ双子の兄リフティの姿があった。
胸には鋭い刃物が突き立てられ、返り血が辺りの木の葉を赤く染めている。
フレイキーは背筋を凍らせ、震える声で叫んだ。
「し、死んでる……リフティが……!」
シフティは血まみれの兄を見下ろしながら、ポケットから飴玉を取り出して口に放り込み、肩をすくめた。
「……はっ!これは、解決できねえじけんだな!」
その顔には涙も怒りもなく、ただ退屈そうな笑みだけが浮かんでいた。
◆探偵ランピー登場
事件現場に駆けつけたのは探偵ランピーと助手フレイキーだった。
ランピーは頭に大きな虫眼鏡をひっかけ、首にはよれたマフラーを巻いている。
「ふむふむ……また血なまぐさい事件か。私の天才的な推理の出番だな!」
と、いつもの調子で鼻を鳴らすランピー。
だがフレイキーは目を丸くした。
「ら、ランピー……!シフティが……シフティが兄を殺したんじゃ……」
シフティは笑い飛ばした。
「へっ、俺はやってねぇよ。兄貴と俺は確かにいがみ合うこともあったけどな……。けどわざわざ血塗れのナイフを突き刺すほどじゃねえ」
ランピーはシフティの態度に違和感を覚えた。普通なら双子の兄を殺されて動揺するはずだ。だが彼は無関心を装い、逆に自分が疑われることさえ楽しんでいるように見える。
「ふむ……。君は犯人じゃない。だが何か隠しているな?」
ランピーの目が光った。
◆調査開始
事件現場を調べると、リフティのポケットから古びた紙切れが見つかった。
そこには、汚い字でこう書かれていた。
> 「おまえの裏切りを知っている。夜の倉庫で落とし前をつけろ。」
フレイキーが声を震わせる。
「う、裏切り……?もしかして、盗みの仲間同士のトラブル……?」
シフティは舌打ちした。
「……ちっ、やっぱ見つかったか。兄貴は最近、仲間を裏切って、盗んだ宝石を独り占めしようとしてたんだ。俺は止めたんだぜ?でも聞きやしねぇ」
ランピーは鼻を鳴らし、地面に残る泥の足跡を指差した。
「シフティ、お前の靴のサイズとは違うな。この足跡はもっと大きい。つまり、第三者がここにいた」
シフティは笑いながら両手を広げた。
「ほらな!だから言ったろ、俺じゃねぇ!」
◆真犯人を追え
ランピーとフレイキーは足跡をたどり、森の奥にある古びた倉庫へと向かった。
そこにはドロッとした血痕と、落ちていた黒いマスク。
フレイキーは青ざめる。
「ま、まさか……プロの殺し屋……?」
だがランピーは首を振った。
「いや、この縫い目……見覚えがあるぞ」
倉庫の裏から聞こえる物音。ランピーが飛び込むと、そこにいたのは──モールだった。
モールは血まみれのシャベルを握りしめ、顔をひきつらせている。
「ち、違うんだ!俺はリフティに脅されて……宝石を取り返そうとしただけなんだ!でもあいつが抵抗するから……つい……」
フレイキーは震えながら後ずさった。
「や、やっぱり……!」
ランピーは落ち着いた声で言った。
「つまり真犯人はお前、モール……。だがリフティを殺したのは正当防衛を装ったただの強欲。彼の裏切りに怒ったとはいえ、やり方を誤ったな」
モールは叫び、倉庫から逃げ出そうとした。
だがその前にシフティが現れ、素早くナイフを突きつける。
「俺の兄貴を殺した借りは、タダじゃ返さねぇぞ」
ランピーが止めに入った。
「待て!シフティ。復讐は新たな血を呼ぶだけだ。兄の死を無駄にするな!」
◆事件解決
最終的にモールはランピーの手によって捕まり、森の住人たちに突き出された。
シフティは最後まで無表情を装っていたが、夜の焚き火の前で、ぽつりと呟いた。
「兄貴はクズだったけど……双子の片割れが消えるってのは、やっぱ……空っぽになるな」
フレイキーは驚いて目を見開いた。
シフティの声は、初めて本音を漏らしたように震えていた。
ランピーは静かに笑い、帽子を深くかぶった。
「ふむ。どんなに悪党でも、兄弟の絆は消えないものだな」
夜の森に火の粉が舞い、冷たい風が吹き抜ける。
こうして「兄弟殺人事件」は探偵ランピーの推理により解決を迎えたのだった。