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翌日の昼休み。
「神崎。」
「ん?」
奏斗が席を立とうとしたところで、蓮に呼び止められた。
「ちょっといい?」
「俺?」
「うん。」
二人は廊下へ出る。
「どうした?」
蓮は少し考えてから口を開いた。
「昨日、図書室にいたよな。」
「……見てた?」
「たまたま。」
「そっか。」
「冴と、仲いいんだな。」
「……まあ。」
奏斗が少し照れくさそうに笑う。
すると蓮も笑った。
「昔の冴からすると、ちょっと意外。」
「昔?」
「うん。」
-–
「冴って、小学校の頃からあんまり人に頼らなかったんだ。」
「……。」
「分からないことがあっても、自分で何とかしようとするし。」
「困ってても『大丈夫』って言う。」
がは黙って聞いていた。
「だから、俺が手伝おうとしても。」
蓮は苦笑する。
「『大丈夫だから』って断られてた。」
「……石川らしい。」
「だろ?」
二人で笑う。
でも、奏斗の中には一つの疑問が残った。
(じゃあ。)
(どうして俺には――)
-–
放課後。
図書室。
「石川。」
「ん?」
「数学の宿題、分からないところある。」
「どこ?」
奏斗がノートを覗き込む。
「ここ。」
「……ああ。」
冴が問題を指差す。
「これ、昨日から分からなくて。」
「じゃあ一緒にやろう。」
「うん。」
奏斗は説明しながら、途中で気づいた。
(……。)
(普通に頼ってくれてる。)
昨日、蓮が言っていたことが頭に浮かぶ。
「石川。」
「?」
「前からこんな感じだった?」
「何が?」
「人に教えてもらったり。」
「……。」
冴は少し考える。
「昔は。」
「一人でやってた。」
「やっぱり。」
「でも。」
冴はノートを見る。
「今は。」
「神崎に聞けばいいかなって思う。」
「……。」
奏斗の手が止まった。
「なんで?」
「……分からない。」
冴は少し困ったように笑う。
「神崎なら、嫌な顔しないから。」
「……。」
「それに。」
「一緒にやったほうが楽しい。」
奏斗はしばらく何も言えなかった。
「……そっか。」
ようやく出た言葉は、それだけだった。
-–
帰り道。
「今日、蓮と話した。」
「……何を?」
「昔の石川の話。」
「……。」
冴の表情が少し変わる。
「何か言ってた?」
「人に頼らなかったって。」
「……まあ。」
「でも今は、俺に頼ってくれる。」
冴は黙った。
夕方の風が二人の間を通り抜ける。
「……神崎。」
「ん?」
「頼ってる?」
「頼ってる。」
「……。」
「俺は嬉しいけど。」
「……そう。」
冴は少しだけ笑った。
「じゃあ。」
「これからも頼っていい?」
奏斗はすぐに答えた。
「もちろん。」
「……何でも?」
「何でも。」
「じゃあ。」
冴は少し考えてから、
「明日、一緒に帰りたい。」
と言った。
奏斗は一瞬ぽかんとして――
「それ、頼るっていうの?」
「……たぶん。」
「じゃあ喜んで!」
冴が笑う。
「……ふふ。」
その笑顔を見て、奏斗も笑った。
-–
その夜。
蓮は自分の部屋で、昔の写真を眺めていた。
そこには、小学生の頃の冴が写っている。
今よりずっと無表情で。
一人で本を読んでいた。
「……変わったな。」
蓮は小さく呟いた。
そして、昨日の図書室を思い出す。
奏斗といるときの冴は――
昔とはまるで違っていた。
「……なるほど。」
蓮は何かに気づいたように笑った。
-–
第23話 おわり
次回・第24話「頼っていい?」
翌日。
冴が奏斗にお願いしたのは、「一緒に帰りたい」だけではなかった。
「神崎。」
「ん?」
「今日、少しだけ付き合ってほしい。」
「どこに?」
「……秘密。」
また秘密。
でも今回は、冴のほうから奏斗を頼っている。
コメント
1件
あーもう、冴ちゃんが「神崎なら嫌な顔しないから」って言うとこで胸がぎゅーってなったよ😭💕昔は人に頼れなかったのに、今は奏斗くんに「一緒に帰りたい」って言えるようになったの、本当に尊すぎる…!蓮くんの視点から「変わったな」って気づくシーンも泣ける。次回も楽しみすぎるよ〜!📚✨