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「あっぢぃ〜」
そう言って緑色パーカーの少年は下敷きをパタパタと仰ぐ
蝉の鳴き声が聞こえ、雲ひとつなく青空が広がる真夏のある日…
現在の気温は32℃。エアコンが故障してしまった教室では誰も先生の授業を聞いていない
先生すらもどこか諦めて疲れ果てた様子だった
彼は窓の外の景色を見て時間が過ぎるのを待ってた
キーンコーンカーンコーン
とチャイムが鳴り響き授業が終了する
6限目だったということもあり教室は騒がしくなり、生徒達は帰る用意をしたりと慌しく動いていた
「…ム、ゾム〜?」
黄色のオーバーオールの少年は話しかけるのに気がつかないパーカーの少年に苛立ったのか、自分の水が入ったペットボトルを取り出してパーカーの少年の頬に当てた。
「冷たっ!なんやねん」
緑色のパーカーを被った少年はそう言ってペットボトルを手で遮る
夏なのにパーカーとは、見ているだけで暑くなりそうだが少年の顔には汗一つなかった
「アイス、後で買いに行こうぜ」
「おう!」
そう言った後、チャイムが鳴りすぐに終礼が始まる
起立、礼の合図で終礼は始まり同じ挨拶で終わる。なんの変哲のない毎日だった
「ゾム、早く〜」
「ちょっと待てや!」
そう言って少年たちは階段を急いで降りる
手には買ったばかりのアイスが握られていた
少年達が向かっているのは学校で一番涼しいところ…音楽室だった
「やっぱここが一番やな〜」
「せやな〜」
そう言って少年達は音楽室の椅子に座りアイスの袋を開けてアイスにかぶりつく
エアコンがキンキンに効いていて少し寒いぐらいの温度だ
蝉の鳴き声が窓越しにかすかに聞こえる
「あれ、先約がおったんか。」
そう言って入ってきたのは前髪で左側が隠れた少年とサッカー服の金髪少年だった
「あ!お前それ、限定のアイスやんけ!」
サッカー服の少年はパーカーの少年のアイスを指差す
「せやで、ええやろ」
そう言ってパーカーの少年はニヤリと笑う
「俺も並んだのに買えんかってんな〜!!」
少年達の言うアイスとは放課後限定で学校で売られている1日数個限定の特別なアイスだった
噂では桃味だとかイチゴ味だとか炭酸だとか…魔法の味だと言うものまで現れる。限定ということもあり神秘性が高まり今では学食の大人気商品なのである。いつ販売されるのかは不明だが
「俺なんか前に並んどったゾムで終わったから普通のアイスやで…」
オーバーオールの少年は残念そうに自分を指差す
「おつ」
そう言って前髪の少年とサッカー服の少年は椅子に座る
窓越しの蝉の声とアイスを食べる音だけが響く音楽室は教室より涼しくエアコンがよく効いている
しばらくするとパーカーの少年が立ち上がり
「俺、食べ終わったから部活行くわ」
と言ってゴミ箱にアイスの棒を捨てた
「ちょっと待ってや、俺も」
「ほな俺らもそろそろ行くか〜」
「せやな!」
少年達はそう言って立ち上がり同様にアイスの袋などのゴミを捨てて出ようとした
その時、ゴトッという音と共に飾られていた肖像画が落ちてきた
それには学校七不思議と名高い『ベートーヴェン』が描かれていた
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