テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
翌日の昼休み。
「神崎。」
「ん?」
奏斗が席を立とうとしたところで、蓮に呼び止められた。
「ちょっといい?」
「俺?」
「うん。」
二人は廊下へ出る。
「どうした?」
蓮は少し考えてから口を開いた。
「昨日、図書室にいたよな。」
「……見てた?」
「たまたま。」
「そっか。」
「冴と、仲いいんだな。」
「……まあ。」
奏斗が少し照れくさそうに笑う。
すると蓮も笑った。
「昔の冴からすると、ちょっと意外。」
「昔?」
「うん。」
-–
「冴って、小学校の頃からあんまり人に頼らなかったんだ。」
「……。」
「分からないことがあっても、自分で何とかしようとするし。」
「困ってても『大丈夫』って言う。」
がは黙って聞いていた。
「だから、俺が手伝おうとしても。」
蓮は苦笑する。
「『大丈夫だから』って断られてた。」
「……石川らしい。」
「だろ?」
二人で笑う。
でも、奏斗の中には一つの疑問が残った。
(じゃあ。)
(どうして俺には――)
-–
放課後。
図書室。
「石川。」
「ん?」
「数学の宿題、分からないところある。」
「どこ?」
奏斗がノートを覗き込む。
「ここ。」
152
#オリジナルストーリー
ふりる
73
ちょこ
「……ああ。」
冴が問題を指差す。
「これ、昨日から分からなくて。」
「じゃあ一緒にやろう。」
「うん。」
奏斗は説明しながら、途中で気づいた。
(……。)
(普通に頼ってくれてる。)
昨日、蓮が言っていたことが頭に浮かぶ。
「石川。」
「?」
「前からこんな感じだった?」
「何が?」
「人に教えてもらったり。」
「……。」
冴は少し考える。
「昔は。」
「一人でやってた。」
「やっぱり。」
「でも。」
冴はノートを見る。
「今は。」
「神崎に聞けばいいかなって思う。」
「……。」
奏斗の手が止まった。
「なんで?」
「……分からない。」
冴は少し困ったように笑う。
「神崎なら、嫌な顔しないから。」
「……。」
「それに。」
「一緒にやったほうが楽しい。」
奏斗はしばらく何も言えなかった。
「……そっか。」
ようやく出た言葉は、それだけだった。
-–
帰り道。
「今日、蓮と話した。」
「……何を?」
「昔の石川の話。」
「……。」
冴の表情が少し変わる。
「何か言ってた?」
「人に頼らなかったって。」
「……まあ。」
「でも今は、俺に頼ってくれる。」
冴は黙った。
夕方の風が二人の間を通り抜ける。
「……神崎。」
「ん?」
「頼ってる?」
「頼ってる。」
「……。」
「俺は嬉しいけど。」
「……そう。」
冴は少しだけ笑った。
「じゃあ。」
「これからも頼っていい?」
奏斗はすぐに答えた。
「もちろん。」
「……何でも?」
「何でも。」
「じゃあ。」
冴は少し考えてから、
「明日、一緒に帰りたい。」
と言った。
奏斗は一瞬ぽかんとして――
「それ、頼るっていうの?」
「……たぶん。」
「じゃあ喜んで!」
冴が笑う。
「……ふふ。」
その笑顔を見て、奏斗も笑った。
-–
その夜。
蓮は自分の部屋で、昔の写真を眺めていた。
そこには、小学生の頃の冴が写っている。
今よりずっと無表情で。
一人で本を読んでいた。
「……変わったな。」
蓮は小さく呟いた。
そして、昨日の図書室を思い出す。
奏斗といるときの冴は――
昔とはまるで違っていた。
「……なるほど。」
蓮は何かに気づいたように笑った。
-–
第23話 おわり
次回・第24話「頼っていい?」
翌日。
冴が奏斗にお願いしたのは、「一緒に帰りたい」だけではなかった。
「神崎。」
「ん?」
「今日、少しだけ付き合ってほしい。」
「どこに?」
「……秘密。」
また秘密。
でも今回は、冴のほうから奏斗を頼っている。
コメント
1件
あーもう、冴ちゃんが「神崎なら嫌な顔しないから」って言うとこで胸がぎゅーってなったよ😭💕昔は人に頼れなかったのに、今は奏斗くんに「一緒に帰りたい」って言えるようになったの、本当に尊すぎる…!蓮くんの視点から「変わったな」って気づくシーンも泣ける。次回も楽しみすぎるよ〜!📚✨