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深夜1時。部屋の中にはパソコンのファンの音だけが静かに回っていた。
配信を終えたばかりの
おんりーは、椅子の背もたれに体を預けて大きく息を吐く。
「……つかれたぁ」
モニターには配信終了の画面。
チャット欄にはまだコメントが流れていた。
「今日もありがとー」
「おんりーさん最高!」
「ぼんさんとのコラボ神だった」
その文字を見て、おんりーは少しだけ笑う。
今日の配信は
ぼんさんとのコラボだった。
昔から一緒に活動している仲間。
安心感のある声。
ちょっと雑で、でも妙に優しい人。
だけど。
「……ほんと、なんであんな余裕そうなんだよ」
おんりーは小さく呟く。
ぼんさんは配信中、いつも通りだった。
軽く笑って
冗談を言って
おんりーをからかって
『おいおい、そんなミスすんのかよ、おんりー』
その声が、ヘッドホン越しに耳の奥まで残っている。
おんりーは机に突っ伏した。
「……心臓に悪いんだって」
ぽつりと漏れる言葉。
本人には絶対言えない。
だって。
おんりーは、
ぼんさんのことが好きだった。
かなり前から。
気づいたのはいつだったか。
コラボの回数が増えた頃か。
声を聞くだけで安心するようになった頃か。
もう覚えていない。
ただ一つ確かなのは、
ぼんさんは絶対に気づいていない。
そして――
気づかれたくもない。
そのとき。
ピコン
Discordの通知音が鳴った。
画面を見る。
送り主の名前。
ぼんさん
「……え」
おんりーの心臓が跳ねた。
メッセージを開く。
ぼんさん
「今日の配信おつかれ」
短い一文。
それだけなのに。
おんりーの顔が一瞬で赤くなる。
「……お、おつかれって…」
キーボードに手を置く。
返信しなきゃ。
普通に。
普通に。
震える指で打つ。
おんりー
「おつかれさまです!」
送信。
数秒後。
また通知。
ぼんさん
「通話できる?」
「…………は?」
完全に固まるおんりー。
心臓の音がやばい。
「な、なんで通話!?!?」
頭の中がぐるぐるする。
深夜。
二人きり。
通話。
「いやいやいやいや無理無理」
でも断る理由もない。
おんりーは数秒悩み、
震える手で
通話ボタンを押した。
すぐに繋がる。
「もしもし」
低い声。
ヘッドホンから流れる声。
ぼんさんだ。
おんりーは一瞬言葉を失う。
「……おんりー?」
「あ、はい!!」
声が裏返った。
ぼんさんが笑う。
「なんだよその声」
「いや別に普通です!」
「普通じゃねえだろ」
くすっと小さな笑い。
その声が優しくて、
おんりーの胸が苦しくなる。
数秒の沈黙。
そして、ぼんさんが言った。
「今日さ」
「はい」
「配信、めっちゃ楽しそうだったな」
「え?」
思わず聞き返す。
「いや、なんかさ」
ぼんさんの声が少しだけ柔らぐ。
「おんりー、最近よく笑うなって」
おんりーは固まった。
そんなの。
そんなこと。
言われると思ってなかった。
「……ぼんさんとやると楽しいからです」
気づけば口から出ていた。
沈黙。
しまったと思った。
やばい。
言いすぎた。
けど。
ヘッドホンの向こうで、
ぼんさんが小さく笑った。
「俺も」
「……え」
「おんりーとやると楽しい」
その一言で、
おんりーの思考が完全に止まった。
「……だからさ」
ぼんさんが続ける。
「今度、配信じゃなくてさ」
一瞬の間。
「二人で遊ぶか」
おんりーの心臓が
とんでもない音を立てた。