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長すぎるからあげるの辞めようと思ってたやつ
これもとりあえずあげとく精神であげときます
注意↓
・3000文字くらいある
・腐を含む(医者組です)
・死ネタ
・えすけーぷを元にした主の妄想
・全員の名前変わってる
・性格も変わってる人がいる
・つまりなんでも許せる人向け
はじまります
僕はとある病院で働くヤブ医者だ。
僕たちはこの計画が一通り終わった時、つまり、次の人間の四人組を使った実験が終わった時、得た金は二人で山分けしようと約束した。
ただ、彼がなぜ僕を相方に選んだのか、なぜ共にこの計画を進めることを誘ったのか。
それが僕には分からないのが怖い。
彼には僕は必要ない。
彼は僕以上、いや、誰よりも頭が良かった。
僕なんていらないはずなのに。
理由は分からないまま、今日も彼を養いながら、偽りの職務をこなす。
「点呼終わってきたよ〜、睦月」
「…お疲れ様、桐弥」
そう言って、そっと白いプレートにのったオムレツとサラダ、パンを差し出すのは、この病院の医者、睦月。
サイズの合わない白衣だが、本人は気にしてる様子などなかった。
その長い袖で、水の入ったコップを押し出すと桐弥と呼ばれるもう一人の医師を向かいに机を挟んで座った。
睦月の目の前にも桐弥と同じメニューが並んでいる。
これは、患者達も受付も知らない二人だけの部屋での朝食の様子である。
「オムレツ!俺睦月のオムレツ大好きなんだよね〜」
「…そっか、よかったね」
そう言って、もう既に桐弥皿からは半分ほど無くなっている。
桐弥とは反対に冷たそうに返事を返す睦月だが、その顔には笑顔が浮かんでいて、決して桐弥を傷つけようと無愛想に接している訳ではないのだ。
「うまっ、これ何入れてるの?」
「うーん…愛情…かな」
「あははっ、何言ってんの、睦月ったら」
そんな他愛もない会話をしながらも、今日の患者たちの様子をカルテにまとめる。
しっかりと医師としての仕事はこなすのだ。
「No.1、今日は…?」
「やっぱり、状態が一番いい。かなり頭がワいている」
「うん…順調…」
「でもNo.2がな…」
「…やっぱりウイルスが回りにくいの…?」
「そうだな、脳の問題だろうな」
「…そっか…」
そういって、四人の患者を一人一人確認していく。
それぞれの患者の分析をこなす桐弥は“本当の医者”にも負けない頭脳を持っていた。
「No.3…は?」
「まだ、もう少しだな。元がしっかりしてるから遅いのは承知」
「…No.4」
「よく分からない…なかなか喋ってるところを見ないし、話しても何を言ってるか分からん」
「…そっか、もしかしたらウイルスが変に回ったかな…」
睦月はボードとペンのぶつかる音を静かに聞いていた。
最近実験のためにこの病院に連れてきた患者はなかなかしぶとかった。
ウイルスが回らない患者が何人かいた。
でもこれが終わったら、膨大なパンデミックを起こして、薬を売り捌く。
それで大金持ちになる予定だ。
それまではあと少し頑張らなければならない。
そのあとは二人で何か実験をしたり、出張と偽って日常品を買いに街へ出かけたりいつも通りの日常を過ごした。
それと同様、患者たちもいつも通りここの謎を解いていることを知らないまま…。
「みんな、夜ご飯だよ」
そう言って進むのは、夜六時頃の病室の並ぶ棟の廊下。
睦月も桐弥も患者達にパンを配って歩いた。
「ありがと〜、お医者さん!」
「ちゃんと食べて寝てくださいね、赤布さん」
赤布と呼ばれたのは実験体No.1。
確かに、桐弥の言う通り、年齢に対しての行動が段々と幼稚になっているような気がする。
これは、ウイルスが順調に回っている証拠だった。
他の三人はまだ赤布ほどではなかったが、No.3の青井が少し幻覚症状があるくらいだった。
「緑鮭さん…夕食です」
一方睦月はNo.2の緑鮭の元へパンを届けていた。緑鮭はたまに医者たちにも話かけてくれる、医師たちにとっては情報源のような患者だった。
ただ、ウイルスが回りづらいのか、意識も記憶もしっかりしている。
まだ完全に感染させるのは難しそうだ。
そこで今日もいつものように睦月に話しかける。
「なぁ、白中先生はいつからここで医者やってんだ?」
「…なんで聞くの?」
「いや、ダメだったらいいんだけど」
「…一年位前、桐弥と一緒にここに来た」
とだけ伝える。ここに来た、とだけ。
嘘はつかない。
「やっぱ仲いいんだな、神黄先生と」
何気ない緑鮭の言葉を聞いた。
仲がいい。考えたこともなかった。
睦月は桐弥の駒にすぎない。そんなことも考えていた。
双六でもチェスでもプレイヤーが駒と仲良くする、そんなことなんてあるはずがない。
そうか、仲がいいんだ。僕たちは。
だから、相方に選んだ?
…違う。まだ何か足りない。
それでも、彼への恐怖心は薄まった。
その後桐弥は、二階のNo.3の青井の元に行ったが、幻覚症状のせいであまり体調が良くなさそうだった。
「…先生…やっぱ目がおかしい…というか…」
「う〜ん、順調ですね」
「それ、白中先生にも言われた…本当ですか?」
そう疑われようと、桐弥は嘘はついていない。
本当に順調なのである。
決して、患者に怪しまれてはならない。
もう手遅れだとしても。
そんなことがあったあの日を思い出していた。
今、屋上で大きな音がした。そこでやっと気づいたのだ。
四人は助けを呼んだのだと。
もう、見つかるのも時間の問題だろう。
四人の患者はきっとここから逃げ出す。
しかも、治療薬を摂取して。
ならば、医師たちはどうなる?四人に通報されて終わり。
この計画全てが台無しだ。
「それならば、死んだ方がまし」
「僕も…同じ」
最悪という事態を例えで表したつもりなのだが、睦月は真剣にその言葉を受け止めているようだった。
今駆けつけた屋上は誰もいない。
あいつらはきっと治療薬を完成させに行った。
ここで睦月と一緒に死んだら?そう想像する。
なかなか悪い気はしない。
だって俺は…
睦月のことが好きだから。
なんなら本望のようにも感じた。
「なあ、睦月、ほんとに死んでもいいと思ってる?」
「…うん、この計画が終わるってことは、桐弥にとって僕は必要じゃないでしょ…?」
「…え?」
そこではじめて、睦月は「自分は桐弥の駒である」と認識していることに勘づいた。
睦月のあの態度。
いつも何か考え事をするような仕草。
全てに合点がいく。
でも実際、俺は、睦月を…。
睦月を相方に選んだ理由は…。
「だから…もう生きる意味…」
「あるよ、睦月」
睦月を遮るように言った。
そうすると、愛おしいその目を見開いて見つめてくる。
「睦月は、俺のために生きてるんじゃないから」
「…そう…なの…?」
「そうなのって…そうでしょ、まぁ…俺のために生きたいなら否定はしないけど…」
そこまで言うと、睦月は何かを思いついたように笑った。
その笑顔が、月明かりに照らされて余計に美しく見える。
「…でも、僕桐弥のために生きて苦しくなかった」
「僕、桐弥のために生きてよかった」
睦月はそう言った。
そして俺は、こう言った。
「…睦月」
「好きだよ」
「…?僕も、好き…だよ?」
睦月はよくわからないような顔をしつつも、正直な気持ちを伝えた。
でも、睦月の思う気持ちと桐弥の思う好きは少し違う。
そこで、桐弥は睦月の手を思いっきり引いた。
フェンス。かつて耐えられなくなった患者がそこから自ら身を投げ出した場所。
まさか、自分が同じ道を辿るなんて。
落ちていく途中、睦月を抱きしめて呟いた。
「睦月、愛してる」
「…僕も…桐弥、大好きだよ」
一瞬睦月は間を空けたが、そこには信じられないほどの幸福が詰まっている。
あの瞬間、睦月にはやっと桐弥の思いが伝わった。
その後、俺たちにはあのヤブ医者は死んだとの情報が入った。
心中だそうだ。
今は俺はあの三人と一緒に四人で過ごしている。
そういえば、あいつらにあだ名をつけてもらった。
…紫寸末入斗…、スマイル、と。
『今日こそ本当の、なにもないしあわせないちにちだった。』