テラーノベル
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〜前話のあらすじ〜
アムネシアという16歳の天使が目覚めると牢屋に閉じ込められていた。天使と敵対関係にある、悪魔がいる魔界に落下したようで、どうにか天界に戻ろうと脱獄を決意するのだった。
「牢屋からの脱出は簡単だけど…天界までの帰り方がわからないなぁ…」
そう。僕はこの牢屋から出ることは簡単なのだ。その理由は僕の羽の能力にある。
僕の能力は『無からものを創造できる』能力だ。何気に便利である。 だから何か刃物や鑢を作ればいいのだけれど…今回の場合は牢屋から出れても意味がない。
魔界に落ちた時には意識を失っていた。だからどうここに連れてこられたのかも、あの穴がどこなのかもわからない。そしてわからない状態で魔界を彷徨えばまた捕まってしまう。なんなら脱獄したということがバレて、悪魔によくない印象を与えてしまう。
なら脱獄するより、悪魔を説得した方が良いのではないか。
(悪魔が天使の僕の言い分を聞いてくれるのかわからないけど…それ以外に方法は…)
「うわっ!!お前起きてんの!?」
「えっ!?」
びっくりして咄嗟に声のする方を見た。悪魔だ。俯きながら考えていたらいつのまにか悪魔が来てたのだ。
「・・・」
お互い驚き、数秒間の間があった。先に言葉を発したのは悪魔だった。
「えっと…とりあえず飯食う?」
「…ぷっ、あはははは!」
思わず笑ってしまった。見た目に反して予想外すぎる発言だったのだ。
この悪魔は赤髪でかなり癖毛だ。瞳は紫色で、頭生えている角も紫色をしている。そしてコウモリのような黒い悪魔の羽を持ち、服装も全体的に黒かった。昔から聞いていた通り、パッと見では確かに恐ろしい。
「っ!笑うな!」
悪魔は顔を少し赤らめながら言った。よほど自分でも恥ずかしかったのだろう。
「じゃあお腹空いたし、ご飯もらっても…いい?」
「…ほらよ。飯」
そう、不安げに聞いた僕に悪魔は持っていたパンをちぎり取って渡してくれた。話に聞いていたより全然優しいようだった。天使と悪魔が昔交流をしていたのもわかる。そんな関係を引き裂く出来事とはなんなのだろう。
そんなことを考えながら僕はパンを口に運んだ。
「…!なにこれ、すごく美味しい!」
「!…だろ!俺の…好きなパンなんだ!!」
僕が美味しいと言ったら悪魔は笑顔を見せた。喜びのような笑顔だった。
そうして僕は貰ったパンを全部食べ「ありがとう」とお礼を言った。
「君の名前はなんて言うの?」
僕はそう悪魔に聞いていた。答えてくれるかわからないのに。でもこの悪魔は答えてくれると思った。悪魔は僕たちが思っているより、本当に悪い存在じゃないのかもしれないと思ったんだ。
「…カーパス。俺の名前はカーパスだ」
「カーパスっていうんだ!僕はアムネシア。よろしくね!」
僕は仲良くなりたかった。だって、聞いていたより悪魔はずっと優しいんだ。昔は天使と悪魔に交流があったのなら、仲良くなったって罪じゃないはずだ。
「よろしくって…お前今牢屋に入れられてるんだぞ?」
「そのことなんだけど…僕をここから出してくれない?」
「はぁ!?」
そりゃ驚くと思う。カーパスから見れば僕は敵なんだ。
「僕は悪魔たちに危害なんて加えたりしない!ここに誓える!」
「でも…天使は、昔俺たちに…」
「それは悪魔だって同じでしょ?」
「え?」
僕がそう言うとカーパスは戸惑いを見せた。
「い、意味わかんないこと言うなよ。俺らはやられた側だ」
「どういうこと?」
理解ができなかった。襲われたのはこっちのはずだ。僕は教えてもらったことでは悪魔がこっちに襲撃してきたのだと聞いた。それは間違いなのか?
「6年前、俺らに襲撃してきたのはそっちだろ」
「6年前なの!?」
「は?」
コメント
9件
ふぁぁ続きが楽しみゃァァ そういえば関係ないけど口調色々調べてる保留にしてるから、違う二次創作作ってる